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追放された無能と呼ばれた俺、言葉で仲間を取り戻す  作者: 紅蓮シュウ


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第9話 境界の外へ

 “空白”が、森の中で広がっている。


 さっきまで見えていた範囲が、目に見えて増えていた。


 木々の間に、歪みが点在している。


 それはもう、“現象”なんて言葉で済ませていい規模じゃない。


「……止まってないな」


 レグナスが低く言う。


「むしろ、加速してる」

「おい、これやばいだろ」


 フェルナンが乾いた声を出す。


「このまま広がったら、森ごと消えるんじゃねえか?」


 否定できなかった。


 あれは“削る”。


 音も、匂いも、意味も。


 だったら――


「……人も、だな」


 俺が言うと、誰も反論しなかった。


 沈黙が落ちる。


 森の外は、さっきまでと同じ景色なのに。


 境界の向こうは、もう別の場所みたいだった。


「……戻る」


 レグナスが言う。


 決断は速い。


「一度拠点に帰る。情報を整理して、対応を考える」


「対応って……何する気だよ」


 フェルナンが言う。


「国が絡んでるなら、俺たちだけでどうにかなる話じゃねえぞ」


「だからだ」


 レグナスは短く答える。


「だから、動く」


 その言葉に、わずかな重みがあった。


 ただ逃げるだけじゃない。


 関わることを前提にした判断だ。


 俺は、森を見る。


 “空白”は、止まっていない。


 広がっている。


 そして――


「……これ、時間の問題だ」


 口に出す。


 自分でも分かる。


 このままだと、間に合わない。


「何がだ」

「拠点に戻るまでに、範囲が広がる」


 ミレイアが静かに頷く。


「ええ。あの速度なら、十分にあり得ます」


「……つまり?」


 フェルナンが嫌そうな顔をする。


「……回り道してる余裕はないってことだ」


 俺は言う。


「ここで止めるしかない」


 空気が変わる。


 レグナスが、こちらを見る。


 判断を測る目だ。


「……できるのか」


 短い問い。


 だが、答えは決まっている。


「分からない」


 正直に言う。


「でも、さっきみたいに“削れる場所”があるなら」


 地面を見る。


 森の境界。


 あそこに“発生点”があった。


 なら――


「元を断てば、止まる可能性はある」


「可能性、か」


 レグナスが呟く。


 低い声。


 だが、その中に迷いはない。


「……やる価値はあるな」


「おい、本気かよ」


 フェルナンが顔を引きつらせる。


「さっき死にかけたばっかだぞ」


「だからだ」


 レグナスは一歩踏み出す。


「次は死なないようにやる」


 単純な言葉。


 だが、それだけで十分だった。


「……はあ」


 フェルナンが頭を掻く。


「付き合うしかねえか」


 視線が、俺に向く。


「お前が言い出したんだぞ」

「分かってる」

「ちゃんと責任取れよ」

「できる範囲でな」


「それが一番信用できねえんだよなあ」


 軽口。


 だが、その裏にある信頼は分かる。


 ミレイアも、静かに頷いた。


「行きましょう」


 全員の視線が、再び森へ向く。


     ◇


 境界を越えた瞬間、空気が変わる。


 重い。


 薄いのに、重い。


 矛盾した感覚が、体にまとわりつく。


「……やっぱり気持ち悪いな」


 フェルナンが顔をしかめる。


「長居したくねえ」


 同感だ。


 だが、そうも言っていられない。


 “空白”は、すぐそこまで来ている。


「……あそこだ」


 俺は指を差す。


 さっき“削られていた場所”。


 あそこが、一番濃い。


「見えるか」


 レグナスが聞く。


「見える」


 はっきりと。


 さっきよりも、ずっと。


 そこだけ、明確に“歪んでいる”。


「……行くぞ」


 レグナスが前に出る。


 全員が、それに続く。


 一歩。


 二歩。


 距離が縮まる。


 “空白”が、反応する。


 揺れる。


 近づいてくる。


「来るぞ!」


 フェルナンが叫ぶ。


 矢を放つ。


 意味はない。


 だが、視線を引きつけることはできる。


「アーヴェル!」


「分かってる!」


 俺は前に出る。


 “発生点”へ。


 さっきと同じだ。


 違うのは――数だ。


 周りを囲む“空白”。


 逃げ場はない。


「……ここだ」


 足を止める。


 目の前。


 歪みの中心。


 何もないはずの空間。


 だが――


「……ある」


 そこに、“意味の穴”がある。


 ぽっかりと抜け落ちた場所。


 ここから、広がっている。


「……壊す」


 呟く。


 ミレイアが、すぐに反応する。


「詠唱を合わせます」

「頼む」


 短い言葉。


 それで十分だった。


 ミレイアが詠唱を始める。


 光が集まる。


 地面に紋様が浮かぶ。


 同時に、“空白”が反応する。


 速度が上がる。


 迫ってくる。


「急げ!」


 レグナスが叫ぶ。


 剣で、近づく個体を牽制する。


 フェルナンの矢が、空間を裂く。


 意味はない。


 だが、時間は稼げる。


「……今!」


 ミレイアが叫ぶ。


 光が、集中する。


 俺は、そこに手を伸ばす。


 触れる。


 何もない。


 だが――


「……ここに、いらない」


 言葉を、叩き込む。


 意味のない場所に。


 意味を与える。


「消えろ」


 その瞬間。


 光が、弾けた。


 “空白”が、一斉に揺れる。


 歪む。


 崩れる。


 完全じゃない。


 だが――


「止まった……?」


 フェルナンが呟く。


 周囲の“空白”が、動きを止める。


 さっきまでの勢いが、消えている。


「……成功、か?」


 レグナスが言う。


 俺は、息を整えながら周囲を見る。


 確かに、止まっている。


 広がりも、ない。


「……一旦は、な」


 そう答えた瞬間。


 地面が、震えた。


「……っ!?」


 全員が身構える。


 さっき壊した場所。


 そこから――


 “何か”が、現れる。


 今までの“空白”とは違う。


 形がある。


 だが、不安定だ。


「……おい、これ」


 フェルナンの声が震える。


「さっきよりやばくねえか」


 同感だった。


 これは、“空白”じゃない。


 “埋めようとしている何か”だ。


「……来るぞ」


 レグナスが言う。


 その瞬間。


 それが、こちらを“認識した”。


     ◇

 “止める”ことはできましたが、その先に何かが出てきました。

 状況は、むしろ一段階進んでしまった気がします。


 ここからどうなるのか、ぜひ続きを見ていただけたら嬉しいです。

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