ムネヒトの仕事②(新型ブラジャー作成編)
「いいか?」
「……うん」
ベッドに座った亜麻色の髪をした少女――リリミカは小さく頷いた。
「じゃあ、見せてくれ」
リリミカはもう一度頷く。そして、たどたどしい指先でブラウスのボタンを外し始めた。
ビーチク・ビギンズの一室、屋根裏にある俺の部屋でリリミカと二人きりというシチュエーションは、否応なしに色気のある雰囲気を感じさせる。
事実、どうにもドギマギしてしまう。
現代で言えばリリミカはいわゆるJKであり、しかもとびっきりの美少女。
普段は快活な美少年にも見えるが、恥ずかしそうに衣服を脱いでいく姿を見ると、まごうことなき女性なんだなと分からせられてしまう。
しかしこれは俺と彼女の仕事であり、やましいことでは無い。無いったら無い。無いのだから、俺はこんなにも真面目な顔を保てる。
「……ムネっち、エッチな目で見すぎ。脱ぎ辛いじゃんか……」
保ててなかったわ。俺のツラの皮薄すぎ問題。豪華なタイ焼きかよ。
咳払いし、何事もないように俺はリリミカを促す。亜麻色の髪が小さく前後に揺れ、少女は脱衣を再開した。
「ぉぉ――……」
ハラリと肩からシャツが滑り落ち、内側からリリミカの肌が現れた。下着のみを纏う乙女の柔肌は何処か神々しい。
艶めく白い肌が窓から差し込む日差しが受けて、まるで濡れているかのようだ。
どちらかと言えば華奢で小柄なリリミカであるが、貧弱とか貧相では決してない。
若く健康的な張りと適度な脂肪、彼女の快活さを示すメリハリが見てとれる。
そして案の定、おっぱいであります。
初めて出会ったときより明らかに増量しているバストは、陽光で影を設けるほどに隆起している。スポーツブラジャーという生地の薄さのせいだろう、乳房の形がほとんどくっきりと見えている。
未だCカップに至らないBの乳肉ではあるが、見ているだけで抱き締めたい庇護欲に囚われる。
正直、とても可愛いおっぱいだ。見ているだけで、心の中にじんわりと暖かい物が広がっていく。
「ぐす……ごめん、涙出てきたから、ちょっと拭いていいか?」
「……まさか、このブラで拭く気じゃないでしょうね?」
いかんいかん。本来の目的を忘れて乳鑑賞にふけるところだった。
ベッドに腰かける彼女に対し、ちょうど顔の前にリリミカのおっぱいが来るように膝立ちになる。
なるべく表情を崩さないようにして、俺は彼女のおっぱい――正確にはブラジャーを観察した。
中心に宝石が埋め込まれてる以外は質素なスポブラだが、これは『ネクスト・ランジェリー』という俺とリリミカで共同開発している新しい下着――そのプロトタイプだ。
かつて人気の無い喫茶店でリリミカと結んだ約束、ブラジャーを一緒に作ろうという約束を、俺達はもちろん忘れていない。
ちなみにこのプロトタイプは、リリミカが設計し俺が細かい調整などを行ったものだ。
ある意味、本人以上にリリミカのおっぱいと触れ合っている俺だから気付ける箇所もあり、ミリ単位の試行錯誤の末にこの試作型は生まれた。
「……うん、サイズはぴったりみたいだな。余計な隙間も、過剰な締め付けも無い」
俺たちの目指すブラジャーは、通常の下着とは一線を画くものだという自負がある。
まず第一前提として、バストのカップに合わせてサイズを自動で更新させる。持ち主に合わせて変化するのだ。
異世界作品的にも主人公に合わせて成長する剣とかメジャーだが、それに近い。
まずはなんと言っても、付け心地が大事だ。
「ふふふっ、とーぜん! まずソコから躓いちゃ話にならないもんね! ムネっちのお陰で完璧なフィット感よ! ノーブラみたい!」
頬を染めながらも、嬉しそうにリリミカは肩を回してたり腕を振ったりしている。
「そりゃ何より。毎日お前のおっぱい触って、何百回も思い出しながら製作した甲斐があったな」
「わっ! やらしー、私のおっぱいを悶々と思い出しながら独りでコソコソブラジャー作ってたんだー。そーか、そーか」
「おい、言い方に悪意があるぞ」
イタズラっぽく笑っていたリリミカは、唇を吊り上げ八重歯を見せてくる。更に両手で自分のおっぱいを下から持ち上げ、挑発的なポーズも作った。
「それで? 私のおっぱい、何回くらいオカズにしちゃったワケ? なーんて――……」
「えっっっ!!??」
「えっっっ!!??」
「…………」
「…………」
「おほん! と、ともかく、ネクスト・ランジェリーの話をしようぜ!」
「そ!? そーよね! 時間は有限だもね!」
まったく、若い男に訊くような事じゃないぞ。ボロが出なくて良かった……。でも、今のセクシーポーズはしっかり覚えてていよう。
ともかく、リリミカにぴったりなブラジャーを作成できてほっとしている。
だが、俺とリリミカが目指すのは更に先。女の子に次のおっぱいを与えるブラジャーだ。
おっぱいの形状を維持したりするのは勿論、矯正したり、癒したり、育てたりする超多機能の下着を俺達は作りたい。
一度伸び、切れてしまったクーパー靭帯は二度と再生しない。また肌の衰えにより、減少してしまったコラーゲンや水分を再充填するのは非常に困難。おっぱいとは、不可逆に近い宝物なのだ。
しかし俺は。俺のスキルは不可逆に抗える。
維持を超え、アンチエイジングを超え、時間すら取り戻す神の御業。奇跡の力だ。
事実このB地区に住まう乙女達のおっぱいは、あまりに神々しい。日に日にその輝きを増し、今では同性からも羨望の視線を集めているという。
俺の功績と言えば確かにそうだろう。けど俺は、おっぱい本来の魅力を引き出したに過ぎない。
世のおっぱいはもっと美しいはずだ。
生まれたから一度も不摂生をしなければ、または重力や紫外線などに襲われなければ、誰でも自分史上最高のおっぱいを保てる。
もちろん、そんな事は不可能だ。
生きている限り、ダメージやストレスからは逃れられない。
だからこそ俺は、このネクスト・ランジェリーを何としても作り上げたい。
直接おっぱい達に触れて『乳治癒』などを施していくのも現実味が無いし、俺だっていつかは寿命を迎えるだろう。
俺が世から消えたあとも、女の子のおっぱいを護り続けるシステムを創り上げてみせる。
乳首の神が実在した数十年のみを、おっぱいの黄金時代などと呼ばせてなるものか。
そう息巻いてみるものの、課題は山積みだ。
「起動してから何日たった?」
「……10日」
「だいぶ延びてきたな。けど――」
「うん、まだ10日。たぶん、今日で魔石燃料は空になるわね」
右下乳付近に数字が小さく出ており、ソコには11%と書かれていた。残り約一割。俺とリリミカの目標にはほど遠い。
「よし、次のチェック始めるぞ?」
青い瞳に羞恥の色が浮かぶ。
「ね、ねぇ、やっぱり一度着替えちゃダメ? 私は毎日お風呂入ってたけど、10日も付けっぱなしだったブラってのは、なんか……」
恥ずかしそうに俯くリリミカにぐっと来たが、俺は心を鬼にして首を横に振った。神様なのに鬼とはこれ如何に。
「元々、そういうコンセプトから追加した機能だ。誰でも清潔化の魔法が使えるワケじゃないし、本格的なダンジョンアタックなら10日だって珍しくないんだろ?」
「だけどぉ……」
「むしろ毎日ちゃんと風呂に入ってたんだから、恵まれているというモンだ。さ、早く早く」
「ぅ、ううぅ~」
怒るような、また拗ねるようなリリミカだったが、結局は諦めたらしく胸を俺に向かって反らせた。
突き出されたおっぱいに、俺は鼻を近づけた。
「ひゃっ……!」
「す、スマン! どうした!?」
「う、ううん! 前髪がちょっと擽ったかっただけだから!」
俺は慌てて前髪を後ろに撫で上げ、半オールバックにする。
二三度咳払いをし、もう一度リリミカのおっぱいに顔を近づけた。
乳と乳の間、谷間を埋める布の橋付近に鼻を寄せて、スンスンと匂いを嗅いでみる。甘酸っぱい、柚子のような香りが嗅覚を優しく刺激する。リリミカの匂いだ。
ネクスト・ランジェリーからも同様に柑橘系の匂いが漂ってくるが、悪臭などでは決してない。布の表面にも、汚れなど一切なかった。
組み込まれた清潔化の魔術式が今でもちゃんと発動している証拠だ。新品に近い品質を保てている。
それはそうと……。
「フッ、ぅ、ぅぅ……!」
上から恥ずかしそうな声が降ってきた。俺も恥ずかしいので我慢して貰いたい。
すんすん……。
「ね、ねえ、どう?」
すんすんすんすん……。
「ちょ、っとぉ……! いつまで、嗅いでんのよ……!」
すんすんすんすんすんすんすんすんすんすんふがー!
「いい加減にしろー!」
「ぐはっ!?」
拳骨が降ってきた。目から出た火花がブラに引火しないか心配になるほどの威力だった。
「バカ! スケベ! 調査だって言ってるでしょ!? これじゃただのマニアックなプレイじゃないの! 早く報告しなさいよ!」
「あたた……わ、悪い……つい夢中になって……ああ、大丈夫だ。普通に凄く良い匂いがしたぞ」
「そ、そっか……良か――じゃなくて! 匂いがしたら駄目じゃん!」
「術式は常に発動状態じゃないんだろ? 確か三時間に一回だし、その間に付いたおっぱい臭は仕方な――」
「おっぱい臭とかいうなー!」
「ごっふ!?」
拳骨のおかわりが来た。火事を起こす気か。
「うぅぅぅ、完成品は一時間に一回の発動……いや、常時発動型にしてやるぅ……」
「確かにそれが理想だけど、術式の隙間は有るのか? 本命の術式だってまだ組めてないのに」
リリミカは苦い顔をする。言われるまでもなく、彼女も理解している事だ。
1つの武器――この場合はブラジャー――に可能な魔付加量はだいたい決まっていた。最初に複雑で強力な術式を付加してしまえば、他の術式の入り込むスペースが無くなってしまう。
既にこの下着には、サイズ自動調整と清潔化の計二つの術式が組まれている。これ以上追加するとなると、最悪ブラジャー自体が魔力に耐えられなくて壊れてしまうかもしれない。
かといって強力な……しかも多重術式付加に耐える超高級な素材を使うのではコストが掛かりすぎる。
また、コストもだが、それを為す魔術士も不足していたのだ。
ブラが壊れないように、際どいバランスを保ちながら術式を組んでいく。難解なジグソーパズルを埋めていくような精密作業なのだ。求められる能力水準は、どうしたって高くなってしまう。
「腕の良い魔術士って中々見つからなくてさ……いま雇っている従業員達って、どっちかというとお洒落のコーディネートとかのが得意だから……」
「販売員と技術者の違いだな……腕の良いってんなら、宮廷魔術士とか引っ張ってこれないか?」
「王宮に勤める栄誉を捨ててまでブラジャー作りに参加してくれると思う?」
「もちろん」
「……知ってると思うけど、世の中にハイヤ・ムネヒトは一人しかいないのよ?」
「なに? 急に哲学の話?」
また、問題は技術不足だけではない。ブラジャーの寿命が最大のネックだ。
どんな高性能のパソコンでもバッテリーが空っぽならただの置物になってしまうように、機能停止したブラジャーはただのブラジャーだ。ただのブラジャーも好きだけど。
そこで外部バッテリー兼魔術付加の受け皿として『魔石』をネクスト・ランジェリーに搭載したのだ。『魔剣』ならぬ、『魔ブラジャー』である。
それでも実用にはほど遠い。
試行錯誤を重ねてなんとか10日は持つようにはなったが、たった10日で『魔石』の交換などしていては、やはりコストが掛かってしまう。
サイズ調整機能だけならともかく、他の機能――先の清潔化や本命の『乳治癒』などを組み込むとなると、どうしたってバッテリーが足らなかった。
安易に搭載する『魔石』を増やすのも無し。重くて石でゴツゴツしたブラジャーとか論外だ。
でも、軽くて小さくて容量のデカイ高級『魔石』なんてコストが略。
最初は高級品として売り出すのも手だろうが、いずれはスマホ級に普及させたい。
軽くて長持ちして機能も充実して、今まで世界に存在しなかった全く新しい発明品。そんなのが簡単に出来るワケも無かったのだ。
(世のエンジニアが頭を悩ませているわけだな……)
社会を支えている技術者達に、思わず敬意と畏怖を抱いてしまう。貴方達マジすげーよ。
「あーあ。どっかに良い魔術士とか『魔石』とか落ちてないかなー……ん?
――待てよ? そういえば……
そんなコトあるわけないじゃんと笑うリリミカを尻目に、ベッドの枕元に置いてある御守りに手を伸ばした。
神社にありそうな小豆色の御守りは、もちろん俺のお手製だ。表には漢字で『御乳守』と書いてある。日本語だし、誰も読めないから良いモンね。
そのまま紐を解き、中身を掌に取り出す。
「なにソレ? ガラス玉?」
「いや、ちょっとな……」
リリミカにも見せるように、指で摘んで顔の前にかざした。一見すると何の変哲も無い無色透明のビー玉だが、これは俺の宝だ。
去る『狩猟祭』の打ち上げ後、ミルシェと二人きりで過ごした夜……初めて味わった生おっぱい。
あの時を思い出すと今でも目頭が熱くなる。旗日にすべき一生の宝日だ。
ミルシェのおっぱいに一晩中溺れていたのだが、朝になってふと気がついたとき、口の中にコレが入っていたのだ。
まさかおっぱいから出てくるワケも無いが、俺だってこんなビー玉を口から出したことはない。
恐らくは乳首の神の能力で生まれたものなんだろうけど、特に使い道が無いので御守り代わりにしていた。
「ホントに拾ったの? 天然物にしてはヤケに丸いけど……」
「『魔石』かは分からん。只のガラス玉って可能性も考えられるような考えられないような……」
「ハッキリしないわねー。ま、良いわ。それを調べてブラに付けろっていうのね。貸して」
「おっと、コレは駄目だ」
手を伸ばしたリリミカから庇うように、ビー玉を握りしめた。コレは初おっぱいの記念品なんだ。いくらブラジャーのためとはいえ、簡単には使えない。
「はぁ? じゃあ何で見せたのよ」
「悪い悪い。でも、コッチなら良いぞ」
ミルシェ玉(仮)を御守り袋に入れ直してから、今度は巾着袋を取り出す。例によって紐をほどき、中身をベッドの上に転がしていく。
ザーーーーッ。
中から溢れたのは大小色とりどりのビー玉。無色、金色、オレンジ色、薄紺色、そして白色といった五色の物が大体50個くらいある。
小さいものは一円玉より小さいが、大きいものは小粒蜜柑くらいある。ちなみに一番多い色は無色透明で、次いで白色だ。
「えぇ? めっちゃあるじゃん!」
リリミカがやや驚いたように声を上げた。
余談だが、この巾着袋は収納袋の機能も持っており、中身は外見以上の容量を誇っている。高級な収納袋では無いが、ちょっとした小物入れにはもってこいだった。
「こっち使ってくれよ。沢山あるし」
「マジでどうしたのこれ……ホントに『魔石』なら結構な額になるけど、こんなに研磨された物が発掘品なんて思えない……もしかして、ダンジョンに潜って未発見の宝箱でも開けた?」
当然、不審がるリリミカだが俺は首を振った。
「俺はダンジョンに入ったことすら無いぞ。これは――……えっと……」
――おっぱい吸ったら何故か口の中にありました。
いやコレ言ったらダメだろ。正気を疑われてしまうわ。
つまりこのビー玉の山は、俺の乳行為の足跡だ。簡単に言えば、ケアと言いながらおっぱいメッチャしゃぶってます。
一度壊れた規則は最早意味無しと言わんばかりに、毎日おっぱい吸ってた。
何度か断ろうとしたが、皆嬉しそうにおっぱい差し出してくるし(特にハナ)、結局はズルズルと励むことになっていた。俺がおっぱいに勝てるわけないじゃん。
メンツはミルシェ、アメリア、コレット、ジェシナ、ハナの五人(四人+一頭?)だ。
それぞれのおっぱいと俺との間に生まれるビー玉が、それぞれの色で分かれている。無色はミルシェ、白色はハナだ。金色、オレンジ色、薄紺色が続く。
ビー玉の大きさは、おっぱいに触れ合っていた時間と比例するのだろう。ちなみに一番大きい物は白色だ。
ともかく皆のおっぱいチュッチュッした後、結構な確率で口の中に出来ていたのだ。どのみち、リリミカに言うわけにもいかないが。
念のため言い訳しておくが、ちゃんと洗ってから巾着袋に保管している。
「……企業秘密だ」
「私とアンタ、一応おんなじ企業でしょ?」
そうだった。
「はぁ……ま、悪いことしてるワケじゃないみたいだから良いケド。ムネっちってに秘密が多いのは、今に始まったコトじゃないし。開発部には適当に誤魔化しとくから」
「わ、悪い……」
「でも! コトと場合によってはちゃんと話して貰うからね! 私にだって責任があるんだから!」
「分かってる」
リリミカの言葉に俺は頷く。
仮に乳ビー玉を下着に用いるとしても、出所が不明なままなのは良くないだろう。下手したら盗難を疑われてしまう。
でも、女の子の乳首から出ましたよというのもどうだ?
金の卵を産むガチョウならぬ『魔石』を産むおっぱい。クソ寓話じゃん。
言い訳、考えとかないとなぁ……。
「それよりさ!」
「ん? んんー……」
リリミカは楽しそうに身を乗り出し顔を寄せてくる。ちょうど見下げる形になった半裸おっぱいが非常に良い感じだ。
「ムネっち来週叙勲されるんでしょ? やったじゃん!」
言われて思い出す。来週、俺たち第二騎士団は城に招かれる事になっている。先日の『ポミケ動乱』を解決に導いた功績を称えられるのだ。
それは別に良いのだが、叙勲される代表者は何故か俺と言うことになっていた。
俺だけの功績なワケないし、辞退しようとしたのだが、メリーベルも双子もジョエルさんもそれを受け入れなかった。どういう訳か、一番の立役者として皆は俺の名を上げたらしい。
レスティアやアザンさんといった第二騎士団の常識派もしきりに推してきたので、断るに断れなかった。
照れ臭い以上に何となく申し訳ない。だって俺がしたことと言ったら、おっぱいギルドで冒険嬢の乳首をおつまみしたくらいだ。
つーか、皆が言う秘密の特別任務ってなんだ。確かに妖怪乳首つまみは秘密にしたいけどさ。
「叙勲ってことは……勲章とか貰えるのかな?」
若干いたたまれないのはともかく、勲章はちょっと楽しみだった。
「あたりまえでしょ? ふふ、ムネっちもいっぱしの騎士になってきたわね! 勲章って、やっぱり嬉しい?」
「ああ、実は結構楽しみだ。どのくらいの大きさで、どんな形なんだろうな……やっぱり一つだけかな?」
「欲張りね。いきなり二つ貰うなんて、そうそう有るわけないでしょ」
「だよなぁ……ま、右か左かを選ぶのも一興か」
「はぁ?」
俺は名誉とか報奨金とかではなく、勲章そのものが楽しみだった。
つまりアレだ。例えばミルシェかハナ辺りに裸になって貰うとするだろ? そうするとおっぱい丸出しなワケだ。けしからん。
そこで登場するのが俺の勲章ちゃん(仮)よ。こう、貝殻ビキニ的に乳首を隠す役割を果たせないかと密かに期待しているのだ。勲章ニプレスといってもいい。
剥き出しの乳房。その秘密の特区を隠す勲章。想像しただけで頬が緩む。
(勲章サイズが気になるな……余り小さいと、乳輪がはみ出てしまう……コレットの場合は余程じゃないと無理だ……)
勿論、それはそれで見てみたい。例えばどっちかの乳首を勲章で隠し、反対側を手ブラの覆ったミルシェを想像して――。
・
『む、ムネヒトさん! これっ、この勲章……小さ過ぎます! しかも1つだけじゃ……もっと大きいの貰って下さいよぉ……!』
『分かった。俺もっと出世して、ミルシェのおっぱいにピッタリな勲章貰えるように頑張るよ!』
『そ、そんな動機はぁ……』
『いやむしろ王家には任せておけん! 勲章が欲しいなら俺が今すぐ用意してやるッ! 行くぜ叙勲だオラァン!』
『ひゃっ!? あ、ダメ、ダメぇぇ! 全部見えちゃう! えっ、謁見しちゃううぅぅぅぅ』
・
……あるいはハナなら? ハナならむしろ、堂々と超乳を見せてくるに違いない。
それこそ年齢制限のあるソシャゲで、時々現れる過激水着のように――……。
・
『どうですかムネヒト様? ハナに……似合っておりますか?』
『勿論だ。お前の姿を見るだけで、叙勲されて良かったと思うぞ』
『それは、よろしゅう御座いました――……あッ!』
『どうした?』
『く、勲章って冷たいのですね……お乳首がヒンヤリして、アイスミルクになりそうです……』
『冷えた牛乳も好きだが、女の子が身体を冷やしちゃいかん! 俺が温めてやる! 今!』
『あぁっ む、ムネヒトさまぁ! ホットミルクになっちゃうぅぅぅぅ』
・
「ふひひひひ……」
「え、なに、怖……」
俺の未来は薔薇色だぜ。
「気を付けてよね? 叙勲式には王族が……もしかしたら、王女殿下がいらっしゃるかもなんだし」
「ほう、王女……」
異世界物において、王女という存在は無視して通れない。運が良ければ会えるかなとか思っていたが、遂にやってきたか。
しかし俺は身の程を知っている。
物語の主人公みたく、王女と仲良しこよしになるなど滅多にある話ではない。
労いの御言葉などを貰えるだけで幸運なのだから、親密になるどころか名前を覚えて貰えるとも思えなかった。
「万が一、王女殿下のおっぱいでもガン見してるのがバレたら大変よ? 史上稀に見るマヌケな理由で処刑されちゃうんだから」
「それはマジで気を付けないとな!」
俺が女性のおっぱいを見ずに行動を終える……難易度の高いミッションになりそうだぜ……!
「王女殿下が叙勲式に出てくる可能性自体は低いけど、一応は頭に入れといて。今みたいに……私のを見てるような目をしてたら、すぐにバレちゃうんだから……」
恥ずかしそうに肩を抱き、呟くように注意してきた。
その仕草が可愛すぎて思わず抱き締めたくなってしまったが、鉄の意志で我慢する。リリミカではなく辛さを抱くのだ。故に辛抱だ。
「それとも――……」
リリミカはネクスト・ランジェリーをちょっとだけずり上げ、滑らかな南半球を露にした。ゴムの跡も残っていないアンダーバストと、そのゴムでくにゃりと浅く潰れるおっぱい。
ちょっと伸縮性素材の下辺りに、リリミカの乳首が隠されている。ピンク色が見えそうで見えない脱ぎ方に、俺は思わず生唾を飲んでいた。
「王女様で失敗しないように……私と、私ので、今のうちに沢山、失敗しちゃう?」
ブラの淵に指をかけたまま、リリミカは上目遣いで囁いてきた。目は潤み、頬は赤い。
辛さではなく、乳を抱く。乳房で乳抱だぜ。
ネクスト・ランジェリーには悪いが、今すぐに剥ぎ取ってリリミカのおっぱいに有らん限りの愛情をぶつけたかった。
「……バカ言ってないで、そろそろ登校の準備しろ。遅刻するぞ」
それでも俺は今更な自戒に身を引き締める。他の住人のおっぱいを散々に愉しんでおきながら、だ。
「……バカはどっちよ、ヘタレ」
リリミカの拗ねたような呟きに、返す言葉も無かった。




