反ワク勇者パーティからの追放【1000文字未満】
「お前パーティから降りろ」
頭にアルミホイルを巻いている勇者からそう言われた。俺は狼狽して、後ずさる。
「な、なんでだよ。今までも医術で貢献したじゃないか」
「それだよ。その医術、エセじゃねぇか。俺は知ってるぞ。お前、自分にワクチン打ちやがったな。風邪引いたらキャベツ被ればいいってのによ」
「いやそれで回復したという論拠はない。風邪薬にはしっかりとした治験があって……」
「やかましい! とにもかくにもワクチン打ちやがった奴は追放だ! 出ていけ5G人間!」
取り付く島もないので、俺は彼らのもとを去った。街からも追い出された。途方に暮れながら歩き回ると村に着いた。
その村には医者がいなかった。そのせいで疾病が蔓延しており、人々は苦しんでいる。
「大丈夫、俺は医者だ。さて、まずは見せてくれ」
と、診察を始めた。これは典型的な風邪だ。インフルではない。だが風邪とて危険に変わりはない。製薬ギルドに連絡をつけて薬を貰い、処方した。代金は俺が全て掛け持つ。衛生面も改善しておいた。
安静にさせてしばらく。みんな元気になった。まぁ風邪なんて薬飲んで安静にして衛生環境も良ければ治る。村の人は過剰に感謝してきた。薬のおかげだろうに。
しかし村一番の美少女が腹痛に倒れた。調べてみると盲腸だったのでサクッと手術。環境が整っていなかったが無事終了。ますます褒め倒された。
賞賛の声が耳に痛くなってきた。こうなれば衛生も健康意識も高めて医者要らずにしてやる。
そういうワケで医学的健康を啓蒙し続け、病気は減った。俺もようやく休める。
と思ったら、勇者達について緊急の連絡だ。なんと流行病にかかったらしい。
放っておけないので駆けつけると、勇者達は家にいた。せめて病院に行けと怒りを覚えるも、勇者はこう言う。
「毒を打たれるに決まってる! 騙されないぞ、お前も極小電子チップを打ちに来たんだろ。そして俺をラジコン人間にするつもりだ。ワクチンもだろ。ワクチンは、わ、苦、ちーんなんだぞ」
「何言っているか解らんが、延命治療するにはもう遅い。ワクチン打たないからだ」
で、勇者達は死んだ。これを境に人々は情報リテラシーに目覚め、エセ医学が幅を利かせることもなくなった。
俺の役割も終わったので、そろそろワクチン売るための毒売りに戻るかな……。