9
ついに予選会がはじまった。
はじめての人はさぞかし緊張するんだろうなという何故だが上から目線の章は、他の人達のお手並み拝見と拍手をしながらステージで歌う出場者を見る。
ふと、章は思った。
自分の曲目をプロの生バンドが演奏してくれる。
こんな体験は、バンドマンか歌手か芸能人でないと出来ないことだ。
それが、素人どじまんの我々が体験できるのだから、しかもタダでなんと素晴らしいことだろう。
と、目を輝かせて応援していたが、20組あたりで、章は飽きたというか疲れ始めていた。
後、230組も残っている。
会場の大時計に目をやると、一時間が経過していた。
外出は自分の出番と発表の時に会場にいればよいということなので、章は一息つこうとホールを出た。
扉を開けると、人でごった返していた。
エントランスの所には巨大モニターが設置してあり、ホールの観客席に入れなかった関係者や家族、観覧者がそこで予選会の様子を見ていた。
「あっ!」
章は思わず叫んだ。
遠藤家の人々が固唾を飲んで章の出番を待っていた。
彼が近づくと、母は開口一番に、
「ダメダメ!中に入れなかった」
「(ホール)に入れなかった?」
章は思わず二度尋ねる。
「(観覧希望が)多くて中に入れなかった」
父は残念がる。
その片隅で大断幕が出番を失って寂しそうに折りたたまれている。
章は少しだけショックだった。
のどじまんでは、よく家族や同僚を応援する断幕が映る。
家族の絆を全面にだして、のどじまん受けを狙う魂胆もあったからだ。
すると、
「おっちゃん、いつでるの」
と、華の娘一花が話しかける。
「これ見てみろ、読める?」
章は胸に貼った番号シールを見せる。
「109番!まだ先やん!」
一花の兄浩介が叫んだ。
「うー」
先に番号を言われた一花は口を尖らせる。
章は来てくれた家族みんなに一言ずつ感謝の言葉を言うと、気合を入れ、踵を返しホールへと戻った。
本番のテレビに出る為には、ぬかりがあってはいけない。
章はそんな思いから出場者が歌う際には、笑顔でしかもオーバーアクションでリズムや拍手をしていた。
しかしあまりの長丁場に心を折られそうになりながらも・・・。
そしてついに、章の出番が近づく。
101~110番まで(章は109)の人達が舞台袖へと呼ばれる。
途端に章に緊張感が襲う。
前列のグループが終わるまで舞台近くで、出場者の歌う様子が見られる。
その姿は、皆まさに主役だった。
いよいよ章達グループが舞台にあがる。
その舞台から見た景色とは!




