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メア  作者: 黒崎侑羽
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1.道に迷い、ついでに人生にも迷いました?

1.道に迷い、ついでに人生にも迷いました?


「じゃあね、また明日」

「うん、じゃあね。転ばないようにね、怪我しないようにね、風邪引かないようにね、道に迷わないようにね」

「大丈夫だよ、理彩。心配し過ぎ」

心配性の親友に苦笑しながら応えて、手を振って別れる。

ここは図書館の前。

今日は親友の理彩と勉強会という名目でお喋りに興じていた。他の図書館利用者からしたらさぞ迷惑だっただろう。

私は今日、病院に行くことになっているので、普段は閉館時間ギリギリまで理彩と喋っていて、そのくせ一冊も借りずに帰るという図書館職員さん達に多大なる迷惑を掛ける行為を行っているところを先に帰っている。

因みに理彩は一応閉館ギリギリまで真面目に勉強するそうだ。


ピンピロリン♪


買った時のまま特に何もいじっていない携帯電話がメールの着信を報せる。

お母さんからだ。

“ごめん、間違えた、検査は来週だってm(__)m”

あら、どうしよう?

私、このあとはすっかり病院の積もりで特にやること無いんだけど。

今から図書館に戻るのは面倒だから却下。

あ、そうだ。久しぶりにこの辺りの知らない店を覗いてみよう、と普段とは違う道に入ったのがそもそもの間違いだったのだろう──。


   ◆ ◆ ◆


五分後──。

私は激しく後悔していた。

忘れてたけど、私、酷い方向音痴なんだった……!

学校の場所を二年掛けてやっと覚えて、まだ校内はほぼわからないから理彩に案内してもらっている。

クラスメイトの名前と顔は三日で覚えたし、記憶力が物を言う社会や英語、国語の漢字や諺などの成績はそこそこ良いから、記憶力が絶望的な訳ではないと思う。

なのに何故か道を覚えることはどうしても出来ない。どうやら私には方向センス(そんな言葉が実際にあるのかはどうかは知らないけれど)が皆無らしい。

とここまで言えばもうお分かりでしょうが、迷子です。

……ってマズイですよ!門限まであと二時間弱ですよ!二時間で帰れる気がしませんよ!門限破るとお母さん恐いですよ!しかも何故だか圏外ですよ!

………………失礼、取り乱しました。

でもそこまで遠くに来た積もりはないのに何故圏外になってるんだろう?

ここの電波が悪いのだろうと思い付いて、どこか近くで電波が入る所に行こうと歩きだしたその時、


パンパカパン♪


何か不思議な音がした。

そうまるで──ゲームをクリアした時に流れる音の様な……。


パン!パン!


続いて何かの破裂する様な音。

例えるならテレビとかでしか聞いたことが無いけど拳銃の発砲音の様な……。もっと身近な物だとそうだな、クラッカーの音の様な。

警戒しながら顔をあげると、


“ようこそ、メアへ!”


という文字が宙に浮いていて、その左右でクラッカーが盛大に紙吹雪を撒き散らしていた。

あ、クラッカーの音みたいって思ったのは正しかったんだ……じゃなくて!ナニコレ!?

文字とクラッカーはよく見ると半透明で、向こう側の景色が少し透けてる。

呆気に取られていると、それらのかなり下に真っ黒な長方形があり、私がそれに気付くのを待っていたかの様に──実際待っていたのかもしれない──白抜きの文字が浮かんできた。

“ようこそメアへ”

“あなたは日本国民の中から無作為に選ばれた一万人の中に入ったのです”

“おめでとうございます”

“このメアはあなたから見るといわゆる異世界、さらに言うとゲームの中の世界です”

“一つ言っておきますがあなたに拒否権はありません”

“しかし安心して下さい”

“ここにいる間は現実世界の時間は止まっています”

“現実世界に戻ったら歳をとっていたなんてことはありません”

“それではルール説明を行いたいと思いますが、色々と衝撃の事実を突き付けられて驚いているでしょう”

“よってここで休憩を入れます”

“心の準備が出来ましたら声に出してはいと言って下さい”


優しい……のだろうか。

でもここで呆けていても仕方がないのでさっさと先に進んでみる。

「はい」


“すごいですね”

“あなたがご招待した一万人の中で一番速かったです”

“それではルール説明を行います”

“何か質問がございましたら話の途中でもどうぞ遠慮なさらずに声に出して仰って下さい”

“お答え致しかねること以外の質問には誠意を持ってお答え致します”


「それではあなたはどなたですか?」


“メアの案内人のメアと申します”

“よろしくお願い致します”

“他に質問はございますか?”


「まぁ訊きたいことはたくさんありますがひとまずルール説明を続けて下さい。それを聞いてからにします」


“冷静ですね”

“そして聡い”

“それではルールを説明致します”

“あなたにはこのゲームの中で自由に過ごして頂きます”

“ただしこのゲームはいわゆるRPGなので敵が現れます”

“それらを頑張って倒して下さい”

“装備はコインによってショップで買えます”

“コインを貯めるにはクエストをクリアするか、アルバイト若しくは仕事をすることで貯まります”

“職業はおよそ二万の中から選べます”

“職業は決定後、初給が入るまでは変えられません”

“副業も可能です”

“ただし一部の職業には制限があります”

“職業を選ばずに他のプレイヤーを襲って生計を立てることも可能です”

“しかし無法地帯という訳ではないので犯罪行為をした場合は相応のペナルティーが発生します”

“こういうゲームの場合、ゲーム内で死亡した場合は現実世界でも死亡となるのがよくあるパターンですが”

“このゲームの場合、そんなことはありません”

“このゲーム内で死亡すると現実世界では運が良ければ生き残れるという状態になります”

“先程も申しあげましたが、このゲームの中にいる間は現実世界の時間は止まっています”

“死亡若しくはゲームクリアによってあなたは現実世界に戻れます”

“戻った瞬間に時間は動き出します”

“正確には少し違うのですが長くなるので割愛させていただきます”

“興味があれば後で訊いてください”

“そして、もし死亡により現実世界に戻った場合、あなたは戻った瞬間に偶然の事故で死にかけます”

“三十分以内に発見、適切な処置を受ければ助かるといった程度のものです”

“偶然の事故とは屋内であれば脳卒中や心筋梗塞、屋外でしたら通り魔や交通事故などです”

“運良く発見されたら十分生きられます”

“最後に全員のクリアを待つことはできません”

“死亡した方を除いた人数の九割がクリアしたら残りの一割の方も現実世界に戻れます”

“この場合特に死にかける危険はありません”

“もし誰も死亡しなかった場合、九千人がクリアしたら全員が現実世界に戻れます”

“もし九千人が死亡し九百人がクリアした場合、生き残った千人は現実世界に戻れます”

“下手に危険を冒さずこの一割に入り戻ることにして何もしないも良し”

“自力でクリアするも良し”

“頑張って下さい”

“それではご武運をお祈りしております”

“説明は以上です”

“わたくしは忙しいのでこれで失礼致します”

“何か質問がございましたらわたくしをお呼び下さい”

“呼び方はメアでもメアちゃんでもメア様でも何でも良いです”

“ご自由にお呼び下さい”

“ただし必ずメアを入れて下さい”

“それでは”


ザザ……という幽かなノイズの様な音と共に文字と黒い長方形とが一緒に消える。

……よくわからないけどやるしかないみたい。こちらに拒否権は無いそうだし。

私、ゲームあんまりやったこと無いんだけどな……。

まずメアが言ってた装備を見てみるか。ってどこから見んの?

「メア、いる?質問」


”はい、なんでしょう”


すると、先程の黒い長方形がまた現れた。

「さっき言ってた装備ってどこから見れるの?」


”すみません、言い忘れました”

”あちらに落ちているあの黒い機械、便宜上子機と呼んでいるものからご覧になれます”


「ありがとう」


”ご質問は以上ですか?”


「ええ、忙しいところごめんね」


”いいえ、お気になさらず”

”それでは”


早速その子機を拾う。

真っ黒で見た目はまるでスマホみたい。

ボタンとかは見当たらない。どうやって起動させんだろ。

画面と思われるとこをタッチ──スマホっぽいからタップって言った方が良いのかな──してみると、点いた。

すごくシンプルなデザインで画面が横に6つに別れている。そして上からマップ、お知らせ、ショップ、持ち物、装備、その他と書いてある。

装備をタップする。今度は3つに別れ、上から現在の装備、着替え、セット衣装となっている。

上2つはともかく、セット衣装?気になったけどいつ敵と遭遇するかわからず装備もよくわからないこの状況じゃ見ている余裕はない。

現在の装備をタップすると左右に別れている。左は私をデフォルメした人形。格好は今の私と一緒。右は説明というのだろうか、私の場合、ショートヘア(黒)、Tシャツ(白)、パーカ(オレンジ)、リュックサック(黒)、ショートパンツ(デニム)、ヘアゴム(紺)、ソックス(白)、スニーカー(黒)となっている。

え、これってなんか意外とほのぼのしたゲーム?闘ったりしないの?普通RPGって剣とか持ってないとダメなんじゃないの?若しくは今から購わないといけないの?

と思ったのも束の間、画面の上の方に非戦闘時と表示されていることに気が付いた。じゃあ戦闘時もあるの?

よく見ると、画面の右端に小さな矢印がある。タップすると、さっき非戦闘時と表示されていたところに戦闘時と表示されている。

さて、装備はどうなっているのかな。あまり高望みはしないけど、甲冑とかは着ていて欲しいな。でも重くて動き辛いかな。


装備:ショートヘア(黒)、鎧(段ボール)、剣(紙)、ヘアゴム(紺)、ソックス(白)、スニーカー(黒)


「………ひどっ!!!」

いや酷すぎるでしょ。紙の剣なんて絶対何も斬れないでしょ。

あ、下の方になんか書いてある。戦闘時に自動でこの装備になります、だって。

ちょっとそれはまずいよ。

装備の画面に戻り、着替えをタップすると、非戦闘時と戦闘時に別れている。

勿論戦闘時を選択。

先程と同じく、左は人形、右は上からヘアスタイル、トップス、ボトムス、コート、ソックス、シューズ、その他

となっている。

トップスをタップしてみると、鎧(段ボール)しかない。


…………………………ゑ?


酷くね?

「メア、メアいる?」


”はい、なんでしょう”


「戦闘時装備酷いんだけど」


”はい、それでわたくしにどうしろと”


「只の苦情よ」


”わかりました”

”1つ良いことを教えましょう”

”その他の中のプレゼントボックスに幾らかコインがプレゼントされています”

”それを使い、装備を購えばよろしいかと”


「ありがとう?」


”えぇそれでは”


早速プレゼントボックスからコインを受け取り──百万コインあった──、まず鉄の剣と鎧を購い──合計八千コインだった──、それに着替えた。


今更だけどここどこ?

マップを見てみたけど、なにせ極度の方向音痴。全くわからない。

ここが戦闘不可エリアで敵は現れないし、他のプレイヤーに攻撃をしたら、罰金──五十万コイン──があるらしいから、ひとまずは安心だけどずっとここにいる訳にもいくまい。

なんだか日が落ちかけてるし。

「メア」


”はい、なんでしょう”


「迷子。助けて」


”どこに案内したらよろしいでしょうか”


「わかんない。どこに行けば良い?」


”ひとまずあなたの家に案内致しましょう”

”家の周辺一キロメートルは他のプレイヤーの家はありません”

”ただし双方の合意のもとで引っ越すことは可能です”


   ◆ ◆ ◆


メアに細かく案内してもらって着いた私の家は、グレーの壁の可愛い二階建ての一軒家だった。


”方向音痴もここまでくれば才能ですね”


メアが何か言っているけど何もキコエナイ。キコエテナイモンネ。

「メア、家の中の地図、ある?」


”それ必要ですか”


気のせいか文字が少し呆れている様に見える

「私には必要なの」


”はいはい、プレゼントボックスに送っておきました”


「ありがとう」


”それでは”


メアが消えたあと、手早く晩御飯を用意されていた食材で作って食べて、ベッドに入った。

そういえば独りで晩御飯食べたのも、寝るのも初めてかも。

道に迷いながらも平和だった人生──と言える程生きて無いが──が迷走を始めました。



一話目です

思いついたままに書いているので今後どうなるかはわかりませんがひとまず続きます

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