幕間 勝負下着(バトル・ランジェリー)※
本日はもう一話投稿します
100話超えたしおっぱいの話をしよう(願望)
B地区の住人が三人になりやがて三日たった頃、リリミカとミルシェは王都へ買い物に来ていた。ムネヒトとバンズは牧場の仕事に専念し、レスティアは謹慎を解かれアカデミーへと足を運んでいる。
『せっかくの休みだから羽を伸ばして来い』
そう言ってムネヒトとバンズが残りの仕事を全て引き受けたので、サンリッシュ牧場最年少の少女達は久しぶりの買い物を思いっきり楽しむことが出来た。
二人ともムネヒトやバンズ、レスティアを伴わない買い物は久しぶりだった。彼らに何か問題が有るわけではないが、やはり歳の近い同性同士でしか語れない話や入れない店だってある。
王都最大の本屋に立ち寄って娯楽本や料理本、少しばかり年齢制限に引っかかりそうな本を購入したり、『かんみのたにま』に寄りランチとデザートで舌を満足させたりと歳相応の休日を謳歌していた。
時折寄って来るナンパな男達はリリミカが追い払う。しつこく食い下がったりする輩も、クノリの名が出ると恐れを無し逃げてしまう。私の名前は虫除けか! とはリリミカの不満だ。
そしてコレからが本番だ。
前述したが、気心の知れた相手とじゃないと入れないお店があるのだ。
「さ! 行くよミルシェ」
「う、うん……」
例えばこの下着専門店とかがまさにそうだ。
かつて初代クノリが興したといわれる下着産業は、まるで別世界からもたらされたと噂されるほど技術と理論に満ちていた。
彼女は独占などせずノウハウを広めたが、第一人者のとしてのブランドは現代まで健在である。
クノリ印のブラジャーといえば王都では全体シェアの60%を占めている。【クラジウ・ポワトリア】では下着、服飾系統の店が百を超える数存在することから、この比率はとんでもない事が分かる。
その初代クノリが建てたこの下着専門店『ヴィーナス・ベール』は、王都でも最古級の歴史を誇る建造物であり、これより古い物は勇者と【剣護の乙女】像くらいだろうと言われてる。
噂では剣護の乙女――初代女王、エリーゼミシェリカに褒美としてブラジャー屋を欲しいとねだったから賜ったと言われているが、それは定かではない。
「いらっしゃいませ、毎度のご贔屓ありがとうごさいます。クノリ様、サンリッシュ様」
「お疲れ様。さっそく奥へ通させてもらうわね」
ドアを開けると、地味だが品の良い衣服を纏った女性がお手本のような会釈をしてくる。
この店の大きな特徴は従業員は全て女性であること、奥のVIPルームには試着室が存在しないこと、そしていわるゆ大人向けの下着の品揃えが王国随一であることが挙げられる。
従業員が全て女性なのは客のためを慮った為といわれているが、初代クノリの趣味だったという線が濃厚である。
ちなみに男子禁制ではあるが、連れ立ったVIP会員女性の許可と店側の許可があれば入店できる。今は恥かしくて無理だが、いずれムネヒトを連れて来てからかってやろうと、ミルシェとリリミカの意志を同じとするところだ。
リリミカやレスティアは当然VIP会員だ。
リリミカは顔パスで、ミルシェは会員カードを提示すると奥のVIPルームに案内された。表の一般売場もかなりの品揃えだったが、ここは更に上質な品が整然と陳列されている。当然、価格などもワンランク以上違う。
ドア二枚を隔てたVIPルームに通されると、リリミカは直ぐに服を脱ぎだした。慣れているものらしく、あっという間に裸になる。
「ちょ、ちょっとリリぃ……」
「平気だって。どうせ女の子しか居ないんだし」
躊躇い無く肌を晒す友人の代わりにミルシェが羞恥を覚える。その五分の一の恥じらいも無いリリミカは、脱いだ服を従業員に渡しながら初心な親友へ微笑んだ。
小柄だが均整の取れた肉体と、くびれた腰と細い腕に脚。どのパーツも細いが貧弱という印象は受けない。適度に鍛えられ身に付いた筋肉が目立たないように薄い脂肪を纏い、メリハリの利いた女性美を演出していた。背丈は平均を下回る彼女だが、実際よりも手足を長く見せる造形がリリミカにはあった。
そして最近明らかな増量をみせた胸だ。かつてはチョンと乗っているような薄さだったのに、いまでは立体的な陰が出来ている。
元々誰もが羨むような美肌だったが最近は更に瑞々しい。常に濡れているのではないかというくらいに艶めいていた。
「何時までそうしてんの? もう服を着てるのミルシェだけだよ?」
リリミカは徐に近くにあったブラを取ると手際よくそれを試着し、あちこちに供えてある身の丈を超える大鏡の前でくるくる回り自身を確かめていた。
店舗面積の四割を占めるという広さではあるがこのVIPルームに試着室は無い。
しかし下着の試着が出来ないというワケではない。リリミカが行ったようにあらゆる下着の試着が可能であり、あられもない姿になったところで咎める者も皆無。
それどころか、ここに入る客のほとんどが裸で下着を選ぶ。
極上の下着とサービスを提供する女性だけの聖域、初代クノリの時代から護られてきたこの店の特色だ。この特別な開放感を得たいがためにVIP会員を目指す客も多い。
「ぅぅう……でもぉ……」
とはいえ全ての客がリリミカのように躊躇無く裸になれるわけが無い。特に自分用として初めてVIPルームに入ったミルシェにとって抵抗があるのは当然だった。
そんな客の為にカーテンのついた簡易試着所を持ってくる事もできるのだが、そのことをリリミカは伏せてある。恥かしがるミルシェが見たいからだ。
「ほらほら、脱いで脱いで!」
「きゃっ!? ちょ、わぁぁん!」
リリミカはモジモジぐずぐずしているミルシェに飛び掛ると、これまた手際よく彼女の身体を隠していた布を一枚残らず剥ぎ取っていく。しかし靴下だけ残すのは忘れたというわけではない。
放物線を描くシャツ、ブラ、ショーツが従業員の手に吸い込まれ、どういう技術か手の平に着地する時には既に畳まれていた。
「うひょひょぉー……ミルシェのおっぱい、ホントにたまりませんなぁ……」
「完全におっさんだよリリィ……」
人前で出来ない姿に人前でしてはいけない顔を貼り付け、亜麻色の髪の少女は友人の周りをくるくる回る。
ミルシェは頬も身体も桃色に染め、全身を曲げ両腕で乳房と脚の付け根あたりを隠す。それでも抑えきれない胸のボリュームは、彼女の腕から今にも零れそうだ。
いや、実際上から下から横から零れている。彼女の胸は自由も求めることに貪欲らしい。
「いらっしゃぁい。リリミカちゃん、ミルシェちゃん。待ってたわよぉ」
「あ! おつかれ! エルミん!」
艶やかな、もっと単純に表現するなら淫蕩な声色で二人を迎えたのは、この店の店長だ。
声質に負けず劣らず、全身から妙に色気を振り撒く女性はエルミニ・フェルプス。メープルシロップ色の髪とメープルシロップ色の瞳を持つ、二十代前後の美女だ。
他の店員とほぼ同じデザインの制服だが、身体のラインが妙にクッキリと現れている。
ミルシェにサイズは及ばないまでも、豊かなバストから腰、臀部、脚への急カーブを描くサマは熟練の職人が手がけたヴァイオリンを思わせる。
彼女を夜会の席にて演奏したいという男は、きっとダース単位でいるだろう。
余談だが、二十代くらいに見えるがエルミニが実際は何歳なのかリリミカもミルシェも知らない。
アカデミー小等部の頃に記憶したエルミニの姿と、現在の姿とではほとんど乖離が無いのだ。
噂ではエルフとかサキュバスの血を引いているとか言われているが、真相を知る者はいない。
「あら? あらあらあらぁ? 何か二人とも、艶が出てきたんじゃなぁい?」
「つ、ツヤってなんですかぁ……?」
「もっとエッ……魅力的になったってことよぉ」
ミルシェは戸惑い顔を更に赤くするが、友人の方はむしろ得意げに笑みを深くした。
「でしょー? でも、まだまだミルシェに比べたらドングリみたいなモンだよー……」
「んもぅ、自分を卑下しちゃダメよ! サイズが全てじゃないのよぉ? それに、そんなに綺麗なピンク色したドングリなんて無いんだから!」
「ちょ!? 何処見てんのよ~!」
「んふふ、誰がリリミカちゃんのドングリを収穫するのかしらぁ? それとも、此所に来たってことはぁ……誰かにご馳走する準備なのぉ?」
「変な事言わないでったら! 私のドングリはまだにも食べさせてあげないんだから!」
「んふ~? まだって、やっぱりご馳走するアテが有るんじゃなぁい? 可愛いドングリ、美味しいって言ってもらえたら良いわねぇ?」
「バカ! バーカ!!」
いやドングリ言いすぎだし。
そう思ったがミルシェは口に出さない。楽しそうな二人に茶々を入れるような真似はしないのだ。
ミルシェはとりあえず傍にあるブラを手に取り自身の胸に当ててみたが、サイズが合うはずも無い。ミルシェは口をややへの字に曲げ下着を元の場所に戻した。好みの柄だっただけに残念さが割り増しされる。
黒髪の異邦人が愛してやまない自慢のバストではあるが、それを支える下着が規格外になるのは仕方ない。今度は店の端に陳列されてある大きいサイズを手に取る。地味な柄だが我慢だ。
ミルシェは肩紐を通し前かがみになり、下に垂れた(重力のせいです。本来、私のはパツンパツンなので全く垂れてません。未来永劫垂れません)バストを、ポジションと形状を整えながら脇のほうからブラのカップに入れていく。反対側も同様だ。
そして背に手をやりホックをかけ、られない。なんてこった。
「前、は、この、サイズでも大丈夫だったのに、い、いたたたた……ッ!」
ホックに罪があるわけでも無いのに、三連の金属部品にあらん限りの力を込めて繋げようとする。当然、下から持ち上げられた布が乳房に食い込み痛い。カップの淵から零れた乳肉の量から察するに、やはりアンダーではなくトップの方のサイズが大きくなったらしい。太ったわけではない、それだけは救いか。
ミルシェはブラに勝利し、一般的には最大級のサイズを誇るそれを自分から解放してあげた。もう逢うことは無いだろう。
「――……」
「――……」
「――……」
「――……」
ふと気が付けば、リリミカもエルミニもその他のVIP会員の皆もミルシェの方を見ている。親友にいたっては涎を垂らしていた。あと、拝んでいるのは誰ですか。
「……ちょっと」
「ハッ!? ご、ごめん……エルミん、お願い!」
「わかってるわぁ、これよぉ」
長い睫でウインクをし、エルミニはホテルで食事を運搬するときなどに使うようなカートを二人に前に音も無く転がせた。その銀のカートには新品の下着がズラリと並んでいる。
「とりあえずこれくらい作ったわぁ。さ、自由に着てみてぇ」
それは一般販売されておらず、しかも未だ試作の域を出ない下着だ。そして何よりリリミカとミルシェに最適なサイズとして作られている。いわばオーダーメイドだ。
「あ、これ可愛い! わあコッチも!」
リリミカはカートが停止するより早く手に取り、早速試着してみる。それから上半身をねじったり腕を広げたりして着心地を確かめた。それからしきりにうんうんと頷く。
「すっごいピッタリ! しかも前の試作品よりずっと快適! 流石ね!」
素直な賞賛を受け、エルミニも満足げに頷く。
「リリミカちゃんの忌憚のない意見のお陰よぉ。サイズ調整機能も実装可能なレベルになってきたわぁ。でも……」
「うん。布のサイズを調整するだけなら、コトは単純なんだけどね……ふむ」
ふと小さな苦笑いを浮かべたエルミニに追随し、リリミカを真面目な表情を作る。二人にしか分からない会話をしているようだ。
ミルシェも自分用に作ってもらった下着を手に取り、先ほどと同じ動作で身につける。
「わ、ぴったり」
今度は驚くほど簡単に胸がカップが収まり、いささかも窮屈ではない。以前来た時にも面倒でサイズを測らなかったのにどういうワケか。
ミルシェは知らないがコレは親友が十年間毎日書き溜めたデータと、とある黒髪の青年の助言ゆえである。
「ねねっ! コレ見てコレ!」
「へ? どれど……ぶッ!?」
呼ばれて振り向くと、別の下着を身につけたリリミカがいた。赤を主体とした派手な色の下着で、ほとんど紐である。一瞬、前後ろを逆にして着たのではという位に紐だった。申し訳程度に三角の布が紐の中心に鎮座している。
「やっぱ、こんぐらいセクシーな方が喜ばれるかな?」
流石に恥かしいのか、やや上気したリリミカは紐を小さく引っ張ったり離したりしている。ほんの数ミリズレるだけで完全に露出してしまいそうだ。リリミカは大丈夫だが、私は多分ダメそうと、ミルシェは思った。
「それともこーいうのかな?」
羞恥に絶句するミルシェを無視し、リリミカはまた別のブラを手に取る。布の質量は先ほどの三倍以上はあうだろう。しかし、今度はカップ部分の布が無い。身に纏えば、主人の麓のみを隠し頂上を露わにさせるだろう。明らかに普通の下着ではない。
しかし本日二人が購入しにきたのは、いわゆる普通の下着ではないのだ。
「うふふ、まだまだそういうのは早いわよぉ。最初の一枚は、もっとおしとやかにしないとぉ」
「えー? でも勝負下着って、こういうものじゃないの?」
エルミニのアドバイスに、今度は半透けの下着を手に持っていたリリミカはやや憮然とする。
普段着用でもない、寝巻き用でもスポーツをする時用でもない。女性にとっての戦闘用の下着を二人は買いに来たのだ。
身を守る最後の防具でありながら、ある意味で男を切り裂く武器。それが勝負下着だった。
「もちろんそういうのにも需要はあるわぁ。でもね、それは経験を積んでからよぉ?」
年長者は経験の浅い少女達へ優しく言い聞かせた。
「二人とも、バトルランジェリーで一番大事な事って何かわかるかしら?」
「え? えっと……デザイン?」
「サイズとか、自分の雰囲気にあってるかどうかとかでしょうか?」
急に質問を振られリリミカとミルシェは首を傾げながらも答えた。
「それも重要だけどぉ、一番はね? 相手に『脱がせたい』と思わせるコトよぉ」
エルミニの言葉で二人は頬を朱に染める。その初心な反応を可愛らしく思いながらエルミニは語を継いだ。
「アナタ達が主役であって、バトルランジェリーはいわば脇役。メインディッシュにおける前菜とか、あるいはお皿そのものよ。つまり裸を引き立たせるオプションみたいなものなの。最後まで着たままうなら話は別だけどねぇ?」
様々な理論をすっ飛ばしエルミニはそれだけを言った。
もちろん、エルミニは下着が重要じゃないと言っているワケではない。しかし、その他の複雑な理論や下着の事情などは様々な経験を重ねてからで良い。
いかに贅を尽した勝負下着であろうとも彼女ら自身の価値には換えられないということを、まずは歳若い二人に教えたかったのだ。あえて派手な下着を作成したのもその為だ。
「特に男ってのはねぇ? 宝物は誰かに貰うより、自分の力で手にしたいと考えるものなの。それなのにそんな派手な下着を着てたら『来たな、待ってました!』って言う様なものじゃないからしらぁ?」
二人は派手だったり紐のような下着に目を落とし、更に顔を赤くする。否定する材料をミルシェもリリミカも過去の経験から得てはいない。
「ま、一概には言えないけどねぇ。派手でエッチなのが好きって男も居るわよ。でーもぉ?」
そこでエルミニは笑みを深くする。
「二人の胸の中に居る男はぁ、どちらかといったらそんなタイプじゃないでしょう?」
二人は思わずエルミニの顔を見やり、そして友人と目を合わせ、最後に俯いてしまう。もごもごと口を動かすだけで言葉を発しなかった。
「きっとその男も女の子に慣れていないんでしょう? だったら、そんな食虫植物みたいなバトルランジェリーは早いわよぉ。最初はいかにもなデザインより、普段のより背伸びしたっていうものから始めましょう?」
あえて過激な表現でエルミニは二人に教授した。派手に着飾る必要などない、アナタ達はありのままで魅力的なのだと言内に隠して伝えた。湯気の立ち上らんばかりの彼女らに聞こえているかどうかは不明だが。
それから二人はどうやって自分の勝負下着を選んだかよく覚えていない。
新品の勝負下着を手に取り身に纏う度に、黒髪の青年が脳裏にチラつき冷静に選べた自信が無いのだ。
結局、二人とも上質な絹で織られ白を基調とした比較的シンプルな物を一着ずつ購入した。その下着に特徴があるとすればブラのホックが前に付いている位だろうか。
セクシーとか艶やかとかはともかく、脱がされやすそうではあった。
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エルミニ・フェルプスという名前は、ブラジャーの誕生に関わるエルミニー・カドル氏とメアリー・フェルプス・ジェイコブ氏という偉大な先人達の名前から拝借いたしました。
某英霊召喚ソシャゲで実装してもらいたいです。仮にこの両名の実装を訴える署名運動があったとすれば、その代表はたぶん私です。
皆様のお陰で100話を超えることが出来ました。これからも隙あらばおっぱいの話をするような物語ですが、皆様の貴重な時間の使い方になってくれたら幸いです。




