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遠藤章は、いつものように夕食の時間帯に、食卓の椅子に腰かけた。
彼は38歳独身男性、実家に身を寄せて生活している。
ちょっとだけ、情けないこの男は、仕事あがりの呆けた顔を隠そうともせず、ぼけーっと佇んでいた。
あげ膳据え膳の環境にどっぷりと浸かっている彼は、母奏が作ってくれる夕食を当たり前のように待っている。
ふと、見るとテーブルの上に市の広報が置かれてあった。
何気なしに手に取って見てみる。
ペラペラと薄い冊子をめくってみる。
すると、募集欄のところに、某局のどじまん大会の案内が掲載されていた。
「ふーん」
章は目を通し唸なると、広報を閉じた。
それから数日が経った休日の事。
新聞入れの中から、広報を取り出し改めてじっくりと見た。
ふと、参加したいそんな考えがよぎった。
(いや、いや・・・)
広報をほおり投げた。
ソファに寝そべる章は、後頭部で両手を組み天井を見た。
しかし、いつの間にか自分の意に反して、再び広報を手に取って見ていた。
その日の夕食、章は家族にその事について話した。
「この町にのどじまんが来るってよ」
「知ってる。広報に書いてあった」
母奏が話に乗ってきた。
「本当か!」
と、より話に食いついてきたのは、父隼人だった。
さらに、
「あの、日曜の昼にやっとるやつか」
と、聞いてくる。
「あー、そう、キンコンカンの」
章は答えた。
「そうかー来るのか」
父は腕組みをする。
「どうしたの親父?」
「いや、俺出る」
父は早々に決意表明をした。
「えっ」
章と母は驚く。
「お前達は出ないの?」
父は仲間を増やそうとした。
「いや、私は恥ずかしい」
母はすぐに拒絶した。
「お前は?」
父は章に聞く。
「俺は・・・」
しばらく考えるそぶりをする章。
章の腹の中では決まっていた。
一人で参加はちょっと・・・と思っていた所に親父の心強い参加表明があった。
だけど、やる気満々なそぶりは恥ずかしくて見せられない。
「仕方ないな。親父が参加するなら、しょうがない付き合ってやるか」
章は出来る限りしょうがなさを装って言った。
が、何故だか参加も決まってない内から、口にした途端、ドキドキしていた。
のどじまんGOGO!




