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相利共生  作者: カエル
第四章
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鎮守の沼にも蛇は棲む⑤

 翌日、猿木さんの元に例のアヤカシが返ってきた。

 そのアヤカシは小瓶に入っていた。一見すると青色の紐にしか見えない。猿木さんは小瓶から紐状のアヤカシを取り出すと、僕の手首に巻いた。

「前にも言ったが、このアヤカシが確実に反応するのは三メートル以内だ。だから、できるだけ三メートル以内に近づいてくれ。そして、最低でも十五分以上、対象者の近くにいてくれ」

「うん、分かった」

「そして、もう一つ。このアヤカシは人に憑いているアヤカシにも反応できるが、何のアヤカシが憑いているかまでは分からない」

「このアヤカシが反応したとしても、相手に憑いているアヤカシが本当に『白い大蛇』かどうかは分からないってことだね?」

「そうだ」

「つまり、三人全員調べる必要があるってことか」

 一人だけ調べてもその人間に憑いているのが『白い大蛇』とは限らない。他の二人も調べて反応がなかった時に初めて、その人間に憑いているのが『白い大蛇』だと確定するのだ。

「万が一、二人以上に反応したらどうするの?」

 二人に反応した場合、その人間のどちらかに『白い大蛇』が憑いていることになる。

 これなら二人に絞り込めるのでまだいいけど、問題は三人全員に反応した場合だ。

 可能性は非常に低いけど、三人全員に何らかのアヤカシが憑いていて、反応することだってありえる。その場合は三人の中の誰に『白い大蛇』が憑いているのか絞り込むことすらできない。

「その時は、その時だ。また別の方法を考えよう。まずはできることからやるべきだ」

「それもそうだね」

 まずは、この紐状のアヤカシを使って調べるのが先だ。何か問題が起きたらその時考えればいい。

「あと、このアヤカシ、ずっと手首に巻いていても大丈夫なの?」

「こいつは人から発せられるエネルギーを餌にするタイプのアヤカシだ。自分の身に危険が及ばない限り、お前からエネルギーを吸い取るために離れない。だが、安心しろ。こいつはほとんど動かずエネルギーを節約しているため、一日に吸うエネルギーの量は極々少量で十分だ。だから一日中、身に憑けていても日常生活には全く支障はない。それに、この大きさのアヤカシは通常、数日で憑いている人間から離れるが、こいつは自分の身に危険が迫るか、引き離さない限り何か月も憑いている人間から離れない」

「なるほど」

 確かに、こうして手首に巻かれていても全く疲労感などは感じない。

「では、次に誰から調べるかだが……」

「うん。そうだね」

 灰塚さんが亡くなったため、『白い大蛇』が憑いている可能性のある人物は残り三人。

慎重な話し合いの結果、最初に調べるのは鯰川さんと決まった。早速明日、鯰川さんに接触してみようと思う。


その日の晩。家で明日のことを考えていると家のインターフォンが鳴った。

「はい」

 玄関の扉を開けると、そこには二人の人間が立っていた。その内、一人は僕が知っている人だった。

「橋田刑事」

「今晩は、米田さん。少しお話よろしいですか?」

「……どうか、されたんですか?」

 嫌な予感がしてドクンと心臓が高鳴った。何故だか知らないが、嫌な予感は大抵の場合、当たる。

 橋田刑事は静かな口調で僕に尋ねた。

「米田さん。伊那後秋吉さんという方をご存じですね?」 

「はい、知ってますけど……」

「お亡くなりになりました」

「えっ?」

 呆然とする僕に、橋田刑事は淡々とした口調でもう一度言った。


「伊那後秋吉さんがお亡くなりになりました」



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