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称号と英雄

ベルバアルが座っておりした席にアルマが座り、ラーサーが座っておりした席にアテナが座りんした。席を強奪された二人はそそくさと逃げ出しもうした。なんとも薄情なヤツラでありんすね。


ミューズ嬢は相変らずワッシの腕に抱きついているでごわすし、ポロン殿もワッシのすぐ隣に座っているでごわす。・・・まあ本当はポロンも逃げ出そうとした所でワッシが肩をがっしり掴んで逃げ出せないようにしたんでごわすがね。


あとこの場に残っとるんは・・・ニヤニヤこっちを見とる野次馬二名(ラングとガット)。・・・コイツらは後でしばいたるわ。


以上の5名で一つのテーブルを囲っている状況でござーい。しかも会話が一切なく、沈黙が続いとりやーす。


一体ぜんたいなんでっしゃろな、この空気は? ファッファッファ!


・・・口調がさっきからおかしい?


そ、そんなことはないじょ((゜Д゜;))。


ただ、ちょーっと空気がピリピリしていて思考が上手く働かないだけだから。


・・・ふぅ・・・いかんな。ここはお祝いの場であり、楽しくおしゃべりする場。せっかく盛り上がってるところに暗い空気は似合わない。


ここは! 漆黒のオールラウンダーと呼ばれたこの俺が! この空気も見事綺麗さっぱり洗浄してくれよう!!


「・・・それでポロン、やっぱりアイドルの仕事って忙しいの?」


「ええ!? ここで僕に話をふるんですか!?」


・・・だって他のヤツら、怖いんですもん。面白がってるラングとガットはまともに答えないだろうし・・・俺が頼れるのは君だけだ! 頼む! この空気を変えてくれ!!


「え~っと、そうですね。基本的に毎日、歌やダンスのレッスンですし、収録やレコーディングともなるとリハーサルとかもあって、てんやわんやですよ」


ふむふむ、なるほど。俺にはアイドルの事なんてまるでわからないがやはり大変なんだな。


「ああ、でも僕たちの場合はこのゲーム内でのレベリングもある意味で仕事ですから、そういう意味では他のアイドルたちよりも楽というか楽しめてると思います」


・・・レベリングが仕事? 一体どういうことだ?


「私たちは~このゲームの宣伝もしていますが~同時にプレイヤーでもあって~冒険の内容とか感想なんかをブログとかに載せてるんですよ~」


「僕たちも他のプレイヤーたちと同様に、【アイドル】クラスを取得して【ソング】や【ダンス】スキルのレベリングを行っているわけですね。その過程をアップしたりするのも宣伝の一つと言うわけです」


ふむ、公式アイドルだからって運営からひいきされているわけじゃないのか。


自力で冒険しているのなら、このゲーム内での歌唱力やダンスのキレは本人の努力の賜物ってわけだ。手の届かないアイドルっていうよりは身近なアイドルってことで親しみがもてそう。


しかし・・・


「それって大変なんじゃないか? アイドルの仕事も大変なんだろうし、ゲームの時間とかちゃんと取れてるのか?」


当たり前だがリアルを疎かにしてゲームはできないだろう。・・・まあ、一部の廃プレイヤーはリアルを犠牲にしてゲームをしているみたいだが。


ただでさえ、リアルでも忙しい二人がゲームの中でも頑張ってるとなると・・・ある意味二重生活みたいになってつらくないのだろうか?


「それが~、そうでもないんですよ~♪」


しかしミューズは余裕そうに笑みを漏らす。どういうことだろう? 昔は病弱だった二人も今では立派なタフネスになったという事だろうか?


「実は僕たちの仕事って実験も兼ねてるんですよ」


「実験?」


なんか急に物騒になったような・・・


「はい。ゲーム内での歌やダンスの練習がリアルにどれくらい反映されるかの実験、ですね。その関係上、ゲームとリアルの時間配分はしっかり決められているんです」


・・・要は運営なり事務所なりがきっちり時間管理しているから、ポロンたちには無理な負担はかかっていないということか?


しかし、リアルに反映ってどういうことだ?


そこに静観していたラングが口を挟んできた。


「ああ、それなら僕も聞いたことがあるよ。ゲーム内で歌とかダンスとか他のスポーツとかもだけど、スキルのレベルを上げていくとリアルでも上達しているように感じるって」


・・・なんじゃそりゃ? ここは肉体から切り離された精神だけのゲーム世界だよな。百歩譲って精神的な成長があったとしてもリアルの、生身の体には影響ないはずだろう? それで歌とかが上達するってどういう理屈?


「えーっと、要はカラオケなんかにある採点システムの()()()()()()ですね。スキルの補正によって100点満点に近い動作が再現できて、それが体に・・・いえ、精神に染み付いていますから、あとはその動作をリアルで再現できれば、というわけです」


・・・つまり、歌なりダンスなりの100点の動作が()()()()()()()()()()()から、後は肉体の方がそれを忠実に再現できるようになれば100点のパフォーマンスができる、ということか?


普通のカラオケなんかの採点システムを使う際は「どういう歌い方をすれば100点満点を取れるか」を考えるが、その逆バージョン・・・つまり「頭の中では既に100点満点を取る為の歌い方がある」状態だから、その歌い方をリアルで実践できるように練習すれば・・・理屈の上では100点満点の歌い方ができるようになるわけだ。


二人はその理屈を実践するために実験していると言うのか?


「・・・そういえば、二人の歌やダンスが上手になってるって最近騒がれてるのを聞いたような・・・」


ラングが呟くように話す。もう既に影響が出ているというのか?


「実際、僕たちも効果を実感していますよ! 普通に練習するより何倍も効果があると思います!!」


「おかげさまで~、他のアイドル達に差がつけられたと思います~♪ 目指せオリコン! 目指せ紅白です~!!」


うーむ・・・この二人、何気にとんでもない事を言ってないか? ラングだけじゃなくガットも・・・ピリピリしてたはずのアテナやアルマまで目を見開いて驚いてるよ。


「僕たちはまだまだアイドルとしては若輩ですし、これからも頑張って行きますよ!」


やる気に満ちた顔のポロン。その顔には無理している様子は無い。むしろ楽しくてしょうがないって感じだ。


「まあ、有名になったって意味だとアルクさんたちに負けちゃったかもしれませんけどね~」


「え、どういうこと?」


と、ここでミューズが腕を放してくれた。


よかった。アテナとアルマの目も普通に戻ったしピリピリ感も消えたしな。なんとかこのままうやむやに出来そうだ。・・・もしかしてミューズさん、狙ってました? 恐ろしいアイドルである。


「トーナメントの様子はリアルタイムで世界中に生配信されましたからねぇ・・・トーナメント参加者・・・特に優勝者のアルクさんはかなり有名になっちゃったみたいですよ?」


マジか・・・ま、まあ、あくまでゲームのアバターとして、という意味だろうからリアル生活の方には影響は無いだろう。・・・中の人が俺だとばれない限りは。


・・・このゲームのリアルに与える影響、半端なくない?


「リアルだけじゃなくゲームの中でも有名になっちゃいましたからね~」


ミューズが言ってるのは・・・称号のことだな。実は、ほとんど忘れかけていたがトーナメントで貰った称号はこんな感じだったのだ。


【第一回バトルトーナメント優勝者】

第一回バトルトーナメント優勝者に贈られる称号

【人間界】の英雄として扱われる

【人間界】NPCの好感度+50%

その他の世界のNPCの好感度+30%


【勇者】の次は【英雄】ですよ。このゲームは俺を一体どうしたいんだか。ちなみに好感度が高いほどNPCからいろいろ有力な情報を得られたりするから、かなり有用な称号だったりする。


ただ、おかげで【人間界】のどこ行ってもNPCから黄色い声上げられるのはどうかと思うが。他の世界だと大分マシなんだが・・・困ったもんだ。


まあ、俺のことはどうでも良いとして・・・


「・・・そうか。とりあえず二人とも楽しみながら頑張ってることはわかった。これからも応援してるぞ!!」


「はい!!」


「ありがとうございます~♪」


俺の言葉に元気良く返事する二人。


二人とも、かつては病院に入院するほど病弱だった。


だが、今の二人は夢を叶え、目標に向かって頑張ってる。


そんな二人を応援するのは当然のことだろう。


・・・う! ちょっと目から汗が・・・


「それで~、結局アルクさんの本命はどちらなんですか~?」


そう言ってミューズはイタズラ顔でアテナとアルマを見比べている。


・・・ミューズよ。せっかく良い話でまとまりそうだったのに・・・何故、荒波立てるような事を言う?


ほらぁ、アテナもアルマもマジな顔でこっち見てるじゃん!


・・・仕方無い、ここは男らしく・・・


「【韋駄天の俊走アークヘブン・アクセル】!!」


「あ!!」


「逃げ・・・」


超加速状態に入った事により、周囲がスローモーションのように動き、声が途切れる。


そのまま俺は素早く立ち上がり、その場を後にする。


これは逃走ではない!


戦略的撤退だ!!


(*・ω・)*_ _)ペコリ


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m(_ _)m

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