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相利共生  作者: カエル
第四章
21/53

鯰川雷太

「ああ、こっちです」

 待ち合わせ場所にやって来たその人に僕は軽く手を上げた。

「今晩は鯰川先生」

「こ、今晩は」

「急にすみません。今、ちょっと仕事が行き詰っていまして気分転換したくて」

 鯰川さんと会うために考えてきたもっともらしい口実を僕は口にした。

「い、いえ……」

 鯰川さんの様子はどこかおかしかった。パーティー会場で会った時はもっと堂々として明るかったのに、今日はなんだかオドオドしている。

 飲み屋に入ってからも鯰川さんの態度は変わらなかった。

「大丈夫ですか?」

「え、な、何がですか?」

「あ、いえ、前にお会いした時よりも元気がないようですので……」

「ああ、いえ……」

 鯰川さんは気持ちを落ち着かせるように運ばれてきたビールを一口飲んだ。

「ふ、不安なんですよ」

「不安?」

「米田さんもご存じでしょう?パーティー会場を襲った犯人の男、編集者の灰塚さん、そして、伊那後さん……あの晩、パーティーにいた人間が三人も死んでいます。もしかしたら、これからまた死人が出るかもしれない……」

 ビールの入ったコップを持つ鯰川さんの手は震えていた。

「鯰川さん……」

「お、俺は怖くて仕方がない。次は俺の番かもしれないって考えると夜も眠れません」

 鯰川さんの目尻には隈ができている。どうやら眠れていないというのは本当のようだ。

「し、知ってますか?死んだ三人はまるで蛇に絞められたように強く縛られたような跡があったって……三人ともそれが原因で死んだって」

「ええ、僕も警察からそう聞きました」

 鯰川さんの全身がガタガタと震えだす。パーティーではとても気丈な印象を受けたが、どうやら繊細な一面も持っているようだ。

 すると、鯰川さんはこんなことを言い出した。

「お、俺、三人は 『呪い』で殺されたと思っているんですよ」

「呪い……ですか?」

「古来より、蛇を使った呪いはたくさんあります。さ、三人はきっと蛇を使った呪いで殺されたんだ!」

 鯰川さんは頭を抱えた。鯰川さんの小説『魔法対戦』は色々な魔法が入り乱れるファンタジーだ。鯰川さんはきっと、呪いについても詳しいのだろう。

 だけど、僕は知っている。これは呪いなどではなく、『白い大蛇』というアヤカシの仕業だということを。

「……大丈夫ですよ。きっと何かの偶然です」

 そう慰めたが鯰川さんの震えは止まらない。それから、三、四時間ほど飲み、鯰川さんと別れた。飲んでいる間、鯰川さんの震えが止まることはなかった。


 鯰川さんと別れた後、僕は自分の手首を確認した。



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