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アマトゥスと共に  作者: 鼈甲飴
第一章 夢想の大地編
3/17

第二話〈異界の少女〉

2022/02/06 全編差し替え

2022/6/30 修正




少し肌寒い、冷たく澄んだ空気。幻想的な、浮かぶ島々。それを照らす、二つの月明かり。


何ということでしょう。今なら、この愉快で素敵な航空ツアーが、何と無料! ついでに、怪鳥とのワクワクランデブーも付いてくる! 



「…………」



幻想的な風景が眼前に広がっているのは本当だ。素晴らしい光景に心が洗われる。やはり、自然は最高だ。


最も、全裸で、獣臭い鉤爪に包まれているので無いのなら、の話だが。



怪鳥はゆったりとしたスピードで、優雅に4つの翼をはためかせ、浮遊島の合間を滑るように飛んでいた。


青年は、それを全裸で受け入れる。否、もちろん青年に選択肢など無いのだが。



着いた先は雛鳥か、それともこの怪鳥自身の嘴の中か。どちらにせよ、青年にはどうすることも出来ない。

ここで暴れてみてもいいのだが、待っているのは命綱無し、パラシュート無しの片道スカイダイビングだけ。そんな無駄なことのために体力を使いたくはない。



「おーい、どこに連れて行くんだよ〜」



試しに話しかけてみるが、3つの首のうち、一つが青年を向き、そしてすぐに前を向く。反応はそれだけだ。何騒いでんだこいつ。そんな目をしていた。怪鳥のくせに生意気なやつめ。


しかし、今まで全裸で寒かったのだが、青年を掴む怪鳥の足はほんのり暖かかった。この世界で目覚めて最初に感じる暖かさが、この怪鳥とは。残念でならない。そこはお約束通り、美少女であるべきだ。そうだろう?



怪鳥は、一体どこまで飛ぶつもりなのだろうか。青年が怪鳥に捕まり、飛び始めてから大分時間が経った。体感で2時間くらいだろうか。長い。長すぎる。


そう考え始めた途端、まるで怪鳥が青年の思考を読んだかのように、高度を下げ始める。


あぁ、とうとう巣にご到着か。あのまま落下して死ぬか、雛鳥に啄まれて死ぬか、どっちの方が良かっただろうか。どっちも嫌だ。当たり前だ。死にたくない。



怪鳥は、ぐんぐんと高度を下げ、雲に入る。雲は寒く、呼吸が上手く出来ない。しかも、青年はその間にびしょ濡れになる。最悪だ。





しかし、雲を抜けると、そこには草原と、遠くには森と山脈が広がっていた。疎な木々に、草原。だが、それだけではない。地平線が見える。間違いない。これは、地上だ。



「あぁ。何だよ。くそ……」



地上を目にし、涙が溢れてくる。美しい大地。我らが人類の生きる場所。くそ、ダメだ。死にたくない。ダメ元でも、いっちょ暴れてみるか。



地上が近づき、怪鳥の速度が落ち始める。


とうとう、青年が餌になるターン。どうしようか。雛を蹴飛ばして逃げられるだろうか。



「ん?」



地上がもうすぐそこまで近づき、目的地が段々と見えて来る。


何というか、小屋みたいなものがある。小屋というか、竪穴式住居みたいな。いや、小屋だな、あれ。まさか、あれが目的地なのだろうか。


そして、そこに明かりがついていて、何やら人みたいなのが手を振っている。いや、人だな、あれ。



「ん〜〜???」



通り過ぎるのかとも思ったが、どうやらやはり目的地はそこだったらしい。上空3メートル程の場所でホバリングし、徐に地上に青年を落とす。



「ぐぇ」



頭から落下し、目の前の人物に大事なところをお目見えしてしまう。ふぅ、なかなか恥ずかしいな。


手を振っていた人間、いや、もう見える。

少女も、捕まっていたのが青年と分かるや否や、動きが固まり、無様に地面に転がる青年を見てまた固まる。


怪鳥はそんな二人を置いて、クエッと鳴くと再び翼をはためかせ、大空へと戻っていく。


え、何? 怪鳥お届け便とか、そういう感じでしたか? 間違えて全裸の男を届けちゃいました的な? 


しかし、これはお約束通り美少女の登場だ。一目見ただけで分かる。とんでもない美少女だ。最高。グッジョブ怪鳥。



「あ、あのぉ」

「は、はいっ!」



青年が立ち上がり、恐る恐る話しかけると、いかにも緊張した表情で少女が直立する。どうやら話は出来そうだ。


改めて見ると、少女は変わった格好をしていた。具体的にどんな格好かと言われれば、黒いローブに、黒いトンガリ帽子。そして、グネグネと曲がった木の杖。いや、これ魔女だわ。絶対。


薄い銀髪だろうか。月光が反射して色はよく分からないが、髪は肩より少しだけ下まで伸びていて、しかしそれよりも、透き通るような金色の瞳が、やけに印象的だった。



「魔女様、ですか? ちょっと助けて欲しいのですが……」

「いや、あのっ……そのっ……」

「????」



少女は青年のご立派様を見て硬直しているが、青年はそれには気づかない。そんな事はどうでも良いのだ。


今は、何故だか理解できないが、兎にも角にも助かった。この魔女っ娘がいい魔女だと信じて、助けを乞うだけだ。いや、これが助けてもらう者の態度か。違うだろ。よし、ならばこうだ。



「すみません魔女様っ! 私、記憶喪失の穀潰しニートッ! 魔女様の為なら何でもいたします! 皿洗いから、トイレ掃除、はたまた身の回りのお世話まで! 何とぞ、何とぞ私めを助けていただけないでしょうかっ!!!」



青年はここで魂の土下座を繰り出す。そんな奇行を繰り広げる青年に対し、少女は何が起きているか理解できないといった表情。



「いやっ、あのっ」



何と。この額を地面に擦り付ける渾身の土下座でもダメ。しからば、奥の手だ。もう仕方がない。背に腹はかえられないのだ。



「何でもいたしますっっ!! 例え火の中水の中、あの子のスカートの中だって!」

「ひいっ!」



媚びへつらうような青年の形相に、一歩引く少女。ようやく、この青年が度を越した変人だということに気づいた様子。青年の必死の表情は、しかしはたから見れば下卑た表情に見えなくもない。そうと知ってか、知らずか、青年はその表情のまま両手を擦り合わせ、少女ににじり寄ってくる。



「何とぞ、何とぞっ!!!!」

「い、いやっ、変態っ!!!!」



バコン。


少女の杖が振るわれたと知覚した後、側頭部に衝撃。次いで視界に火花。まさかの、杖による攻撃(物理)である。


こうして、変態は成敗されたのでした。めでたしめでたし。







▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲








そんな冗談はさておき。


青年は暖かい部屋の中で目を覚ます。



「知らない天井だ」



一回言ってみる。皆大好き、憧れのセリフだね。


だが、本当に知らない天井だ。天井、というか屋根か。中央が高い木でできた円錐型の裏側。という事は、先程の外から見た小屋の中だろうと当たりをつけてみる。


側頭部が痛い。触ってみると、タンコブが出来ている。相当強く殴られたらしい。何でだ、分からん。

タンコブなんて、できたのは一体いつ以来のことだろうか。そんな事を考えて、記憶がない事を思い出す。てへぺろ。



頭を押さえながら起き上がる。青年には、毛布が掛けられていた。毛布というほど上質ではないか。いや、文句は言うまい。どうやら、毛皮のようだ。


起き上がると、部屋、いや、小屋の反対側に杖を持ったまま立ち尽くす少女がいた。帽子は取っているが、杖はこちらに向けたまま。やめてね。魔法とか放つの、やめてね?


しかし、もしかしてこの小屋の中まで運んでくれたのだろうか。全裸で、気絶したまま美少女に運ばれる。うん、何だかゾクゾクしてきた。



改めて、ランタンの暖かい光に照らされたその少女は、相当の美少女だった。美しく輝く長めの銀髪をサイドアップに纏めている。第一印象の通り、金色の瞳は酷く心を揺さぶられる、不思議な強い意思を感じさせる。


柔らかな光に照らされ、その姿はまるで女神のように神々しい。魔女とか言って申し訳ない気分になってくる。女神様でしたか。



「あの」

「それ以上近づいたら殴ります!」

「す、すいません……」



相当警戒しているようだ。地味にショック。美少女に拒否されるのは、辛いね。しかし、殴ります! とは。そこは魔法を放ちます! とかじゃなかろうか。



「質問に答えてください。それ以外の発言は許しません」

「あ、はい。分かりました」



何と、今から始まるのは尋問か。可愛らしいお顔のお陰で迫力は全く無いが、向けられている警戒心は本物だ。

杖も、ただならぬ雰囲気が漂っている。きっと名のある木から削り出された最強の武器なのだろう。きっと名前はデストロイ☆棍棒とかに違いない。また、後頭部に向かって振るわれるのだろうが、それは勘弁願いたい。



「あなたは何者ですか? どうやってこの世界に来たのですか?」



そんな事聞かれても、当然分かるはずがない。何なら、青年の方が聞きたいくらいだ。


…………ん? 今、“この世界”って言った?



「え? いや、分かりません。気がついたらなんというか、浮いてる島の上に居たんです。ついでに記憶もありません」

「…………」



取り敢えず素直に答えてみると、それを聞いた少女が困ったような、出鼻を挫かれたような顔をしている。何か、まずいことでも言っただろうか。



「……本当は?」

「いや、本当、ですけど…………」

「………………はぁ。分かりました。あなたは魔神の落とし子ですね」

「落とし子?」

「たまにいます」

「ほぇ〜」



落とし子。なるほど。たまにいるのか。そうか、それは良かった。先人がいるならば、既に道は開かれているとみた。


しかし、それで納得してくれて助かった。正直、記憶喪失の部分を疑われると、全く証明のしようが無いからだ。



「あの、何とお呼びすれば……?」

「…………私はアリシア。ただの、アリシア」



銀髪の美少女はアリシアというらしい。可愛い。いや、ここは“様”をつけるべきか。



「おぉ、アリシア様! 素晴らしいお名前です! しからば、アリシア様のお力にて、私めの記憶を取り戻し、元の世界へ送ってはいただけないでしょうか?」

「…………」



おっと、アリシア様が無表情になってしまう。いきなりの頼み事、いささか不躾だっただろうか。


元の世界へ歩いて帰れるのなら、記憶だけ戻してもらおうか。それも出来ないなら、食べ物だけ恵んでもらって道聞いて歩くか。


いや、そうしよう。初対面の人に頼みすぎた。しかも、少女はきっと年下だ。見た目からして。すごい申し訳ないな。



「あの、やっぱいいです、すいません。歩いて帰ります」

「…………」



アリシアの表情が明らかに曇る。言いにくい事を言うかどうか、迷っている顔だ。そして、アリシアは少しして口を開く。



「ここからは帰れません。記憶も戻せません。…………ごめんなさい」

「え? あ、いや……帰れない? とは、どういう……」

「…………」



一呼吸置き、アリシアは真っ直ぐに青年の瞳を見つめる。あら可愛い。しかし、帰れないとは。只事ではない。



「ここは、異界(ロア)。現実世界の裏側にある、知覚不能のもう一つの世界です。私も、この世界に囚われの身。既に5年程経ちました。帰る方法を、探し続けています。あと、失った記憶を元に戻す力は、私にはありません……。ごめんなさい」

「あ…………」



異界。裏側。知覚不能。


5年。


少女が鎮痛な表情で下を向く。


その表情を見て、青年は悟る。ここはきっと、本来少女の住む世界ではない。そしてアリシアは、この世界に迷い込んでしまった。きっと、記憶のない青年より、ずっと元の世界へ帰りたがっている。そして、そこに何も知らない馬鹿な青年が現れたのだ。ついでに全裸。



(馬鹿だ……俺は)



どう考えても茶化していいシーンでは無かった。人と話して初めて自分がこんなふざけた性格をしていたと知れたが、それはまた別の話だ。もう少し真面目にいくべきだった。きっと、アリシアを傷つけてしまった。



「ごめん。悪かった。事情も知らずに」



謝罪が勝手に口を出て行く。タメ口になるが、気がつかない。必死に言葉を紡ぐ。この少女を、アリシアを、悲しませてはならない。



「だが、その上で頼む。俺は、記憶も、この場所に関する知識もない。どうか、助けてもらえないだろうか?」



頭を下げる。今度は、真摯に、誠意を込めて。



「あ、いや、頭を上げてください……。私の方こそ、殴ってしまってごめんなさい。今、着るものを用意するので、それからゆっくり話しましょう」

「! ありがとう……ございます。すみません、遂テキトーな口調を……」

「ううん、いいの。あなたは……その、砕けた口調の方が似合ってます」

「じゃあ、アリシアも、タメ口で」

「え? いや、私は……ううん、分かった」



そう言って微笑むアリシアは、青年には真実に女神に見えたという。









アリシアから渡された、毛皮の服を羽織り、ようやく全裸状態から解放、いや、服という名の装備を身につけたた青年。


改めて見ると、その小屋はとても立派な作りをしていた。円形に木の板が並び、ある部分を境に壁と屋根が分かれ、屋根は円錐形を形作る。小屋の中央には囲炉裏のようなものが掘られ、そこに薪がくべられている。床にも木が敷き詰められ、毛皮が置かれている。


魔女というより、狩人の住処だ。


というか、アリシアに魔女的要素はほとんど無かった。魔女っぽかったのは格好だけで、囲炉裏に火をつけたのも実に現実的な、火打ち石を使った方法だった。魔法、見たかったのだが。無いのだろうか。



「さて……何から話そうかな」

「うーん。何が分からないかも分からないから……取り敢えず、この……異界(ロア)? とやらの事についてお願いしよう……かな?」

「分かった」



ロア。簡単に言えば、パラレルワールドか。人間世界の裏側に存在する、しかし決して交わることのない異界。

ロアには現実世界ではあり得ないような動植物が闊歩し、現実世界とは異なる理で動いている。


そして、現実世界とロアを行き来する方法はない。いや、正しくはある。しかし、アリシアには使えない、と。



「なるほど……じゃあ、アリシアはどうやってここに?」



青年は、それを聞いて浮かぶ当然の疑問をアリシアにぶつける。



「私は……私も、気がついたらこの世界にいた。普通に、家の中で寝てたの」

「そう、か……でも、記憶はあるんだよね?」

「うん。記憶はあるよ。その時の事はあんまり覚えてないんだけど」



少し、顔を曇らせながら答えるアリシア。だが、青年は敢えてそれに気づかないフリをする。何か言いづらいことを聞いてしまったか。


しかし、記憶はあるのか。記憶を失う、失わないというのには何か条件とかあるのだろうか。きっと青年もそんな感じで異界(ロア)にやってきて、運悪く記憶も落っことしたというところなのだろう。いや、何と運の悪い。



「この世界に、人は……?」

「……いる事にはいるよ。あんまり会ってないけど。一番近い人里も、歩いて2週間くらいのところなんだけど、森を抜けなきゃいけないから、普段は交流は無いの。……でも、現世(セグ)人は、あなたが、初めてだよ」

「それは……何というか……」



申し訳ない。初めて出会う現世(セグ)人が、こんな変態の役立たずとは。変態ではないが。むしろ、青年に色々聞きたかったのはアリシアの方だろう。それが、こんな形で助けを求められるとは思ってもみなかっただろうに。



「でも、良かった。最初に出会ったのがキミみたいな人で」

「え?」



おっと、美少女にそんな事言われるとドキがむねむねしちゃうなぁぁぁ???



「話が通じると、楽だから」



おっと、そっちね。良かった、おじさん変な勘違いしちゃうところだったよ。危ないね。煩悩封印! 殴られたく無いしね。なるほど、マトモな精神の持ち主でよかったぜ。



「それは良かった。あの、アリシアは帰る方法を、探して……?」

「うん。ずっと……探してるよ」



そりゃそうだ。当たり前のことを聞いてしまった。



「そう、だよな……。あの、何が出来るかは分かんないけど、俺も明日からそれを手伝ってもいい、か?」

「うん、出来れば、そうしてもらえると助かる、かも」



少し憂いのある表情。アリシアは今、一体何を考えているのだろう。



「アリシア」

「?」

「俺が……俺が、アリシアを現世(セグ)へ連れて行ってみせる」

「……ふふ、ありがと」



アリシアを喜ばせたくて、思わずそんなことを口走る。記憶喪失に、異界(ロア)の知識も無いオーヤ。当然、できる事は少ないし、アリシアを手伝うこともままならないだろう。しかし、助けたいと、素直にそう思った。


アリシアが微笑む。この笑顔を向けられて、力になりたいと思わない男はきっといない。



「あぁ、そうだ。名前……も、分かんないんだっけ?」

「ん?」

「名前!」

「あ、名前……」



そういえば、完全に名前のことを忘れていた。名前、名前……何だろう。思い出せる、気がする。



「オウヤ……オウヤ。だった気がする」



自分で言いながら、そうだと納得できる名前が出てくる。これが、青年の名前。思い、出せた。



「オウ……何か、呼びにくいね」

「そうか???」



しかし、ようやく捻り出した自身の名前を、速攻で呼びにくいと一蹴される。アリシアも、容赦がない。そこが、良い。



「オーヤ……うん。こっちの方が呼びやすいな。オーヤでいい?」




まぁ、この変態野郎! とか呼ばるよりは全然いい。むしろ、アリシアの言う通り、オーヤの方が何だかしっくり来る。



「いいよ、それで」



オーヤ。オーヤか。元の名前からそんなに変わってないが、呼び名を付けたのはアリシアだ。それはつまり、青年、改めオーヤの名付け親はアリシアと言っても過言では無い。銀髪美少女につけてもらった名前。


うん、悪くはない。いや、むしろ最高か。ご褒美だな。オーヤ。いい名前だ。





「じゃあ、ご飯にしよっか。今日渡ってきたばっかりって事は、もしかして何も食べてない?」

「あ、うん。そういえば……お腹減ったような」

「じゃあ作ろう。そこにあるオオトカゲの尻尾を取ってくれる?」

「え? この黒いの?」

「うん」

「うそぉ…………」



怪鳥に捕まった時は一体どうなる事かと思ったが、まさかの美少女との同居生活スタートの予感。これはなかなか最高だ。

青年は……いや、オーヤは、黒くて太くて固い謎の棒をアリシアに手渡す。


アリシアは5年もの間、この世界で過ごした。5年だ。長すぎる。うら若い乙女が、思春期に5年の流刑。あまりにも、過酷な試練だ。神は越えられない試練は与えないと言うが、この場合の“超える”とは、きっとアリシアにとっては“帰還する”事に他ならない。


アリシアの帰還にとって、オーヤの出現がいい方向に向かう事を祈りながら、オーヤはアリシアの指示のまま、謎の草をちぎり始めた。

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