叩き込め!
黒ロボットのシルエットはどんどん巨大になっていく。無論、俺たちだって黙って見ているわけではなく、さっきから攻撃を繰り返しているのだが、光の粒子の嵐によってすべて弾かれてしまった。
敵の変身中に手を出せないのもお約束なのか。
なんてBPポーションを飲みながら暢気に考える俺であった。
「ちょっと!?アンタも攻撃しなさいよ!!」
アテナがなんか叫んでいるが、俺には強力な遠距離攻撃が無いのだ。アテナやアルマの魔法が効かない時点で俺の出番は無いのだ。・・・さすがにあの嵐の中に特攻する勇気は無い。
ならば今のうちに回復しておき、嵐が止んだら速攻で特攻を仕掛けるのだ。え、結局特攻なのかって?仕方ないんだ。いい加減回復アイテムが尽きてきて余裕なんかないのだ。
「お前らも今のうちに回復してけよー。あの嵐の中にこっちからは攻撃できないみたいだし、こっちへの攻撃もしてこないみたいだからなー。」
全員に回復の指示を飛ばす。むしろ今はそれぐらいしかできないと言った方が正しいだろうか。
しっかし、どこまで巨大化していくんだ。2メートルくらいだった黒ロボットのシルエットが既に10メートル超えまででかくなってるんだが。・・・正直早くしてほしいんだが。アーテルたちには召喚時間もあるんだからな。
そんな思いが通じたのか知らないが、とうとう光の粒子の嵐がはじけとび、元黒ロボットがその姿を現した。見た目は2メートル程度だった黒ロボットがそのまま20メートル近くまで巨大化したものだ。
いや、少し違う。2メートルサイズの時には無かったが胸の部分に赤く光る1メートルサイズの玉のような物がめり込むように埋まっていた。
あれは・・・【ガティアス】のコア、かな。見るからに弱点っぽい。あからさま過ぎて逆に弱点じゃないかって疑いたくなる。
それに巨大黒ロボットの挙動も変だ。頭を抑えて苦しそうに呻いてる・・・ように見える。口が無いし、喋れないみたいだから実際の所はどうなのか分からんが。少なくともこちらに攻撃してくる気配が無い。
「どういうことなんだ?」
「まるで苦しんでいるように見えるのですー。」
「うむ、あの胸に露出している玉のようなものといい、様子がおかしいのだ。」
さて、どうすれば良いんだろう?このまま攻撃を加えれば良いのだろうか?しかし・・・
「敵性個体ヨリ信号ヲ受信、解析ヲ開始シマス。」
・・・はい?ラグマリアがなんかやりだしたぞ。
「解析終了、現在、敵性個体ノAIト憑依物ニヨル相互干渉ニヨリ伝達経路ニ混乱ガ生ジテイル模様。」
・・・はい?
「・・・つまり、あのロボットのAIが憑りついている【ガティアス】の支配に抗っている、と言う事なのだ?」
「ソノ認識デ間違イアリマセン。」
・・・なんだってそんな事に?
「おそらくあのロボットが巨大化したことで【ガティアス】の支配が追いつかなくなっているのだ!支配が揺らいだ事であのロボットのAI・・・つまり意識が表面に出てきたのだ!!」
・・・つまり、あのロボットは暴れたくて暴れているわけではないと言う事か。すべては憑りついたガティアスのせい。そしておそらく・・・
「なら、あの胸の赤い玉みたいなものを破壊すれば・・・」
「うむ、正気に戻るかもしれないのだ!!」
ロボットなのに正気とはこれいかに。だがまともに相手をするよりは勝機があるかもしれん。
「・・・よし!全員聞いていたな!!全員、胸の赤い玉を狙え!これで終わらせるぞ!!」
「分かったわ!」「はい!」「了解なのです!」
「クル!」「ガオ!」「ピュイ!」「キュイ!」「キュア!」
「ラグマリア!」
「了解デス。敵性ロボットノ救出作戦ヲ開始シマス。」
全員が賛同してくれたので、ラグマリアの言う救出作戦を開始する事にした。・・・何時の間に救出作戦になったのか?と聞くのは野暮だろうか。
「みんな!一斉ブレスです!!」
「クルルー!」「ガオー!」「ピュイー!」「キュイー!」「キュアー!」
召喚時間的に最後の攻撃であろうアーテルたちのブレスが一斉に赤い玉に向かって放たれる。その攻撃は赤い玉に当たるも破壊までには到っていないようだ。さすがにそこまで甘くは無いか。
「今がチャンス!!」
アテナがそう叫ぶと弓を構え、矢を番える。あれ?何時もの【爆発魔法】じゃないのか?
「矢に【大爆発】を【魔法付加】!」
・・・え?今なんて?
「行っけええええ!!!」
矢が放たれる。放たれた矢は見事に赤い玉に突き刺さり・・・
ドッゴーン!!
爆発した。何時もより規模は小さいのに爆音も衝撃波もいつも以上に大きい。・・・爆発を一点に集中させる事で威力を高めたのかな?しかし何時の間に【魔法付加】を・・・ああ、そういえば海で【スキル獲得券】を手に入れたんだっけ。
それはともかく、巨大黒ロボットの胸にある赤い玉にヒビが入った。
「やりますね、アテナ。私も負けてはいられません。」
え?アルマも?
「閃光と雷鳴の槍よ、その力と刃を以て我が敵を討ち貫け!」
え?何その詠唱?聞いたこと無いんだけど?アルマの手にデッカイ雷で出来たようなバチバチ言ってる光の槍が現れる。
「【雷鳴疾槍】!!!」
そしてその槍を槍投げのように投げる。投げられた槍は赤い玉に直撃し・・・
バチバチバチバチバチバチ
とんでもない放電と雷鳴を放ちやがった。
「これが【雷鳴魔法】の威力です!!」
・・・どうやらアルマは新しい魔法を覚えたようだ。しかもまた高威力の魔法。赤い玉のヒビがさらに大きくなる。
「アテナもアルマも凄いのだ!こちらも負けていられないのだ。ラグマリア!」
「了解デス。【グランディスバンカー】セット!」
ラグマリアの右腕が、ラグマリアの身長ぐらいありそうな巨大な腕のようなものに置き換わった。腕のようなものといったのは、腕の先にあるのが手ではなく極太の杭のような物になっているからだ。・・・バンカーってもしかしてパイルバンカーの事か!?
「ハンマー、アクティブ!」
ラグマリアの言葉で腕先の杭が引っ込む。パイルバンカーというのは炸薬などで射出した杭を相手に打ち込む武器のことだ。つまり・・・
ラグマリアは背中のスラスターを全開にして一気に巨大黒ロボットの懐にもぐりこむと・・・
ドゴン!!!
っと右手の杭を赤い玉にめり込ませた。同時にラグマリアの右腕から爆音が鳴り響き、腕先の杭が一気に赤い玉の中に埋もれていく。
・・・ラグマリアさん、近接用の兵器を持ってたのね。しかもごつくてえぐいやつ。・・・いや、作ったのはアヴァンか。
「さあ、アルク!トドメなのだ!!」
あ、やっぱりソレ、俺にまわってくんのね。しかも皆して新技ラッシュとは・・・俺も何かやらなきゃ駄目っぽいじゃん!!
・・・仕方ないな。俺も【スキル獲得券】で新たに取得したスキルを試す時が来た。
「【全天の属性】!!!」
スキルを使用すると同時に【豪剣アディオン】の刀身が虹色の光に包まれる。
【全天の属性】は俺が取得している魔法の属性を全て武器に【魔法付加】する事ができる。
今まで使用してこなかったのは俺のMPの半分を消費してしまうがために、MPを消費しながら高速移動する【俊天の疾走】の起動時間が削られてしまうことと、なにより俺のMND、魔法攻撃力が低いためにそこまでの威力が出せなかったためだ。
しかーし!【豪剣アディオン】はMATKも大幅にプラスされるため、今の俺は魔法攻撃力も大幅に上昇しているのだ!!
そしてこの距離ならMP消費も問題ない!
「【俊天の疾走】!!!」
俺は高速移動しながら一気に巨大黒ロボットに飛び込み、
「【勇天の一撃】!!!」
最強の物理攻撃に、さらに魔法攻撃を加えた、今の俺が出来る最高の一撃を叩き込んだ。
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