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0.出会い

Twitter(X)リンク:https://twitter.com/jun_satoh_novel

とうとう長編異世界系をスタートしました!ぜひ応援お願いします!

Twitter(X)にてAIイラストで作った作中のキャラを投稿しています。

キキーーーーーーッ


突然飛び出してきたボールに、驚いた車の運転手が大きくハンドルを切った。

ハンドルが切られた先にいた子供を助けようとした女子大学生が、車にひかれて死亡した。


その女子大生の名は、大嶋葵。

地元の大学に通う学生だった。


――――――


重たい水の中にいるようで、手足はぴくりとも動かない。

ゆらゆらと光る水面のような視界の中から、私を呼ぶ声が聞こえた。


「誰?私、呼ばれてる?」


自分の声がきちんと発声できているのかさえわからなかったが、呼ばれた先に問いかけてみる。

すると、「大丈夫?」と柔らかな声が聞こえた。

ゆらゆらと光る水面の、そのさらに遠くの方に眩しく光る何かがちらちらとゆれている。

どうやらあの光源が、声の主のようだ。


「誰?」

私は再度、その光る声の主に問いかけた。


「わたくしはレティシア。レティシア・パルティス。」

「レティシア?あ、私は葵です。大嶋葵。」


私は普段聞き慣れない名前に少し面食らってしまったが、同時に、どこかで聞いたことのある名前だな、と考える。

あぁ、そうだ。この間行った、生理国際学会の開催国の王妃様が、確かそんな名前だった。

学会に向かう飛行機の中で、座席の前の網に挟まっていた雑誌を適当に開いた時にレティシア王妃の写真を見たのだ。


「レティシアは王妃様?」

私はぼんやりとした頭で、適当なことを返してしまう。

レティシアと名乗った光の声は、うふふ、と笑ってこちらの突拍子もない質問に答えてくれた。

「わたくしは、パルティス公国の第一公女よ。王妃ではないわ。」

「パルティス公国?」

またしても聞き慣れない国名が出てきて面食らってしまった。あいにく、私は世界の国々すべての名前を憶えてはいない。

音の雰囲気的にヨーロッパだろうか、東アジアだろうか、と次々と知っている国名を頭の中で列挙していく。


光の声はまた笑いながら教えてくれる。

「ここは、葵の世界であって、葵の世界ではない世界。パルティス公国はランドバルト帝国とサミュア王国に挟まれた小国です。

レティシアは突然、オカルトめいて、わけのわからないことを言い出した。


(わたしの世界であって、わたしの世界ではない?新しい仮説?まだ学会にいるのかしら。)


頭はずっともやがかかったようにぼんやりしているから、考えがまとまらない、それに、だんだんと頭が痛くなってきた。


「どうゆう意味?」

私は頭の芯が高エネルギーで動いているような、そんな痛みを感じながら聞いた。


「とても似てるけど、少しずつ何かが違っているの。」

「パラレルワールドってこと?」

レティシアのオカルト発言につられたのか、私は冗談めかして、超理論的なことを言ってみる。


「そうね、パラレルワールド。奇跡的にわたくしと葵が交差してしまったみたい。本当にごめんなさい。」

レティシアはこちらの意に反してとても真剣だ。


私はパラレルワールドという言葉を頭の中でもう一度反芻する。

SFの世界の中の出来事、オカルトめいた話という印象が強いが、そういえば先日お邪魔した物理学会ではパラレルワールドをテーマにしたパネルディスカッションがあったなぁ…と思いだす。


レティシアの声の硬さは、私に「パラレルワールドは本当にあるのかもしれない」という気持ちにさせる。

それに、と私は今更なことを思う、光と話しているのも、オカルトよね、と。


「葵、時間がないから気をつけて。これからあなたが向かう世界は、あなたの命を保証してくれないわ。」

レティシアは先ほどとはうって変わって早口で、さらっと怖いことを言う。

「気をつけるって何を?」

レティシアの声に、気だるげな緊張感が走ると同時に、声はどんどん遠くなっていった。

「婚約…が…を…って…。」

「なに?聞こえない!」


レティシアの声はどんどん小さく、はかなげになっていく。


「もう…さよ…。」


さよならね、と聞こえたような気がしたが、それから声はもう聞こえなくなっていった。

そして、私は暗くて深い水の底にどんどん引っ張られていくような感覚を同時に味わう。


「ちょっと待って!!どうゆうこと?!」


私は混乱したまま暗い場所に引っ張られたくなくて、必死に声を上げる。

頭痛は突然ガンガンと音を立てるようにひどくなり、耳鳴りもひどくなってきた。


「…あなたなら、もしかしたら…」


レティシアも最後の力を振り絞ったのか声が聞こえるが肝心な部分は全くわからない。


「待って!!!」


結局、最後の力を振り絞ってもなんの変化もなかった。

なにがなんだかわからないまま、私は急速に意識の沼に沈んでいった。


初めましての方、はじめまして。佐藤純と申します。

最近、ありがたいことに、読んでくださる方が増えてきて、後書を編集してみました。この物語は、主人公が仲間たちとはちゃめちゃしながら婚約式回避を目指すお話です。

面白いと思ったら、ぜひぜひ感想や評価、ブックマークをお願いします!


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