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闇 十
「ちょっと、ここいいですか?」
その子は、ちょうど文学の講義が終わった後、僕の隣の席に座り、話しかけてきた。
「え、ええ…。」
「あ、私、染谷美玲っていいます!
あなたの名前は?」
その子はみんなからの人気者で、講義室でもいつも人の輪の中心にいる…僕は話をしたことはないが、そういう風に周りの様子を見て記憶している。
とにかく、その子…いや染谷さんは目立つ存在だ。
また、そんな染谷さんが僕なんかに話しかけたせいだろう、周囲の人間からは、ざわめきが起こる。
そして、今までの大学生活で経験したことのないような注目を、僕は浴びる。
「ぼ、僕は…田所和男って言います。」
「和男くん、ですね。
ちょっと話したいことがあるんですけどここでは何なので、連絡先、交換しませんか?」
その一言は、僕をびっくり仰天させた。
「え、ええ…僕はかまわないですけど。」
「ありがとうございます!
では、後で連絡します!」
そういって彼女…染谷さんは、去っていった。




