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異世界でB地区の神様になったけど、誰にも言えない  作者: フカヒレさん
第四章 金と恩とおっぱいと
153/214

指名依頼

 

「よし、これで最後だな。まだ何処か気になるか?」


 うつ伏せの冒険嬢は俺に疑いの目を向けていたが、施術用のベッドから起き上がると目を丸くする。腕や肩をまわし鏡を見て、口までアングリ開けていた。

 それを潮に俺は彼女の側を離れた。深くツっこまれると答えようが無いので、なるべく早く立ち去ろう。

 おみ足ギルド『ポワトリア・マーメイド』に赴き、在籍する冒険嬢の身体のケアや治療するのも、今の一人で全員が終わった。

 流石にくたびれた。

 人に対しここまで連続して『乳治癒(ペインバスター)』を使うのは初めて……あれ? 何となく初めてじゃない気もするけど、何でだ?


「よーやく終わったの! おつかれ、ちゃんオリ! 終わったならとっとと帰るし!」


「急がなくたって、どうせ野郎共は動けやしないって……なんか機嫌悪い?」


 付き添いのシンシアは俺を労ってくれるが、その顔は語気に比例して何とも険しい。勝手についてきたクセに、勝手に不機嫌になっている。

 あの場に倒れた男連中はおっぱいギルドの皆に任せてある。蛇足だが、あのアンバランス乳輪男はどうなったかというと……。


 ・


「くそったれが、覚えてろよテメェ! 殺す、絶対にぶち殺してやる!!」


「いい加減うるさいな! その乳輪は生まれつきなんだろ!? だったら俺のせいじゃないって!」


「いやだから違――」


「やかましい! ええい、じゃあお前で実験してやる! オラァン!」


「ひょぎゅきゅっ!? な、なにぃ……お、俺の乳輪が……!? 先祖代々、直系の男児のみに伝わる大直径乳輪が、左右対称に……!?」


「(マジで出来ちゃった……先祖代々とか言ってるし、もしかして不味かった……?)」


「あ、ありが、と……ぉ……!」


 ガクっ


 ・


 まあ、アイツはどうでも良い。今は目の前のパリピギャルのご機嫌取りをせねば。


「べっつにー? 負けた相手のギルドにわざわざやって来て、冒険嬢達を治療して回ったからって怒ったりはしねーし? ちゃんオリのやる事が甘すぎて胸焼けしてるからって別に気にしてなんかいないし?」


 完全に怒ってる。とはいえ、シンシアの不機嫌も尤もだ。

 乱暴者を引き連れて襲撃してきた商売敵に対し、制裁を与えるどころか彼女達の身体を治療したりしているのだから、シンシアの反応こそが正常なのだろう。


「……――」


 ふと感じた人の気配に振り返ると、最初に俺の『乳治癒』を受けたクローディヌが立っていた。

 シャワーを浴びてきたのだろう、豪奢なドレスも厚い化粧も無くいわゆるスッピンで現れた。

 風呂上がりの為でもあろうが、先ほどよりもだいぶ血色が良い。


「ん、居たのか。俺達はもう戻るけど、もう他のギルドに押しかけるような真似はするなよ」


「……あ、ああ……」


 何か言いたそうな顔をしているが、生返事を寄越しただけで一言も喋らなかった。口だけが不器用に開閉し、声になっていない。

 そちらから話すことない以上、足を止めておく理由もない。シンシアに促され彼女へ背を向けた。


「――ちょ、っと、待ちな!」


 言葉が浴びせられたのはその時だ。振り返ると、彼女は気まずそうに顔を歪めていた。


「どういうつもりだい……?」


「ああ……」


 クローディヌの質問の意味を察した。当然、慈善事業でも憐れみから来る施しでもなく、俺は俺の考えを元に行動したに過ぎない。


 この『ポワトリア・マーメイド』から客足が遠のいている責任が全て『クレセント・アルテミス』にあるというのは流石に言いがかりだが、原因の一端くらいはある。


 ならばいずれ、別の裏ギルドが同じ理由から『クレセント・アルテミス』を敵視する恐れがある。おみ足ギルドだけを叩き潰しても、怨恨の連鎖は潰えまい。


 だったら逆に、彼女らの魅力の取り戻してやろうと思ったのだ。

 女性の魅力において、不健康やストレスは大きなマイナス要因だ。それを取り除けば、彼女らの魅力を再確認して依頼主達が増えるんじゃないかと踏んだのだ。


 来てみると、案の定と言うかやはりと言うか、健康に不調を訴えている女性は多かった。

 厚化粧の剥がれたクローディヌの素顔を見て予想していた事だが、何とも痛ましい。


 それから俺はクローディヌに命令してもらい、一人一人ベッドでうつ伏せになってもらった。

 最初は敵意に満ちた目で見られていたが、最初に施術したクローディヌの様子に徐々に警戒を解いてくれた。


 触るのは上半身の肩とか背中のみ。おっぱいは封印だ。まあ、背中の下におっぱいが有ると思うとこれはこれでフヒヒ。


「少なくとも俺は『クレセント・アルテミス』以外の同業ギルドを全て排斥しようだなんて思っちゃいないし、王都中の野郎共を独占しようとも考えちゃいない。他の皆はどう考えているかは知らないけど……」


 背にあるシンシアの視線を思いながら話を続けた。

 俺はおっぱい博愛主義者だが、おっぱいより脚やお尻が好きな男だって居る。趣味趣向は人それぞれだ。

 自分の意見を持ちつつ他人の意見も尊重するという、主張と多様性のバランスをとっていきたい。


 簡単に言うなら『おっぱいも良いけど、おみ足も良いよね』と言うヤツ。


 一時的には『クレセント・アルテミス』の客足も減少するだろうけど、裏ギルド全体のレベル向上にも繋がるし、誰彼に恨みを持たれることも少なくなるだろうから、長期的には利点の方が多いはず。

 同性間の嫉妬ほど恐ろしいものも、そうそう無いからだ。


 あとはまあ、俺の人生命題だな。あらゆるおっぱいを少しでも良い方に導きたい。おっぱいは男も女も幸せにしてくれる力を持っている。

 だから逆に、近所のおっぱいが原因で腹を空かせる者が増えてしまうのは見過ごせない。


「(おっぱいのせいで)傷つく女を少しでも減らしたかっただけだ」


「アンタ――……」


「フンッ!」


「ふぎゃ!?」


 いつの間に彼女の背後に回ったのか、突然シンシアがクローディヌの後頭部をフワフワのスリッパ(おみ足ギルドと言うだけあって、常備してあるスリッパはかなりの高級品だ)で叩いた。


「いきなりなにすんだ小娘!? 舌を噛んじまうところだったじゃないか!」


「やかましいしこの厚化粧のケバいババァ! 略してアゲババァ! 今ちゃんオリに色目使ったっしょ!? あーし……らのオトコをそんな風に見るの止めてくれる!?」


「――はっ! オンナがオトコに色目使って何が悪いってのさ! それとも、この男のナニに名前でも書いてるとでも言うのかい!?」


「それはこれから書いてやるつもりだったし!」


「書くなよ」


 どうどうとシンシアを宥めながら、今度こそクローディヌへ別れを告げる。


「待ちな! まだ話しは終わって無いよ!」


「まだ何かあるのか?」


「あるとも! アンタ、ウチの店に――」


「あー! あー! ちゃんオリ何してんの!? 早く帰らないとマスターに怒られるし!」


「おみ足のマスター、まだ話があるみたいだけど……」


「邪魔すんじゃないよ小娘! オリオンとか言ったね、給金はそっちの三倍出すから『ポワトリア・マーメイド』で――」


「あー! あー! あー! 聞こえない聞こえなーい! ほらほらとっとと帰るし!」


「あひょっ!? ちょ、その押し方はズルい……! あひょひょぅ!」


「あ、ちょっと!? ああ、もう――!」


 彼女はまだ何か言いたそうだったが、シンシアにぐいぐい背中をおっぱいで押され、尋ねる暇もなく『ポワトリア・マーメイド』を後にすることになった。


 ・


「お人好しも大概にするし! 恩情を掛けるのはまだ良いけど、よりによってあーしらだけの秘密のマッサージまでしちゃってさ! ちゃんオリ、守秘義務って知ってますぅ?」


 プリプリプンプンといった風に、シンシアは大股で『クレセント・アルテミス』の帰路を進む。かなりの早足なので、ついていくには俺も早歩きになってしまう。


「機嫌直せって……俺だって考え無しじゃないんだよ」


 嫉妬や怨恨を断ち切るため以外にも、個人的な事情からくる別の考えがあったのだ。


 もし『おっぱいギルドに居る男冒険者は、冒険嬢の身体的ケアに長けている』という噂が広がればどうなるか? きっと俺の力を求めて、集まってくるんじゃないだろうか?


 自惚れを覚悟で言うが、俺のおっぱいスキル達は破格の性能をしている。

 いつかリリミカとの話にも出てきたが、世の女の子達の悩みを解決する為に能力を振るつもりだ。

 とは言え、やたらめったらにすべきでもないだろう。

 優れた力には責任と対価が圧し掛かるのもだ。おっぱいスキルの場合、責任は俺に、対価は相手に課せられる。


 分かりやすい対価が、やはり金だ。


 仮に俺が無料(タダ)でスキルを振るえば、関連の相場を乱すことになり、医者や薬師達の給金、果てはポーション類の取引価格を暴落させてしまう怖れすらある。

 先程おみ足ギルドに施したのは、おっぱいを伴わない『乳治癒』だったが、しっかり料金は請求するつもりだ。


 タダより怖いものは無いってのは、売り手にとっても買い手にとっても言える事だ。


「上手く行けば借金も早く返済出来る。七年半を待たずに『クレセント・アルテミス』からあばよ出来るだろ?」


 整体や按摩術の相場は知らないが、俺のおっぱいスキルならちょっと割高でも良いかもしれない。

 例の【ポワトリア条約】や【非乳三原則】などは、おっぱいにさえ触らなけれ違反したことにはなるまい。俺に課せられた責任とはつまりモラルだ。

 何なら、出張マッサージサービスってのもアリかも。

 そういう展望が有ることを説明しつつ、シンシアの機嫌を取る俺。


()()()駄目だっつってんるんだし!」


「へ?」


「なんでもねーし! ちゃんオリのバカ!」


 全然機嫌が直らない。卑劣な痴漢を早く追い出せるってのに、何がそんなに癪に障るのか。


「ほーっんと、つくづく甘いっての! いっそ『詫びとして一発ヤらせろ!』くらい言えば良かったのに!」


「過激だな……俺はそういう人の弱みとかにつけ込むやり方は嫌いだ。相手に悪いし、自分の格を落とす」


「ほーん、立派だねぇ……でも、そんなことばっか言ってっから童貞なんじゃね?」


「ど、どどどどどど童貞だわ!?」


 また噛みすぎて自白しちゃった!


「隠すな隠すな。ちゃんオリがドーテーだって事は四日前から全員分かってたし。あーしらに掛かればイチモクのリョーゼンってヤツよ」


 初日じゃねーか……しかも全員だと……。

 俺から童貞の香りでもするのか? それとも、経験の有無を見抜く鑑定眼的なチートスキルが彼女らに備わっているとでも?

 レスティアから新しく貰ったステータス隠蔽のアクセサリーじゃ、童貞までは隠蔽出来ないらしい。


「気にすんなよちゃんオリ! 遅い早いでオトコの価値は決まらなねーし! どーしてもってんなら、そのうちあーしが貰ってやる、ゼ!」


「はいはい、そのうちそのうち」


 童貞もからかわれ続ければ成長するんだ、ゼ? その手には乗らんよシンシア先輩。


「そんな邪険にしなくても良いじゃん……あーし、ホンキだよ?」


「あ? ははははは、そりゃあ良い。シンシアみたいな子と――」


 ドンと、笑う俺の胸にシンシアが飛び込んで来て、一瞬だが呼吸が止まる。勢いの割に弱い力だった。


「あ、あの……シンシア、先輩?」


「ずっと『クレセント・アルテミス』に居てよ。そうしたら、あーしら、何でも好きなことさせてあげるから……」


 シャツの内側へ向かって囁くような声だった。熱っぽい吐息が吹きかけられ、寒くも無いのに背筋がゾクゾクと震える。

 シンシアは額を擦るようにしてコチラを見上げ、潤んだ瞳で俺を写した。


「なんなら先払いが良い? いっそ、ココで始めてみよっか……?」


 彼女の身体は、夏日に溶けてしまったチョコレートのように俺に甘く張り付いた。潰れた乳房の向こうにある鼓動が酷く近い。

 裏路地で人もまばら。賑やかで明るい大通りとは違い、ここはやや薄暗い。

 だというのに彼女の唇がやけに艶めいて見えた。濡れているかのように瑞々しく、チロと見える舌が赤い火の様だ。

 シンシアは背伸びをして、俺へ顔を寄せてきた。ドクンと跳ねる心臓の音は俺のものか彼女のものか。

 その時、俺はどんな顔をしていただろう。


「――ふーん……えいっ!」


「ふがっ!?」


 シンシアの瞳に写る自身の姿を確認するより早く、彼女の指が俺の鼻を強く押してきた。


「プギャー! やーい、引っかかった引っかかった! ちゃんオリってば可愛いなー! 学習能力が皆無なん? 脳みそマーガリンなんじゃね?」


「ちくしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! お前ってヤツは、お前ってヤツはぁ……! この、クソ、逃げんな!」


 からかわれたのだと気付き、ある種類に滾っていた血が顔へ上る。シンシアの言うとおり、俺には学習能力が欠けているらしい。

 湧き上がる羞恥を誤魔化す為に彼女を捕まえようとするが、シンシアは蝶の様にヒラリとかわすと路地を一目散に駆けていく。


「ナハハハハハ! あばよ~また会おうゼ~!」


「行き先は同じだうろがボケ! 待ちやがれコラ! 詫びにおっぱい揉ませやがれ!」


 前を走る彼女の顔は見えなかったが、きっと大笑いしているに違いない。


 ・


「あ! やっと帰ってきた! オリオン、また緊急事態なのよ!」


 無駄な追いかけっこを終え、帰ってきた俺を迎えたのはそんな冒険嬢の言葉だ。

 ちなみにシンシアのおっぱいは揉み損ねた。揉んだら借金が三倍になるというから歯軋りして断念したのだ。

 その彼女は、戻って直ぐ別の部屋に向かった。そこでは手隙の冒険嬢達が先程の男連中をお仕置きしている。

 何処からか『オトコとオンナは凸と凹』『お仕置きは凸と凸』『オンナの身体のありがたみを知る為に、まずは凸から始めましょう』『凸を繋げて皆でナカ良しこよし』とか聞こえてくるが、何となくトラウマになりそうなので気にしない事にする。


「また……? 何だ、今度はお尻ギルドが殴り込みにでも来たか?」


「えっと……そうじゃなくて……オリオンを指名するってご依頼主様が来てるのよ……」


「へぇー……俺を指名かぁー……」


 ……。


「はぁ!? 俺を指名!? 何で!?」


 俺におっぱいは無いぞ!? まさか男のおっぱいが好きな……雄っぱい好きな客か!?


「聞き間違いじゃないのか!? ぜったい他の冒険嬢を呼んでるだろ! オリヴィエとか、オリアーナとか……」


「何度も確認したわよ! でも本当にオリオンを指名してるのよ。一人で来させろって聞かないし、珍しいご依頼主様達だったから……」


 達……だと……!?

 そんな奇特な性癖持つ者が、複数人で俺を待ち構えている……?


(やべぇ、どうしよう……! つーか普通にメチャクチャ行きたくねえ!)


 おっぱいは好きだが、男のおっぱいが好きかどうかと言われればそれは否だ。ましてや、そんな趣味嗜好を持つ男の前になんて絶対に行きたくない。


『ぐひひっお兄ちゃん、良いチチしてんなァ? オジサンに触らせてよ』


『おいおい焦るな、オリオン君が怖がってるだろ? まずは乾杯しようじゃないか』


『ほらほら隣に座りたまえ……そうそう、ワシらの中心に、ね?』


 ちょっと想像しただけで鳥肌がヤバい。デニムすら貫くサブイボが出来そう。人様の性癖に口は出したくないが、その対象が俺になるのはお断りだ。

 でも個別指名依頼に発生する特別手当て……お金ちゃんがウィンクしてくるぜ。

 もしかしたらコレは、男のおっぱいも好きになれよという天の意思か? 乳首の神のクセに、性別でおっぱいを差別するなよという事?

 神(俺の事では無い)は乗り越えられない者に試練を与えないとは言いますが、あんまりじゃありませんか。


 やっぱりおっぱいは女の子のおっぱいが最高だ。多様性? そんなこと言いました?


「……居ないって言ってくれない? それか『ルミナス草』の種を食べてお腹を壊してるから今日は無理だって……」


「それが……よく分かんないんだけど『来ないと牧場まで押しかけるぞ』って言っててさ……」


 身バレしてるー!? お、おのれ……! ありきたりなヤクザな手を使いやがってぇ!


「分かった……行こう」


 心底嫌だがこうなったら仕方無い。隙を見て乳首をつねり、俺に関する記憶を全て奪い去ろう……! ついでに、()()()()代として請求書をでっち上げてやるぜ!

 そんな小市民的な事を考えながら、暫定ヘンタイ親父共の待っている二階の個室へ向かう。

 必要以上にベルトを締め、シャツのボタンを全て閉じ、指を鳴らしながら、俺はいきなりドアを開け放った。


「お待たせしました! ご指名のオリオン、参りました!」


 ノックなしの無礼を働いたのは、機先を制するため。接客では無く、決闘に来たつもりで場に臨む。

 少しでも悪印象を与え、此方にはそんな気がないことをアピールしよう。

 初対面の野郎共にどう思われようが、痛くも……痒く、も…………。


「…………え?」


 そんな目論見は泡と消え、機先を制されたのは俺の方だった。

 いきなり開かれたドアに特に驚きもせず、三人の女達はソファに座りウェルカムドリンクを傾けている。


「こんばんわム……オリオンっち! 良い夜ね! 今日は楽しませて貰うから、いっぱいサービスしてよね!」


 亜麻色の短い髪をした少女が、猫のように愛嬌のある瞳を向けてきた。


「おや、随分と男前な装いじゃないか。仮面も似合ってるよせんせー……おっと、遊びの席で口を滑らせる所だった。私もどうやら浮かれているらしい」


 気だるげな目をした女性が、楽しそうにパイプ煙草をプカプカさせている。


「気持ちは分かるわノーラ。貴女の言うとおり、臨時教員かつ第二騎士団の新人君にそっくりだもの。でも彼は同僚や上司に黙ってこんな所で夜の副業をするような人じゃありません。――ねぇ?」


 行儀良く座っていた最後の女性も、眼鏡の奥で氷のような瞳を光らせている。


 俺を指名したご依頼主とは、リリミカ、ノーラ、レスティアの三人娘だったのだ。


「…………………………」


 ドアを開けた姿勢のまま、俺は仮面の下で冷静に悟る。


 ――終わった。

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マヌカハニーって、お高いんですね



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