深まる混沌、深まる謎
「・・・それにしても大胆だな。つい先日、襲撃されたばかりだというのに次の行動がエリアを一つ丸ごと購入とはな」
「ワイルドだろ?」
・・・やべぇ、なんか某芸人さんみたいな事言っちった。狙ったわけじゃなく単なる偶然だから偶然。
それにカオスよ・・・おまえだって賞金貰ったんだからエリア一つくらい購入できるだろうに。・・・あれ? もしかしてカオスやアニスたちって普段は、どっかの購入したエリアにいたりするのか? 独立したエリアに引き篭もりされたらこっちからは手が出しようがないな。・・・カオスたちは我が顔で侵入してるのに。
「・・・立ち入り禁止区域があるとはいえ、一般プレイヤーも立ち入る事ができるオープンエリアか。一見すると、再度の襲撃がしやすくなったように思えるが・・・誘っているつもりか?」
・・・ふぅー、やれやれ。どうもカオスさんは穿った見方をしているようですねー?
「考えすぎじゃないか? 元々は【インフォガルド】や【アイゼンガルド】の問題解決のためだし、両クランに用がある一般プレイヤーが入れるようにするのは仕方が無いことだろ?」
君たちと違って俺にはやましい裏事情なんぞ一切ございません。
「・・・なるほど? そういうことにしておけば、万が一の時に他のクランやプレイヤーに助けを求めることができるし、一般プレイヤーたちに目撃される危険がある以上、牽制にもなる。アニスたちも迂闊に手が出せない、というわけだな?」
・・・勘の良い奴は嫌いじゃないんだが、コイツは嫌いだな。こっちの考えなんざお見通しって感じがしてなんか偉そう。
「・・・クックック、いずれにせよ迎え撃つ気があるようだな? だが、今のままではアニスたちには勝てんぞ」
「・・・」
確かに、アニスはいとも簡単にアーテルとアウルを完封した。アギラも一撃でアークカイザーを破壊した。俺自身にはアニスの記憶の封印に対抗する手段があるとはいえ、純粋な力押しでは今の俺たちでは勝ち目はないだろう。
ただし、それはアニスたちのステータスを不正に書き換えたりしているというわけではないようだ。ジェスターが【弱体粉】を使って来たのが良い証拠だ。おそらくだが、さすがにそこまでやると色々な方面に不正がばれてしまうから自粛しているのだろう。
ということは、力の差はあれどアニスたちを撃退する事はできるということだ。
だからこそ質より量で押し切れるように考えているわけだが・・・そもそもアニスたちの戦力は未知数だ。助っ人があったとしても対抗できるのか、という不安は残る。
「・・・安心しろ。連中は他に探し物があるそうだ。しばらくはお前に構っている暇はないはずだ」
「探し物だと?」
どういうことだ? アニスたちのバックには運営に関わっている人間がいるんじゃないのか? 運営側の人間ならこのゲーム世界のどこに何があるかなんて手に取るようにわかるんじゃないのか? わざわざゲーム世界の中で探し物なんて・・・ああ、そうか。
「・・・俺と同じようなプレイヤーを探しているというわけか?」
アニスたちの目的は未だにわからんが、俺が襲われた理由は【固有能力】とやらが関係しているのは間違いない。そしてそれは俺だけが持っているとは限らない。
そうなるとまさか・・・コイツら、俺と同じように誰かを襲うつもりなのか!?
「・・・残念ながら外れだ。探しているのはお前が知っていて未だ知らないものだ」
・・・何言ってんの? こいつ? なにかのとんちか?
「・・・それと勘違いしているようだから言っておく。このゲーム世界を完全に把握している人間はいない。そしてこのゲーム世界にいる以上、世界の制約から逃れられる人間もいない。例えそれが運営側の人間であったとしてもだ」
「なんだと?」
どういうことだ? さっきからコイツの言ってることがまるでわからん。
「・・・まあ、お前にとっては良い時間稼ぎになるだろう。せいぜい力を蓄えておくんだな」
「あ、おい!!」
カオスの奴が動く音が聞こえた。急いで木の後ろにまわると・・・そこには既にカオスの姿はなかった。
気配も存在も感じない・・・すでに【レギオンガルド島】にはいないようだ。・・・相変らず逃げ足の速い奴。というかあの野郎、マジでどうやって消えてんの?
とにかくだ。カオスの言っていることを信じるのなら、連中は探し物をしている間はこっちに構ってる余裕がない。その間に俺たちはレベルアップを図ることができるってわけだ。
・・・なーんてことを素直に信じられるわけないよな。
カオスは自ら契約だのビジネスだの言っていたということは、カオスもその探し物とやらをしているということだ。にも関わらず俺の所に来たということは・・・まさか、俺の近くにその探し物とやらがあるのか? いや、それならアニスたちも連れて来ているはず。
わざと情報を流して、その探し物とやらを俺にも探させようとしている? 可能性はあるかもな。カオスを発見したように俺の【固有能力】を使えばその何かを見つけられるかもしれん。アニスたちの黒幕がわざわざ俺を見逃したのはそのためか?
だが、そもそも何を探しているのかわからんしな。
・・・わからんことを悩んでいてもしょうがないな。わかっているのはそう遠くない内にカオスやアニスたちとぶつかるだろうという事だけだ。
ならば俺のやるべき事は変わっていない。
力をつけて奴らを撃退する。それだけだ。
逃げる選択肢など最初から無い。
そう俺が決意を新たにしていると・・・
「ふむ、どうやらおかしなことに巻き込まれておるようじゃの?」
近くの木の上から、また別の声が聞こえてきた。
・・・この俺が気が付かなかっただと? それにこの声は・・・
「・・・なんでいるんだよ、ジジイ」
俺が声をかけるとその人物は木から飛び降りて、俺の背後に着地する。
顔を確認するまでも無い。こいつはトーナメントでアルマにセクハラ働きやがったエロジジイ・・・もといゲンジィとかいうジジイだ。まことに遺憾ながら俺のリアルでの知り合いでもある。
っていうか、なんでこのジジイもいるんだ。こいつもカオスと同じく連絡先を交換していないし招待もしていないのに・・・まさか、このジジイもカオスたちの仲間っていうんじゃないだろうな。
「ワシはソロプレイヤーじゃと言ったじゃろう。先ほどの男とは関係も面識もないぞい。ああ、この島にはラング坊に頼んで入れてもらったんじゃ」
・・・このジジイも普通に俺の考えを読みやがるな。それとラングには後でOHANASHIする必要があるな。
「だったら結局、何しにきたんだ? 女の子たちにセクハラしに来たとか言ったらぶん殴るぞ」
知り合いでも容赦なくボコボコにした上で通報してやる。
「失礼なことを抜かすな!・・・前にも言ったじゃろう。気になることがあるとな。その調査中じゃ」
そういえば、このジジイの試合後にそんなことを言ってたような・・・
「だから、その気になることってなんなんだよ」
・・・いかんな。このジジイと話しているといつもイライラする。なんせこのジジイ、肝心な事はいっつも何にも話さないからな。そのせいでまわりがどれだけ迷惑していることか。
「・・・ワシが調べているのは、このゲームの社長じゃよ」
しかし、予想に反してジジイはあっさりと白状した。その声色からしてかなり真剣のようだが・・・
「何言ってんだよジジイ。社長に用があるならリアルの会社に行ってアポ取ってこいよ。ゲーム世界で探ってどうするんだ」
百歩譲って、社長がゲームにログインしていたとしても見つけるのは不可能だろ。
それよりも、リアルで顔の広いジジイなら相手が大企業の社長でもアポを取るくらい簡単で確実なはずだ。そもそも社長を調べるってなんだ? いつから探偵なんて始めたんだ? このジジイは。
「馬鹿たれ。現社長のことじゃないわい。わしが探しとるのは前社長の方じゃ」
「・・・は?」
・・・何を言ってるんだ? このジジイは・・・だって前社長は・・・
「と言うわけでワシはさっきの男を追わせてもらう。関係ありそうじゃしな」
「おい! それはどういうことだジジイ!・・・って、もういねぇ!!」
俺はすぐに振り返ったが、既にそこにはジジイの姿は無かった。
なんなの? カオスと言いジジイと言い、肝心な事を言わないで消えるのがはやってんの?
「・・・前社長だと?」
このゲームの社長は有名だ。現社長も前社長もな。特に前社長はVRゲームの第一人者と言っても過言ではなく、よくニュースやCMなど色んな場所で引っ張りだこだったから、普段ニュースも新聞も読まないような俺ですら顔ぐらいは知ってる。
だが・・・
「前社長は・・・
もうとっくに亡くなってるんじゃないのか?」
俺の疑問に答えてくれる奴は・・・誰もいなかった。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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