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帰宅後、章は改めてパソコンで「のどじまん」をネット検索してみる。
すると、何件もヒットした。
一つ一つを見て吟味する。
やはり西田が言った通り、マイクの頭持ちは禁止となっていた。
が、それにもまして、予選会に対する懇切丁寧な説明、対応、心構え等、こと細かにレクチャーされていた。
不安に感じていた部分も事前情報が得られて、得した気分だ。
「さてといかにしたものか・・・」
パソコン画面に章は呟き、一人にやける。
章の、やれるだけやってみようという意志は固い。
炎ののどじまん七番勝負と自ら銘打ち、予選会までの間、七回のカラオケ行脚を心掛ける。
会社の同僚、友人、家族とカラオケボックスへ行く。
「ガチャマンのうた」の熱唱につぐ熱唱なのである。
歌うこと、場数を踏むことが前提だったが、本番一週間前に張り切り過ぎて、喉を枯らしてしまい、治るまで三日かかってしまった。
一方、家族もソワソワしだした。
妹の華と彩が実家に訪れて、大断幕を作り始めたのだった。
のどじまんのテレビをみた華が会場に大断幕があったのを見て、予選会の必勝法として提案したのだった。
百円ショップで白いテーブルクロスを購入し、パソコンで一文字ずつ大きく印刷し、それを貼りける。
完成した断幕には「ゆけ!ガッチャマン。みんなの為に」と書かれてある。
縁取りに金ぴかのモールで、文字を際立させている。
そうして予選会の前日には、家族皆で決起集会なる夕食会が行われた。
華や彩の家族も集まり、鉢盛も注文するという盛大ぶりであった。
章は家族全員が一丸となって、応援してくれると思うと、まさに身の引き締まる心地であった。
章はついに決断した。
後悔しないようにやれるだけのことはやる、その信念が彼を突き動かす。
章は床屋をやっている友人に電話をした。
「あっ、ごめん夜だけど、今から髪を切ってくれる?」
「ええよ、今、空いてるし」
嬉しい返事がかえってきた。
「ありがとう。すぐ行くから」
盛り上がる食事会を主役は抜け、床屋へと向かう。
「おう、いらっしゃい」
章の来店に友人は声をかける。
「なぁ、スキンヘッドって出来る?」
章は唐突に友人にそう伝えた。
「・・・できるよ」
友人はちょい間があって答えた。
「じゃあ!スキンヘッドで!」
章は声がうわずって、顔は紅潮していた。
「・・・おお」
思わず、驚きの声をあげる友人。
バリカンで髪を五厘に切った後は、剃刀で丁寧に残りを剃っていく。
ほどなくして、スキンヘッドは完成した。
鏡にうつる自分の姿を見て、章は思わず感嘆の溜息をついた。
「大丈夫?」
友人が心配して、彼の顔を覗き込む。
「いやいや、ありがとう」
章は友人に感謝した。
かくして、章は四つ目の柱、ビジュアル面の強化を成し遂げたのであった。
やるべきことはやった彼は、そんな満足感を覚えていた。
その夜、布団に入ってからも、翌日への緊張と興奮で章は、ほとんど寝れなかった。




