クランとクラス
「・・・なるほどねぇ、クラン同士の連携ってことか」
俺の話を聞いたラーサーが真剣な顔で考え込んでいる。
「フハハハハハ! 我がクランの助っ人など不要!」
ベルバアルはいつも通り偉そうにふんぞり返って、俺の提案をあっさりばっさり斬り捨てる。
「そうか・・・先にレシトリーに話したら前向きに考えてくれているようだったんだがな・・・」
「・・・あ、それならうちのクランも問題ないです」
そしていつも通りへタれるベルバアル。【ディアボロス】クラン内の力関係を一度確認しておきたい所だ。少なくともトップじゃないだろ、コイツ。
まあ、ベルバアルは放っておく(酷い)として・・・
「ラーサーはあんまり乗り気じゃないみたいだな?」
これまで割りと好意的に受け止められていた提案(ナユタとベルバアル除く)だが、ラーサー的には難色っぽいな。副リーダーのシャンテは乗り気だったのに。
「・・・クランとして有益なのはわかるよ? まあ、報酬の取り分とか揉めそうだし、よく知らない者同士の連携とか不安だけど・・・ある程度の実力者なら上手く立ち回るだろうからね」
それがわかっているのなら、一体なにが問題なんだ?
・・・なんて疑問に思うところだが、実は俺もなんとなくわかっている。
「・・・ラーサーはラーサーで他にやりたいことがあるってことか?【転生】とかこれとかな」
俺は手元に出したそれをヒラヒラさせて見せ付ける。
「それは・・・【獲得券】かの?」
「正解だ、ガット。トーナメントの商品としてもらった【上級クラス獲得券】や【特級クラス獲得券】・・・【転生】と並んでプレイヤーを次のステージに進める物だな」
新たな種族への【転生】と同様に、新たなクラスの取得もまた強くなる為の重要な要素。
しかも、【特級クラス獲得券】はトーナメントの中でも上位四名・・・つまり、俺とカオス、ラーサー、ベルバアルしかもらえていない貴重品だ。
だからこそ・・・
「おいそれとは使えないんだよね。それに使ったとしてもクラスレベル1からのレベリングになる。【転生】してもレベルが1からだし、レベルが上がれば今以上に強くなるとは言ってもねぇ・・・」
つまり【転生】や新クラスの取得により、一時的にしろ現状よりも弱くなるってことだ。周りのサポートによるパワーレベリングで短期間のレベルアップを図ることも可能だろうが、それでもそれなりの時間がかかる。
となると、その期間に協力要請が来たとしても戦力としては当てにならない可能性が高いというわけだ。これじゃあわざわざクラン同士で協力する意味がない、とラーサーは考えているわけだ。
「ふぅ・・・多分、ラーサーは【双星騎士団】の中でも突出した戦闘力でクランの要だからそう思うんだろうが、もうちょっとクランメンバーを信用したらどうだ? メンバーの中にはシャンテを始めとした実力者だっているだろ? 仮にラーサーがいなかったとしてもフォローしてくれるさ」
トーナメントでのシャンテを始めとした【双星騎士団】のメンバーの戦い振りを見る限り、実力がある者ばかりだったし、やる気も向上心もあるようだった。ラーサーが抜けた穴も・・・まあ、完璧にとはいかないだろうが埋めてくれると思う。
クランというものはリーダーも大事だが、それ以上にメンバー一人一人で成り立っているものだ。リーダーがいなきゃ何にも出来ません、ではお話にならないし、そんなクランが強豪に数えられるわけが無い。
リーダーとしてはむしろ「俺は前線から一時離脱するから後は任せた!」くらいのことを自信を持って言えるくらいじゃないとな。
「・・・なるほどねぇ・・・もっとメンバーを信用しろってことか・・・」
「信用と信頼、どっちもだな。」
多分、ラーサーは性格的にリーダー向きじゃないんだろうなぁ。基本的に自分本位で考えて自分のレベルで周囲を見るから、ある程度以上の実力者相手じゃないといまいち信用しにくいのかもしれない。
「うむ、その通りだぞラーサー! 我輩もよく敵に突っ込んではレシトリーたちに怒られるぞ! 仲間を置いていくな、とな!!」
・・・ベルバアル、お前のそれはなんか違う。それは自分本位じゃなくてただの自分勝手。
「・・・」
ほら、ラーサーもなんか同類扱いされて嫌そうな顔をしているじゃないか。その意味不明なドヤ顔を止めてラーサーの顔を見てみろよ。
コイツはコイツでリーダー向きの性格じゃないな。まあ、それは前からわかってたけど。
「・・・お主ら、小難しい事を考えておるんじゃのう。ここはゲームの世界なんじゃから、もっと気楽に考えても良かろうに」
・・・ああ、ここにはもう一人自分勝手な奴がいたな。ガットよ・・・お前はお前で【鍛冶】に熱中しすぎてヴィオレに迷惑かけてるからな?
「そのセリフ、ヴィオレの前でもう一度言ってみろ」
「・・・」
ダラダラと大量の冷や汗をかくガット。大変わかりやすいエフェクトである。まあ、お前が言わなくても俺の方でチクっておくから安心しろ(笑)。
「気楽に、か・・・そうだね。今まで僕とまともに戦えるのはシャンテくらいしかいなかったけど・・・もう少し他のメンバーも信じてみようか」
・・・さらっとメンバーをディスったような気がするが・・・信じることは大事だよね。
「そ、それはそれとして、その【特級クラス獲得券】とやらで取得できるクラスにはどんなもんがあるんじゃい? 興味があるんじゃが?」
そこでガットの奴が話題を変えるように言ってきた。
「俺が取得できるクラスは・・・【剣豪】【ガンマスター】【賢者】【幻獣士】【星霊士】・・・そして【勇者】だな」
【剣豪】は剣と刀を、【ガンマスター】は銃を、【賢者】は【魔法】を極めたクラスだそうだ。【幻獣士】は【育成士】、【召喚士】の最上位。【星霊士】は【精霊士】の最上位とのこと。
【勇者】は・・・みんなの予想通り、オールマイティーに能力の高いクラスだ。
「僕には【聖騎士】っていうのがあったね。聖なる武具の力を強めるらしいよ」
「我輩には【魔戦士】というのがあったぞ! 魔の武具を強化するそうだ!」
・・・ふむ。やはり使用するプレイヤーによって取得できるクラスが異なるようだ。多分、現状の種族や、スキル、ステータスなどが関係しているんだろうな。
他にもアテナたちに確認してもらったら【聖女】【姫巫女】【魔導士】【創造士】【神の料理人】【生命士】なんてものもあった。
全部取得したい所だが・・・【特級クラス獲得券】は6枚しかない。それに今後も選択できるクラスが増える可能性もあるわけで・・・気軽に使えないというのもわかってもらえるだろう。
「我輩はさっそく【魔戦士】を取得しようとしたのだがな!・・・あいにくとレシトリーたちに止められた。下調べしてからにしろ、と」
・・・それは当たり前だベルバアル。【特級クラス獲得券】は通常では取得できないクラスを取得できるクラスだが、【獲得券】でしか取得できない、とは言われていない。
万が一、【獲得券】以外でクラスが取得できる方法があったのなら無駄使いしないためにも、別の方法を取ったほうが良いだろうし。
・・・とはいえ、そんなことを言い出したらいつまでも【獲得券】を使えない、宝の持ち腐れになってしまうわけで・・・どこかで見切りをつけて使ったほうが良いだろう。
「アルクには是非、【勇者】になってもらいたいのう」
「そうだね。【勇者】がぴったりだね」
「【魔王】として【勇者】と戦うのは宿命だろう!」
コイツら・・・アテナたちと同じ事言いやがる。実はアテナたちにも【勇者】クラスを進められていたりする。でもなぁ・・・
「【勇者】ってあれだろ? 好き勝手やった挙句に力を取り上げられて非業の死を遂げたり、いらねぇとか言ってパーティメンバーを捨てたら逆襲されて非業の死を遂げたり、信じていた仲間に裏切られて非業の死を遂げたら【魔王】として復活したりとか・・・」
ぶるぶるぶる・・・考えただけでも恐ろしい。
「なんで非業の死を遂げる結末ばかりなんじゃ」
「ちょっと、ざまぁ系のラノベの読みすぎなんじゃない?」
「【魔王】になるのは我輩だ!!」
俺は騙されないぞ!【勇者】になったらこき使われるだけ使われて、最後はバッドなエンドを迎えるに違いない!!
(*・ω・)*_ _)ペコリ
作者のやる気とテンションとモチベーションを上げる為に
是非、評価とブックマークをポチっとお願いします。
m(_ _)m




