フットワークの軽い
肉と野菜を全制覇した所で話を切り上げ、再びぶらぶらする俺。
大体の有力なクランやプレイヤーとは話したと思うんだが・・・最有力のラーサーやベルバアルの姿が見えないな。あいつらどこにいるんだ?
ラングやガットの姿も見えないし・・・まあ、アイツらはいつでも話せるから別に良いんだが。
「お姉ちゃん! あれもこれも美味しいよ!!」
「そう、良かったわね」
「・・・ん?」
なんだか仲良さげな姉妹のような声が聞こえてきた。しかも、この声は聞き覚えがある。
なので俺はその声のするほうへと近寄ってみた。
「あ! おにいちゃん!!」
「あら、アルク」
そこにいたのはアテナと・・・俺たちのクランホームによく出入りしているちびっ子少女神のククリだった。
そう・・・この少女はプレイヤーでもなく【眷属】でもなくNPC・・・それも【縁結神ククリヒメ】というれっきとした神様だったりする。
その神様が何故、俺たちのところに頻繁に出入りしているのか? ・・・遊びに来ているらしい。なんともフットワークの軽い神様である。
他の神様たちは【ガティアス】に取り憑かれないように【神仏界】に閉じこもっているはずなのに、なんでこの子だけ自由に遊びまわっているのか・・・ホント謎だ。
「よう、ククリ。遊びに来てたのか・・・アテナが面倒見てくれてたのか?」
「うん! おうちの方に行ったのに誰もいなかったから帰ろうとしたんだけど・・・下のほうで面白そうなことやってたから来ちゃったの!!」
「で、ちょうどそこで私が見つけたってわけ」
そうか・・・予めククリにも連絡しておけば良かったな・・・と言ってもこっちからの連絡手段が無いから無理なんだが。書置きでも残しておくべきだったか? というか引越ししても普通に来れるのね。
どうやら二人はテーブルについて料理に舌鼓をうっていたらしい。せっかくなので俺も一緒させてもらおうと席に着いたんだが・・・
「・・・ 満漢全席?」
二人がいるテーブルの上には、それはもうぎっしりと中華料理が並べられていた。しかもこのテーブル、良く見ると中華料理店なんかでよくある回転テーブルじゃん。こんなテーブル、用意したっけ?
周囲を良く見ると、同じ回転テーブルに中華料理を堪能するプレイヤーがたくさんした。どうやらこの辺りは中華料理コーナーのようだ。
「みんな、すっごい美味しいよ! おにいちゃんも食べよ!!」
「あ、ああ・・・」
もちろん、同席は良い。中華も好きだ。
しかし、だ。この満漢全席を彷彿とさせる大量の料理、三人で食べるのか? というか俺が来なかったら二人で食べるつもりだったのか?
アテナの方を見ると・・・汗をダラダラとかきながら顔を背けやがった。・・・多分、コイツがククリに請われるがまま料理を取ってきたんだろうなぁ。うちのクランメンバーは皆、子供に甘いからなぁ・・・だが、必要な分だけ取ってくることを教えるのも大切だと思うんだ。
しかし、取ってきてしまった物はしょうがない。お残ししてしまったらこれらの料理を作ってくれた人に申し訳ないし、ここは俺も平らげるのに協力しよう。・・・ちなみに満漢全席は2、3日かけて食べる物であって短時間で食べきれるような量の料理ではない。
というか俺、ここまで来るのに結構飲み食いしてきたんだよな。リアルだったらとっくにお腹が破裂しているレベルで。
しかし! ここはゲームの世界! いくら食べてもモーマンタイ!!
そう、思い直して近くにあったフカヒレ皿を手を伸ばす・・・メチャウマ!
「・・・む? アルクか?」
と、そこに無粋な声が・・・この声は・・・
「・・・なんだ、なまぐさ坊主か」
「だれがなまぐさだ」
そこに居たのは俺がトーナメントで戦った自称破戒僧のナユタだった。なまぐさ坊主も破戒僧も戒律を破っているという意味では一緒じゃないのか?
「丁度良い。お前に話が・・・む?」
そのナユタの奴が途中で言葉を切った。正確には俺とアテナとククリを見渡して言葉を発するのを止めた。・・・なんなんだ?
「・・・すまぬ。邪魔したな」
そして、そのまま立ち去ろうとするなまぐさ坊主。
「待て待て待て! どこへ行く!?」
「・・・せっかくの家族団らんであろう? それを邪魔するなど天罰が下る」
「なんでそうなる! 家族じゃなくてクランメンバーだ! どういう勘違いをしてるんだ!!」
まさか、この野郎・・・アテナとククリを妻子だとか思ってんじゃないだろうな!?
「何も言うな・・・家族のぬくもりこそ、この世の幸福そのもの」
・・・聞いてねぇな、コイツ。
いやいやいや、それよりも何よりも俺は・・・
「俺は独身だっての! 彼女すらいねぇよ! ・・・何言わせんだゴラァ!!」
とんでもねぇ勘違いしているなまぐさ坊主に向かって叫ぶ俺。
・・・おい、なんだその悟ったような顔は。何を言わずともわかってる風に頷くのを止めろ。一体お前には何がわかっていると言うんだ。
「アハハハハ! そうだよ~。おにいちゃんはククリのお友達だよー!!」
と、そこで救世主が・・・いや神様からの救いの手が。
他ならぬククリ自身がこのなまぐさ坊主の勘違いを訂正してくれた。
「む? そうなのか・・・んん?」
ようやく誤解が解けた・・・いや、多分わかってて言ったんだろうが・・・ナユタだが、ククリを見て怪訝な顔をしている。・・・どうやら今更気がついたようだ。
「・・・この【神気】・・・もしや【神】・・・か?」
「【縁結神ククリヒメ】だ。頭が高いぞ、なまぐさ坊主」
いくら破戒僧とはいえ神仏への尊敬の念を忘れてはいないだろう。
「・・・これは失礼しました」
おお、見事な「礼」である。さすが腐っても僧侶か。
「いいよ、いいよ~」
当のククリはまったく気にする様子もなく中華料理をバクバク食べている。お前の胃袋はブラックホールかって言うくらい大量に食べまくっている。まったく衰える様子も無く食べ続けている。
なるほど・・・これが神か(笑)
「ナユタ・・・ククリに新しい料理を持ってきてやれ。そして一緒に座って面白い話でもしてやってくれ」
「料理はわかったが、面白い話とはハードルが高いな。・・・わかった」
そう言ってナユタは近くの料理テーブルへと向かっていった。
そのナユタを見送りながら、ククリが呟いた。
「あの人、おにいちゃんと戦った人だね!」
「ああ、そうだ。・・・ん? なんでククリがそれを知ってるんだ?」
ククリはトーナメント会場に来てなかったよな? 俺からは話もしていないし・・・誰かから聞いたのか?
「んっとねー!【天空神ホルス】さんの力でねー、【神仏界】の皆でおにいちゃんたちの戦いを見てたの!!」
・・・今、明かされる衝撃の事実。バトルトーナメントの様子を神様たちが覗き見?していたらしい。
しかも、しれっとまた新しい神様の名前が。
確かホルス神はエジプト神話に出てくる天空の神だ。・・・そういえばホルス神の左目は全てを見通す目だって聞いたことがあるな。
どうやらその力で俺たちの戦いぶりを見ていた・・・いや、見守ってくれていた? と言うべきかな。となると【太陽神アマテラス】【月光神ツクヨミ】【戦闘神スサノオ】や【天凱十二将】の面々も俺たちの戦いを見ていたのか。
「そうなのか・・・なんか言ってたか?」
やはり気になるので聞いてみる。【戦闘神スサノオ】あたりからは駄目だしされてそうだが・・・
「んっとねー・・・アマちゃんがカレー美味しそう、だって!」
「一体どこを見ていたんだ!!」
試合内容を見てたんじゃないのかよ!
これは一度【神仏界】に行って直接確認しておいたほうが良いかもしれないな。
・・・それはそれとして、アテナの奴がいやに静かだな。
「・・・」
・・・なんか顔を真っ赤にして、ブツブツなんか言ってますよ? なんか怖いですけど・・・
・・・触らぬ神に祟りなしだな。放っておこう。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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