キャンプファイヤー
熱く語っているマックスをアスターに任せて・・・押し付けたとも言う・・・俺はまた、別の場所へとぶらぶらと歩いていく。
今居た場所は西の端っこのほうだから、今度は東のほうに行ってみようか。
そう思って歩くことしばらくすると・・・
「あれは・・・?」
・・・火の手があがってるように見えるんだが? まさか・・・DQNが放火でもしたのか!?・・・なーんてことは勿論ない。
近くまで来てみるとその正体がわかった。
「・・・なんだ、キャンプファイヤーか」
しっかりと土台が組まれたちゃんとしたキャンプファイヤーだな。人よりもでかいくらいの巨大な炎がごうごう激しい勢いで燃え盛っている。
その周囲に人が集まり、飲めや歌えやのバカ騒ぎ中である。
キャンプファイヤーなんて勝手にやって良いのか? と思う人もいるかもしれないが、ここはゲームの世界だから火事の心配なんてないし、燃えカスが残って汚れるなんて事はない。帰るときにしっかり撤収してもらえれば元通りだから、元に戻すのなら持ち込みOKと通達してある。
・・・万が一にもゴミなんかを残していった奴には俺直々に鉄拳制裁を食らわせてやることも通達してるしな。無礼講みたいになってはいるがハメを外しすぎるのはよくない。
というわけで、そんな奴がいないかチェックしていると・・・
「おお! アルクくん!」
・・・なんか見つかった。
「皆、今日の主賓がお目見えだ! 改めて乾杯しよう!!」
「「「「おおおお!!」」」」
音頭をとっているのは・・・クラン【クラッシュヘブン】のリーダー、ヘブンだ。俺の姿を見つけた途端、素早く近寄ってきて俺の肩を掴みやがった。
・・・俺としたことが逃げる暇もなかった。どうやら厄介な奴につかまってしまったようだ。
「さあさあ! これを!!」
ヘブンが渡してきたのは特大ジョッキいっぱいに入ったお酒・・・ではなくただのジュースだ。このゲームはお酒は実装されていない。一部の大人たちからは熱望されているらしいが・・・今後実装されるのかどうかは不明だ。
「「「「いっき! いっき!!」」」」
おおう、そこかしろからいっきコールが。・・・やれやれ、しょうがないな。
期待に応えるために特大ジョッキのジュースを一気に飲み干す。・・・普通に美味いな。それに飲みやすい。
「「「「おお~~!!」」」」
歓声が上がるが・・・ただのジュースのいっき飲みだよ? お酒じゃないんだぞ?
「ハハハハ! さすが、トーナメント優勝者!! 皆! 彼の栄光を称えて・・・乾杯!!」
「「「「かんぱ~い!!」」」」
・・・皆、異様にテンションが高いな。やっぱり酔っ払ってんじゃないだろうか? だが、皆が飲んでいるのはお酒ではなくジュースのはずなんだがなぁ・・・雰囲気にのまれてるのか?
「やれやれ・・・」
少し付き合ってやるか、と思い直して空いていた席に適当に座ろうとすると・・・
「ん?」
「む?」
そこには既に先客がいた。とてもカタギには見えない渋めの男・・・クラン【グランツシャッテン】のリーダー、フィリップだ。
5、6人は座れそうなテーブルなのに何故か1人で飲んでいるようだ。・・・そのワイングラスの中身、ワインじゃないよな? ジュースじゃないよな?
「よう、ハードボイルド。こんな騒がしい場所で一人飲みか?」
ハードボイルドクランのリーダーにはこんな賑やかな場にはにつかわしくない気がする。・・・というか、今更だがハードボイルドクランってなに?
「・・・お前もアレに捕まったのならわかるだろう・・・察しろ」
お、無視されるかと思ったが答えてくれた。そのフィリップの目線の先のアレとは・・・ヘブンだ。なるほど、コイツもヘブンに捕まった口か。・・・とはいえ、付き合ってやるコイツも案外やさしいのかもな。
よくよく周囲を見渡してみれば、この場にいる連中は恰好も所属も性別も皆バラバラだな。【クラッシュヘブン】のメンバーは勿論のこと【双星騎士団】や【GGGヒーローズ】、【アマゾネス・プリンセス】などなどクランの垣根を越えたメンバーが集まっている。
他にもトーナメントで見たソロプレイヤーとかも・・・見たこともない奴とかもいるな。あ、俺が一回戦で戦った世紀末モヒカン軍団もいるな。
これ、みんなヘブンが集めてきたのか?
だが、誰も彼も楽しそうだし、無理やり集めたというわけではないようだ。少なくとも無理矢理参加させられている感じじゃない。
「・・・輪に入れないプレイヤーに積極的に声をかけているようだ。人によっては迷惑だろうが・・・助けられたと思っている奴もいるようだ」
感心しているとフィリップに話しかけられた。
・・・なるほどなぁ・・・確かにヘブンは暑苦しいが、面倒見の良い奴だというのは本当のことらしい。
「・・・一つ、聞きたい」
「ん? なんだ?」
「お前がトーナメントで使っていた【兵器】・・・お前のクランで作られた物というのは本当か?」
どうやらフィリップはアヴァンの作った【兵器】に興味があるようだ。そういえばフィリップもトーナメントでライフルを使っていたな。
「そうだな。うちのメンバーのアヴァンが作った。その出来は【ヴァーミリオン】の【兵器】にも劣らないだろう・・・欲しいのか?」
「・・・正直に言えば興味はある。【兵器】の性能もそうだが・・・お前の腕前も、な」
「俺の腕前?」
どういうことだ? まあ、確かに俺以外のメンバーは【兵器】の扱いはからっきしなんだけどな。
「俺たちのクランは基本的に銃の【兵器】を愛用している。だからその扱いの難しさもよくわかっているつもりだ。・・・お前の戦いには正直、驚嘆した」
まあ、普通の一般プレイヤーがライフルの扱いに慣れている奴なんていないよな。このゲームはよくできていて、銃を撃った時の反動とかは狙いの難しさとかはリアルそっくりらしいし。まあ、さすがに弾道計算とか風の影響なんかはリアルと違ってないみたいだが・・・扱いにくいことには変わりない。
射程の短い拳銃だって、狙った場所に当てようとするのは練習が必要だ。無論、俺だって練習はしたぞ。
「俺も【人間界】の【射撃クエスト】で大分慣らしたつもりだったんだがな・・・本格的な戦いでは勝手が違った。だからこそ、【兵器】を使いつつトーナメントで優勝したお前から話を聞いてみたかったんだ」
【射撃クエスト】? そういえば【人間界】にはそんなクエストもあったな。ちなみに内容はクレー射撃みたいな感じだ。難易度が高いほど珍しい報酬を得ることができる。
俺もやってみたことがあったが・・・かなり難しかった。
試しにフィリップと成績を確認しあってみると・・・うん、フィリップの方が射撃の腕前は上のようだ。
それでも本人の言う通り、それだけではトーナメントには勝ち残れなかった。俺の場合は射撃の腕前そのものよりも、それを補助するスキルや【兵器】に恵まれていた所が大きい。
俺とフィリップの違いはそこだろう。
・・・もっともフィリップが負けた理由はそれだけじゃないと思うが・・・
「二人とも! 楽しんでいるかい!!」
俺たちが話している所にヘブンがやってきた。
「「・・・」」
フィリップが負けた敗因は・・・相手が悪かったというのもあると思う。
つまり、ヘブンが・・・いや、言うまい。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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