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幻獣界の探索

「位置についてー! よーい・・・ドン!!」


俺の合図と共に一斉に駆け出す【眷属】たち。この島の外周部を一周する競争だそうだ。そしてなぜかそのスタート係を任せられた俺である。


・・・うーむ、足が速い組と遅い組が居るな。一番遅いのは・・・


「・・・ボエー」


トーナメントでも戦ったあのでっかいカメだ・・・なんでそんな鈍足なのに競争に参加したんだ? まあ、本人・・・本カメ? は一生懸命なようだし、生暖かく見守ってやろう。


と、そこでふと思った。


「そういえば、ミーシャ。連れて来た【眷族】はみんな、鳥と陸上の動物ばかりだよな?・・・まあ、あのでっかいカメを陸上生物と言って良いかはわからんが・・・イルカとか海の【眷属】はいないのか?」


モンスターの種類を陸・海・空に分けると、陸と空のモンスターはいるが、海のモンスターがあの場には居ない。まあ、陸上なんだから当たり前といえば当たり前なんだが・・・連れて来ていないのだろうか? この島の周囲は海なんだから連れて来ても大丈夫なんだが・・・


「海のモンスターの【眷属】ですか? 勿論うちにもいますが・・・バルバラちゃん?」


「・・・あの子ならパスするそうです。陸で騒ぐより、海の中で【眷属】たちと戯れたい、と」


・・・どうやら随分、変わった子がいるようだな。


「すいません、アルクさん。一人、海モンスターの【眷属】持ちが居るんですが・・・水の中を泳ぐのが大好きで、あんまり陸に上がってこないんですよ。なんでも陸酔いするとかなんとか・・・」


・・・プレイヤーだよな? そいつ? というかこのゲームって酔うとかあったっけ?


「・・・海モンスターの【眷属】でも陸に上がることはできるんですけどね。空を浮かぶイルカのような感じで・・・と言ってもやっぱり水の中の方が居心地が良いみたいです」


「元々、海の中まで探索するプレイヤーが少ないのか、海のモンスター【眷属】持ちは少ないですね。うちでもその子くらいです。ただ、その子は自分の【眷属】が大好きで中々陸に上がってこなくて・・・ちなみにその子の種族は【人魚】です」


なるほど・・・筋金入りってことね。まあ、無理して来いとは言わないが・・・【幻獣界】の海事情に詳しいのなら話を聞いてみたかったな。


「何か気になる事もあるのです? アルクさん?」


「まあ、そうだな」


【幻獣界】はレベル帯ごとに島に分かれている、と最初に説明されたので島の上ばかり探索していたのだが、よくよく考えたら海にもモンスターがいるんだから海の中も探索範囲だろう。


なにより・・・


「ほら、アーニャの【加護】のあれだよ」


「・・・ああ、そのことなのです?」


「「?」」


アーニャはわかったようだがも他二人もわからないって顔をしているな。当たり前だが。


俺は、話しても良いか、とアーニャの顔を見る。頷いてくれたので軽く二人に説明しよう。


アーニャが【地竜帝ドラント】から【加護】を貰ったこと。


【地竜帝ドラント】の他に天と海の【竜帝】がいること。


さらに【七大竜王】というのがいること。


他にも【宝獣】や【美食幻獣】というとてつもなく美味なモンスターがいること、などなど。


「「・・・」」


ミーシャもバルバラも、空いた口がふさがらないといった感じで俺の話を聞いている。・・・聞いているよな? 放心してないよな?


「【幻獣界】の天、地、海を支配する【竜帝】が三体いるってことは逆に言えば、【幻獣界】の探索範囲というのも天、地、海があると思うんだよな。それはつまり【七大竜王】や【宝獣】、【美食幻獣】がいるのも陸上だけじゃないってことだ」


それに海の中にも強力な【眷族】になりうるモンスターもいるんじゃないかと思うんだよね。探索しないわけにもいかないだろう。


「なるほど・・・それで【幻獣界】の海の様子を聞きたかったんですね?」


「そういうこと」


自分で確かめるのが一番なんだが・・・海の中って陸以上に広大だからなぁ。ある程度情報は欲しい所だ。無論、対価は払う所存である。


「・・・ね、ねぇ、ミーシャ。と、とんでもない情報をたくさん聞いたような気がするんだけど・・・なんでそんなに冷静なの?」コソッ


「シッ! アルクさんたちのようなトッププレイヤーならこれくらい当たり前なんだよ!」コソッ


・・・おい? 聞こえてるぞ? たまたま情報が入っただけで別に当たり前でもないからね? それにトッププレイヤーって・・・ああ、トーナメントに優勝したからそうなっちゃうのか? 自覚なんて皆無なんだが・・・


「でもアルクさん! それなら陸と海と・・・あと天って場所も探すのです?」


うむ、良い質問だなアーニャ。


「多分、そうなるんだろうが・・・天っていうのが良くわからないんだよな。ほら、フィオレとか鳥系のモンスターが【幻獣界】の島の山の上にいただろう? そういう高い所を天っていうのか?」


ぶっちゃけどんだけ高い山だろうが島の一部だと思うんだが・・・


「天というからには、やはり大空の事を指すのでは無いでしょうか?」


「海の中もそうですが空の探索も、空を飛ぶ手段を持つプレイヤーだけに限られますからね。空の上の探索もあまり行われていないんじゃないでしょうか?」


むしろ空の上なんて移動以外で行こうなんて思わないんじゃないだろうか。ある意味で盲点的な場所なのかもしれない。


これまで【幻獣界】に行ったときは、島の探索ばかりに気を取られていたが空にも海にもまだ見ぬモンスターがたくさんいるんだろう。


「【モンスターイズライフ】のほうでも探してみます! 目指せ! まだ見ぬ【眷族】です!!」


おお、ミーシャは元気だなぁ。・・・というかまだ【眷属】を増やすんだな。


そんなミーシャを優しい目でバルバラが見ている。よかった彼女の緊張もすっかりほぐれたようだ。


「クルー!!」


「キュイー!!」


「コ~ン!!」


「ん?・・・あうちっ!?」


「わー、なのですー!?」


「きゃふ!?」


なーんて和んでいたら俺とアーニャとミーシャに何かが突っ込んできた。ってこの鳴き声を聞けば見なくてもわかるが。


「クルッ! クルクル、クルー!!」


「キュイ! キュイー!!」


「コンコン! コ~ン!!」


「おいおい、どうしたんだアーテル」


「ブランちゃん、落ち着くのです!」


「キュウちゃんも、一体どうしたんですか!?」


なにやら興奮気味のアーテルとブランとキュウちゃん。というかいくら【幼体】でパワーがないとは言ってもいきなり突っ込んできたらびっくりするんだが?


「・・・誰が勝ったのか聞きたいのでは?」


「「「あ・・・」」」


しまった~!?


話に夢中でアーテルたちがゴールした所を見てなかった! 俺としたことがスタートを任されたにも関わらずゴールを見逃すとは・・・不覚。


どうしよう。興奮気味のアーテルたちに対して、見てなかった、とか言ったら怒られそうだ。しかし、見逃したのは事実だし・・・


「・・・ゴールした瞬間なら私が見ていました」


なんと! さすがバルバラさん! 【モンスターイズライフ】の副リーダー! さっそく誰が勝ったのか教えてあげて!


「・・・見てはいたのですが・・・すいません。私にはお三方とも同時にゴールしたようにしか見えませんでした」


・・・そういえばアーテルたちが突っ込んできたのもほぼ同時だったな。くそ~、この場にカイザーかラグマリアがいればコンマ何秒単位で順位が付けられるのに・・・


「仕方無いな。お前達三人が同率一位だ」


「クルッ!?」「キュイ!?」「コン!?」


え? なにその不満そうな顔。そんなに白黒つけたかったの? お前達、そんなに好戦的な性格だったっけ? ライバル争い勃発?


そんな一触即発な空気の中・・・


「は~い、皆! ケンカしちゃ駄目なのです! 一位になった皆にはこの特製ケーキをプレゼントしちゃうのです!!」


そう言ってアーニャは【収納箱(アイテムボックス)】からあま~いホイップたっぷりのケーキを取り出し、切り分けてアーテル、ブラン、キュウちゃんの前に置いた。


「クル~♪」「キュイ~♪」「コ~ン♪」


瞬く間にご機嫌になる三人。現金なヤツラである。


「すいませんアーニャ様。・・・それにしてもアルクさんの【眷属】もそうでしたがアーニャ様の【眷属】も凄いんですね!!」


ブランはアーテルに匹敵するほどの実力を持つ【眷属】だからな。


仮にアーニャとミーシャが戦っても良い試合が出来たはずだ。


まあ、アーニャが戦いは苦手だから実現する機会があるかはわからんが、な。


この後も続々とゴールしてくる【眷属】を俺たちは迎え入れ、ご褒美をあげた。


なお、アーテルたちに続いてゴールしたのは・・・


「・・・ボエー」


・・・ビリだったはずの、あのでっかいカメだった。


ちょっと待て。


一体どういうことだ?


なにが起こったんだ?


どうやって他の連中を追い抜いた?


とてつもなく気になるのだが、残念ながら道中を説明できる奴がだれもいなかった(アーテルたちは人の言葉を喋れない)ので、真相は闇の中へと消えた。


・・・カメ、恐るべし。


(*・ω・)*_ _)ペコリ


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