ムネヒトvs.リリミカ(乳)※
運営様より警告を頂戴しました。本編の怪しい部分(※部分)をノクターン様へ移動いたします。
なるべく話の整合性を失わないように修正しますが、至らぬ点が多く出てくると存じます。
皆様にはご迷惑おかけしますが、何卒ご容赦をお願いいたします。
「なにそれ?」
「ん? ああ、確か魔法防御に特化した布だ。ちょうど良いところにあったし使わせて貰おうと思ってな」
俺はほとんど真っ黒な布を見つけ、それをリリミカに両手で広げてみせる。
この魔法防御に特化した布地はハンカチのように薄くしなやかで、物理的強度はそこまででも無いが魔術などの特殊攻撃には優秀な耐性を持つらしい。安価では無いが、生徒達の実戦用制服にも使われている一般的な素材だ。
「いや、それは知ってるけど……何に使うのよ?」
「縛るのに使うんだよ」
軽く端と端を結んで見せる。ちょっとしたタオル並の大きさなので楽に輪を作ることが出来た。
「しば……ええっ!?」
リリミカが目に見えて動揺し、俺から距離をとるように二三歩後ずさる。
「い、いきなり緊縛プレイはやり過ぎじゃない!? そんなことしなくても逃げないし……それとも身動き出来ない相手にするのが好きなの!?」
「……? あ! 違う違う! そういうつもりで使うんじゃないって!」
身を隠すように腕を交差する彼女に不審の目を向けるが、リリミカの言いたいことを理解し慌てて誤解を解こうとする。
諸手を天井から縛られ、バンザイのポーズを強制される彼女のおっぱいを揉みしだく自己を想像し頭蓋を振るうが、もちろんそんな用途ではない。後ろ手を括る事も、日本に伝わる特殊な縄結びをするわけでもない。
「縛るって言い方が悪かったな……これはな、こうするんだ」
彼女の不安を取り除くべく、俺は行動によって表現した。
「こうやって目隠しをするんだ」
俺は自分の瞼の上から黒衣を巻きつけ、リリミカがいるらしい方向へ向かって話しかけた。
「…………」
暗闇の向こうで沈黙が困惑を連れてくる。
「こうすればお前の胸を見なくて済む。肌を晒す機会は大事な時にとっておけ」
「……えー……」
今更だが、レスティアの時もこうしておけば良かったんじゃないかなと思う。
「でも……それ大丈夫なの?」
別の種類の困惑に囚われたリリミカに向かい、ああ。と俺は強く頷く。
「俺は目をつぶっていても、おっぱいの在り処が分かるからな」
嘘ではない。スキルのおかげで目をつぶっていても例のレーダーが作動しているからだ。暗闇の向こうに灯る赤色の二点、間違いなくリリミカの反応だ。彼女に言ったとおり、俺は心眼で乳首を見ているのだ。言葉にしても意味が分からないがそういうことだ。
「……実はムネっちって馬鹿?」
「かもな。でも俺みたいな馬鹿は?」
「ふっ、嫌いじゃないわ」
「ははは……」
「ふふふ……」
漫画にありそうなシチュエーションムーブをこなし、どちらからともなく咳払いをする。
こういうやりとりしていないと恥ずかしくて身が持たないのだ。
「じゃあ脱ぐから、あっち……向かなくてもいっか。少し待ってて」
なんでレスティアもリリミカも普通に脱ぐんだ? 俺が男だから解らないだけか? こっちがおかしいのか?
シュルシュルと布の擦れる音に居心地が悪くなってくる。ショッピングモールとかの女性服専用売場で、彼女の試着を一人待っている心境だ。恋人なんていたことないけど。
「……いいよ、お待たせ」
「お、おう……」
瞼と布の二重妨害をものともせずリリミカの方を正確に向く。距離は約90センチ、正面での相対だ。
おっぱいの位置はわかれど、彼女がどんな姿勢でいるかまでは分からない。立ったままこちらを向いているのは分かるが、腕を組んでいるのか後ろ手にしているのかは不明だ。
視覚を封じられたことにより敏感になった俺の嗅覚が、柑橘系の芳香を捕らえた。記憶にあるシトラスより更にフレッシュな、熟していない柚子のような香りだ。
そこまで考えて嗅覚神経をシャットアウトする。いやいや、何をクンクンしとるか。
「始めるぞ」
例によって厳かに声をかけ俺は歩み寄る。何度か足元を魔道具に取られながら、恐らくは彼女の前にたどり着いた。直前になって目隠しすれば良かったなと思う。
「とりあえず座ったら? 立ったままはキツイんじゃない?」
「……それもそうか。おっと」
「あ、待って。こっちにソファーがあったから持ってくる」
気を利かせてくれたリリミカが、ズリズリ音を立てながらソファーを引き摺ってきたらしい。俺も手伝おうかとしたが、目隠ししていたし既に彼女は下着姿になっているだろう。ここで外してしまえば意味が無い。
この段取りの悪さはそのままお互いの動揺と緊張ということだろう。
心の中で苦笑しつつ、リリミカの案内を受け腰を下ろした。彼女は俺の隣だ。右側に背もたれが来るように、体をリリミカに向けた。
「……時間がないから、体のマッサージはしなくていいよ」
本当にレスティアから話を聞いているようだ。彼女の時はまず全身のマッサージから始めたものだが、今回はそれを割愛しろという。正直、この姉妹の貞操観念が心配になってくる。
※
リリミカ、育乳中
※
「……すいませんでした」
平静さに返った俺がまずしたのは謝罪である。俺は学習能を母親の胎内に置いてきたらしい。
ちなみに目を隠したままである。謝罪なら目を見て行うべきだが、リリミカがまだ半裸の可能性もあるのでこのままなのだ。
「…………」
この沈黙の意味するところを俺は図りえない。
たっぷり即席麺が食べ頃になるほどの時間が経っただろうか。
「はー……いいわよ、もう。ううん……別に怒ってるワケじゃないし」
その声には確かに怒気は無い。その成分の大半は違うものだった。
「呆れてるの。ムネっちじゃなくて、私自身に……あーっ! 恥かしい! なんであんなになっちゃうかな私ー……」
恥かしげに悶えているらしい彼女を安堵半分申し訳なさ半分で、落ち着くのを待つ。
「言っとくけどさ! もちろん今日のことは内緒だからね! 誰に話すのも無し! お姉ちゃん……は、まぁ……私の胸が本当に大きくなったというなら秒で気付くだろうし、黙ってても無駄か」
お前らおっぱい見すぎだろ。クノリ姉妹何者だよ。
「そりゃ当然黙っとくさ。言われるまでも無い」
俺の評判悪化もさることながら、リリミカに悪評が立ってしまうのは何としても避けたい。連鎖的にレスティア、ミルシェ、バンズさんにまで迷惑が及んでしまえば、俺は誰に侘びればいいんだ。
「うん。じゃあこの話は終わり! で、さ……」
「あ?」
「――――も一回、しない?」
それは望外の提案だった。
「何事もちょっと練習するだけで直ぐに効果がでるなんて思わないし、それに私がお姉ちゃんに追いついて追い越す為には同じ回数じゃ間に合わないと思うのよっ! それに次はもっと我慢できるし! 練習よ練習! だから、ほら、ええっと……」
早口で捲くし立てるリリミカを、俺はどこか遠い耳で聞いていた。降って沸いた幸運に自己の統一が出来ない。え? マジ? またおっぱい触っていいの?
「……駄目?」
「それを俺に聞くか? 分かりきっているだろうに」
断る理由など有史以前にも以来にも存在しない。リリミカからのオーダーだ。全身全霊を以ってお相手仕らん。
「手加減はしないぞ? もちろん覚悟はしているんだろうな?」
「ふん、何イキってるのよ。内心、ドキドキしてるくせに」
「その憎まれ口を別の言葉で使わせてやる」
「望むところよ」
「ははは……」
「ふふふ……」
軽口を叩きあい、俺は指を鳴らし喉を鳴らし、リリミカは呼吸を整えたらしい。
やがてどちらともなく近づき、以前として暗闇のまま俺は手を伸ばす。
ふと後頭部に触れるものがある。顔の両横にほのかに体温を感じることから、おそらくリリミカの手だ。ただし頭ではなく、後頭部にある目隠しの端をまさぐっているように感じる。
「ッ……おい――――」
俺の呼びかけに、彼女は何も言わない。無言のまま、きつく結んだ布に指を這わせていた。
リリミカの意図するところを洞察できても、それを拒み得ない。
一秒だろうか一分だろうか。無言のまま時間が過ぎて、そして――
「――何をしているんですかぁ?」
「――――――――――――」
「――――――――――――」
沈黙が引き裂かれた。
俺でもリリミカでも無い第三者の声が聞こえる。少女の声、しかも毎日聞いている良く知っている声だ。普段、太陽の光と共にやって来る春風のような暖かい声は、今日は大寒の北風を思わせる。
大丈夫? 俺の心臓動いてる?
空気そのものが万年雪になったかのように準備室に沈殿した。喉も肺も低温火傷しそうだ。
「あ……えっと……そ、その……」
油の枯渇したブリキ人形のように声のした方へ首を傾ける。
102センチのトリプルスコア、燦然と輝くKの称号が飛び込んでくる。
「もう一度訊きますねー……何をしているんですかぁ?」
ミルシェが来ちゃった。
次回、修羅場です




