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第五話 微毒な少女 家族紹介

この話を読む前に、一つ前の「人物紹介〜天崎家の家族編〜」を読んでおく事をお薦めします!

※今回は玲花視点のお話です。










「「ただいまぁ〜」」


あたしとふぅちゃんの声が重なる。


実はあたしは、この『天崎家』に居候している。

あたしの母親は、あたしが幼稚園に通っていた頃に病死し、父親も、あたしが中学校に入学するちょっと前に病死した。

あたしの父親と、ふぅちゃんのお父さんである(こう)さんは兄弟で、あたしの叔父にあたる絋さんが、両親を失ったあたしを引き取ったのだ。




「おじゃましま〜す。」


昼休みに言っていた通り、ユメもしっかりついてきた。


由美さんとナツ姉に会ってみたい、って言ってたけど、きっとビックリするわね。



ユメも結構美人だけど、由美さんとナツ姉には敵わない。


ていうか、由美さんもナツ姉もレベルが高すぎる。


由美さんは、ハーフで、顔立ちも整っている。

さらに、すごく綺麗な長い金髪で、すれちがった男性みんなが振り向くくらい魅力的な人。

ナツ姉に至っては、ちょっと街を歩くだけでいろんな男に声をかけられる。

ナツ姉と一緒に買い物に行くと、言い寄る男共がウザくて、買い物が予定通りに進まない。


あたし達の通う学園の高等部でも、ナツ姉は未だに有名だ。


ふぅちゃんが一気に有名になったのも大半はナツ姉の影響だと思う。今の三年の男子が、入学式の日に

「天崎夏美の妹が入学した!しかも外部新入生の代表だし、ヤバいくらい可愛い!」

って騒いでるのを見たし。


三年になっても男子は男子だ、って思ったわ。







「冬花ちゃん、玲花ちゃん、おかえりなさい。

あら?おともだち?いらっしゃい。ごゆっくりどうぞ。」


出迎えてくれたのは、由美さん。

ユメを見てみると、やっぱり由美さんを見て呆然としている。




「…あ、は、初めまして。飯田夢菜と言います。よ、よろしくおねがいします。」


動揺しながら、なんかおかしい挨拶をしている。




「あら、ご丁寧に、ありがとうね。私は天崎由美。冬花ちゃんの母です。」


由美さんも丁寧に返す。



「玄関で立ち話するのもなんだし、客間にいこう。」


ふぅちゃんの一言で、居間に移動する。






天崎家は、洋風の大きな家で、屋敷に近い雰囲気がある。

当然、ひとつひとつの部屋も広く、客間だけでも体育館の半分近くある。

そして、居候のあたしにも、まるで当然のように広い一人部屋が与えられている。

最初の頃は、かなり遠慮していたあたしも、今ではすっかり馴染んでしまっている。





話がそれてしまったけど、とにかく、天崎家は大きい。

客間に着くまで、ユメは落ち着きなくキョロキョロとあちこちに目を向けていた。

この調子だと、ユメが家に帰る頃には疲れきっているわね。確実に。




そんなこんなの間に客間に着いた。

なぜか、客間だけは和室で、畳に座布団、といった感じだ。

廊下をはさんで隣が居間なので、微かな話声で、居間に誰がいるのかわかる。

今日は、絋さんとハル兄とアキラは、午前中のうちに一週間の出張から帰ってきて、午後は休みだから、少なくとも絋さんとアキラは家にいるはず。

ハル兄は結婚してからは、ここから歩いて約五分の所にある別宅に、奥さんと二人で暮らしている。


「…ほほぅ、うちの…よりも……みたいだね。」


「……じゃねえ?……なんだし。」




案の定、居間からは、絋さんとアキラの話声が多少聞こえる。

…けど、廊下をはさんでいるからか、声を微かにしか拾えないため、内容はさっぱりわからない。



「はい。…でも、……ちょっと…」



女の人の声もする。

ん?この声は…清奈(せいな)さん?




「清奈お姉ちゃんも来てるんだぁ…私、清奈お姉ちゃんに挨拶してくる♪」ふぅちゃんが嬉しそうに居間へ向かう。

清奈さんとハル兄は、中学生の頃から付き合っていたらしい。

その頃、ふぅちゃんは幼稚園児だったから、ふぅちゃんにとって、清奈さんは実姉同然なんだと思う。

まあ、会えるだけでこんなに喜ぶのは、ふぅちゃんがシスコンだからなんだけどね。




「ほら、ユメ。あたし達も行くわよ。あっちの部屋にみんないるみたいだし、あなた、ここの家族に会いたがっていたじゃない。」


「…ぅえ?…あ、ええ。」




居間には、予想通り、絋さん、ハル兄、アキラ、清奈さんがいた。

由美さんも、あたし達の分と思われるお茶をいれている。



「清奈お姉ちゃんっ♪こんにちは♪」


「清奈さん、お久しぶりです。」


ふぅちゃんは、真っ先に清奈さんに挨拶した。

あたしも清奈さんに挨拶する。



「あ、お父さんとお兄ちゃん達、おかえりなさい。」

ふぅちゃんの、取って付けたようなおかえりなさいに、出張帰りの男三人はがっくりする。



「オイオイ…今、俺達を忘れてただろ冬花…

しかも玲花に至ってはシカト…」


アキラの呟きで、おかえりなさいを言い忘れている事を思い出した。



「絋さん、ハル兄、おかえりなさい。

あ、ついでにアキラ、おつかれさま。」


「…ハハ、ヒデェな、オイ。出張帰りの恋人に言う労いの言葉は『ついで』かよ。」


引き攣った笑顔でアキラがそういう。



「当然。…ところで清奈さん、きょうはどうしたんです?

なにか大変なことでもあったんですか?」


「うーん…」


とりあえず、アキラはほっといて、清奈さんに聞いてみる。なんだか、言いずらい事のようだ。

すると、由美さんが、お茶を持ってこっちに来た。


「私の出産予定日よりも清奈ちゃんの出産予定日のほうが早いのを気にしてるみたいなの。

私より先、って言っても、ほんの一週間くらいだし、あくまで予定日なんだから、気にする事はないと思うんだけれどもね。」


成程…でも、確かに気にする程の事でもないと思う。


「そうですよ、清奈さん。

いいじゃないですか。順番なんて。

それよりも産まれてくる子供との幸せな日々に想いを寄せた方がいいですよ。」


「うーん…そうなのかしら…?」


…やっぱり悩まさっちゃうのね…



ふと、ユメの事が気になって様子を見ると、ユメは絋さん達と自己紹介をしているようだった。

なんだ、ユメ、以外としっかりしてるじゃない。







そんなこんなしているうちに

「ただいまぁ。あれ?みんな勢揃いして、どーしたの?

若干一名、知らない女の子もいるみたいだけど。」


ああ、ナツ姉が帰ってきちゃった。



ってか、ホントに図ったかの様なタイミングで全員揃ったわね。





「あ♪お姉ちゃんおかえりなさい♪」


またもや、ふぅちゃんが嬉しそうになる。



「ただいまぁ♪冬花ちゃ〜ん。」


ナツ姉も嬉しそうにそう言いながら、ふぅちゃんを抱きしめる。


こっちもシスコン…その上、ナツ姉は若干レズっ気アリ、だ。

ナツ姉…アナタ、恋人いるでしょう…婚約までしてる恋人が…


…このシスコン姉妹め。


でも、何時見ても絵になるわ。

この、美女姉と美少女妹の笑顔の抱擁シーンは。



ユメなんか、もうポーッ、としちゃってるし。



「…冬花ちゃん以外はお父さん似なんだね。」


「そういえばそうね。」


確かに、この家で金髪をもっているのは由美さんとふぅちゃんだけで、他のみんなはあたしも含め、黒か茶だ。



あら?そういえば、あからさまに外国人の血が入ってるとわかるのも、由美さんとふぅちゃんだけね。

遺伝子の神秘?




* * * * * * * * * * * *




あれからすぐに、ふぅちゃんは部屋を片付けに行った。

十分きれいな部屋なんだけど、人を呼ぶなら片付けなきゃいけない場所があるらしい。


ユメは、全員と自己紹介をして、ナツ姉と軽いお喋りもしてた。


…ナツ姉、ユメの胸を見て口元緩めてた…


んで、ユメは今あたしと一緒に、客間でお茶を飲んでふぅちゃんを待っている。


「…すごいね。ここの家族。」

ユメが、未だにぼんやりした様子でポツリと言う。


「この家族の中で過ごすと、自分の容姿に自信無くすわよ。

あたしだって自分の顔には自信あるけど、この家族の中だと一番地味なのよ。

客観的に視ると。」


そう。あたしは、自分が美人だってことくらい気付いている。

『学年一のクール系美少女』と呼ばれていることだって知っている。

“学年”一のクール系美少女と、“学園”一の可愛い系美少女が、いつも一緒にいるから、相乗効果で二人とも、注目度が異様に上がる。


それなのに、ふぅちゃんは未だに自分が、超ハイレベルの美少女であることに気付いていない。




さっきも、帰り道で


「うちの学園、変わってるよね。

女の子は美人さん多いのに、

男の子は私に告白するような変わり者ばっかりだし。」




何て言ってたし。

危うく突っ込むとこだったけど、勘違いを訂正したところで、信じようとはしないのは、昼休みの会話でも実証済みだ。



要するに、あたしは自覚してる分、多少なりともプライドがあるからヘコむけど、ふぅちゃんは自覚してないで、自分は普通と決め込んでるから、そういう点ではあっけらかんとしている。


「本当に凄い家族だねぇ〜…」


…ごもっともだわ。






そんなこんな話してたら、足音が聞こえてきた。

ふぅちゃん、片付け終わったのかしら。


「あ、冬花ちゃんのお母さん。」


え?由美さん?


ユメの言う通り、由美さんが客間に来た。


「夢菜ちゃんに…ちょっとおねがいがあるの。」


真剣な表情で由美さんは言った。



由美さんがこの表情になるのは、大抵、家族がらみのことだ。



「あなたはきっと、何があってもずっと冬花ちゃんと一緒にいてくれると思うから、お願いしたいの…

冬花ちゃんに、必要以上に男の子達を近づけないであげてほしいの。

あの子、小さい頃から誘拐されたり、大怪我させられたりすることが多かったの。

その犯人がほとんど男性だったから、あの子、すごく男性を怖がるようになっちゃったの。

それにね、あの子、一度心臓の手術してるから、念のため、ってことで激しい運動とか、吃驚するようなことは控えなきゃだめなの。

だから、不必要に男性を近づけないほうがいいと思って…」




ふぅちゃんは今まで、いろんな犯罪の被害者になってきた。


ストーカー被害なら、この家の皆が少なくとも一度は被害をうけている。


だけど、ふぅちゃんは格が違う。


見た目のか弱さ、可愛らしさのおかげで、危ないロリコン男などに狙われ易かった。


あたしが記憶してるだけでも、誘拐が五回・傷害が四回・ストーカー被害が三回と、異常な回数の被害に遭っていた。それらの内、二回の誘拐を除く全ての犯人が男だったせいで、家族、幼馴染み以外の全ての男性に対して、強い不信感と恐怖心を持つようになってしまった。


今では、用事がなければ、自分からそれらの男性には近寄ろうとは決してしなくなった。

用事があっても、必ず1m以上は離れてるけど。



「そうだったんですか…心臓のことは聞いていたんですけど…



男子に告白されたあと、いつも青ざめた顔してたから、なんでかな?とは思ってたけど。そんな事情が…


わかりました。少し気を付けてみます。」


ユメは納得したらしい。



「よかった。ありがとうね。」

由美さんの顔は、安心した母親の顔になっていた。



あたしにとっても、よかった。

あたし一人だと、どうしても完全には男達を避けきれないのよ。

まあ、二人でも完全には無理だけど、かなりマシにはなるでしょう。






その後は、ふぅちゃんが部屋を片付け終わったので、ふぅちゃんの部屋へ行き、七時ごろまでテキトーに遊んだりお喋りして過ごした。

そのあと、晩御飯を食べて、ハル兄と清奈さんに送られてユメは帰っていった。

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