ネバーランドの隣で
二人は違う道に行く
世界は面白くなく、つまらないものだった。人はそういう時、世界が白黒に見えるというがそれは違う。ただ灰色に染まるのだ。
まるで惰性のように毎日同じことを繰り返すだけの日常。それはあまりにも代わり映えがしなかった。
そんなときに、僕の日常に紛れ込んできたあなたは、僕を鮮やかな世界に連れ込んだ。
刺激的なものに変わった日常は、まるで凍ったかのように動かなかった僕の感情を溶かした。傷つかないように張り巡らした壁を壊し、気が付きたくなかった気持ちも持たせた。
もし、子供のままでいられるネバーランドを見つけることが出来たなら何かが変わったのだろうか……
あなたの笑顔を思い出して少し泣き出したくなる。ああ、あの時から変わりたくなかったのに…… でも気が付いた時にはもう遅かった……
目の前に倒れている返事をしないあなたの頬を撫でると、物言いたげに開いた口から目をそらして、倒れているあなたから背を向けた。
きっと戯れに呟いた僕の最後の言葉はあなたには伝わっていない、だから僕もあなたの言葉は聞こえなかった。
そうしないと、この涙に気付いてしまいそうになるから……
僕の気持ちはあなたには伝えなかった。きっと伝えてしまったらすべてが終わってしまうと分かっていたから……
こんなずるい僕をきっとあなたは、記憶にある朗らかな笑顔で笑いとばしてくれるだろう。それでも、傷つくことを恐れてあなたから離れる僕を許してほしい。
◆
全てを飲み込む意識の濁流に流される。意識がブラックアウトする前に君が呟いた言葉は私には届かなかった。ただ、夕日に溶けそうな程儚げで寂しそうに笑う君の事を抱きしめたかった。
世界はたった二人では変えることなどできない。そんな事は当たり前で、でもその事を気が付かないふりをして君を巻き込んだ。いつもつまらなそうにしている君の感情を動かしたくて、世界はこんなに輝いてるって気がついてほしくて……
だから私に毎日振り回されている君が、感情をあらわにすることがすごく嬉しかった。
その日から君の様子が変わっていくのにも気が付いていた。でも、私は何も言わなかった。
彼女に影響を与える代わりに、関係を変えることが無いようにしようと誓ったのに……
気がつけば私もどこか変わってしまっていたのだろう。
君は私をどう想っていたのだろうか。最後の最後まで意気地なしの私は聞くことは出来なかった。だから意識を失う前に気まぐれで囁いた言葉に気がつかないで欲しい。それが私の最後の願いだ。
◆
二人は子供を卒業し、ネバーランドから足を踏み出した。永遠の夢でも、夢ならばいつか覚めてしまう。そんなことは初めから分かっていた事だろう。
泡のように弾けた夢はほろ苦い大人の苦さを胸に残して消え去る。
ネバーランドは自らが創り、自ら卒業するのだ。
自分でも気がつかないうちに、たとえその事に気がつかなくても……
Never Ending Dream……
大丈夫です。生きてます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次の話はまた違う二人の話です。