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追放された無能と呼ばれた俺、言葉で仲間を取り戻す  作者: 紅蓮シュウ


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第21話 二人の言葉

 ――一人じゃ、無理ですよ。


 その声は、すぐ後ろから聞こえた。


 振り向く。


 少女が立っている。


 さっきと同じ距離。


 同じ姿勢。


 でも――


 何かが、違う。


「……なんで来た」


 思わず聞く。


 敵だ。


 止める側の人間だ。


 なのに――


「なんででしょうね」


 少女は、少しだけ首を傾げる。


 いつもの軽い調子。


 でも、その声に、わずかな“迷い”が混じっている。


「気づいたら、ここにいました」


「……それ、言い訳か?」


「違いますよ?」


 即答。


 だが、その目は――さっきよりも揺れている。


 確実に。


「……お前」


 一歩、近づく。


「今、正常じゃないだろ」


「……正常です」


 少しだけ、間を置いて答える。


 その“間”がすべてだった。


「……嘘だな」


 言い切る。


 はっきりと。


 少女の表情が、わずかに崩れる。


「……嘘、じゃないです」


 弱い否定。


 今までとは違う。


「……じゃあ」


 さらに踏み込む。


「なんでここにいる」


 問いを重ねる。


 逃げ道を潰すように。


「……」


 少女は、答えない。


 答えられない。


 その沈黙が、答えだ。


「……揺れてる」


 静かに言う。


「お前の中で、“何か”がズレてる」


「……っ」


 少女の肩が、わずかに震える。


 目を逸らす。


 初めてだ。


 明確に。


「……それ以上は」


 小さく言う。


 今までよりも、ずっと弱い声で。


「やめてください」


「やめない」


 即答する。


 ここで止めたら、全部終わる。


「お前も、“届く側”だ」


 言葉を置く。


 押しつけない。


 ただ、置く。


 少女の呼吸が乱れる。


「……私は」


 口を開く。


 だが、続かない。


「……私は……」


 言葉が出てこない。


 意味が足りない。


 それは――


 さっきまでの俺と同じだった。


「……名前」


 小さく言う。


「お前の名前は」


 少女が、顔を上げる。


 目が合う。


 揺れている。


 強く。


「……分からない」


 その一言で、すべてが決まる。


 やっぱりだ。


 こいつは――


「……奪われてる」


 呟く。


 少女の目が、大きく見開かれる。


「……違う」


 否定する。


 でも、弱い。


「違わない」


 俺は言う。


「だから、“役割”で埋めてる」


「……っ」


 少女が、頭を押さえる。


 ガルドと同じ。


 ナイルと同じ。


「……やめて……」


 小さく言う。


 今までで一番、人間らしい声で。


「……怖い」


 その一言が、すべてを変えた。


 空気が変わる。


 “意味”が変わる。


「……そうか」


 俺は言う。


 静かに。


「怖いよな」


 共感する。


 否定しない。


 そのまま受け取る。


 少女の目に、涙が滲む。


 ほんのわずかに。


「……でも」


 言葉を続ける。


「ここで止まったら、ずっと分からないままだ」


「……」


「お前が、誰か」


 その言葉が、深く刺さる。


 少女の体が、大きく揺れる。


「……っ!」


 その瞬間。


 背後の“根本”が、反応する。


 圧が増す。


 明らかに。


 “補正”が来る。


「……来るぞ」


 俺は言う。


 時間がない。


「……一緒にやるぞ」


 少女を見る。


 まっすぐに。


「……は?」


 間の抜けた声。


 予想していなかった反応。


「お前と」


 言い切る。


「一緒に、言う」


 その意味を理解した瞬間。


 少女の目が、大きく見開かれる。


「……無理です」


 即答。


 だが、その声は震えている。


「……無理じゃない」


「私は……」


「お前は、“揺れる”」


 遮る。


「だから届く」


 その言葉で、少女の呼吸が止まる。


「……一緒にやる」


 もう一度。


 今度は、少しだけ優しく。


「……っ」


 少女が、目を閉じる。


 一瞬。


 そして――


「……分からないですよ」


 小さく言う。


「どうなるか」


「俺も分からない」


 即答。


「でも、やる」


 その言葉に、少女がわずかに笑う。


 ほんの一瞬。


「……変な人ですね」


「よく言われる」


 軽く返す。


 少しだけ、空気が緩む。


 その瞬間。


 “来る”。


 圧が、最大になる。


「……今だ」


 俺は言う。


 少女を見る。


 頷く。


 わずかに。


 それだけで十分だった。


「……お前は誰だ」


 同時に、言葉を出す。


 俺と少女。


 重ねる。


「……私は……」


 少女の声。


 震えている。


 でも、止まらない。


「……私は……」


 “根本”が反応する。


 強く。


 補正が走る。


 だが――


 止まらない。


「……名前を言え!」


 俺が重ねる。


 さらに強く。


「……私は……」


 少女の声が、形になる。


 あと一歩。


 届く。


 その瞬間。


 “根本”が、大きく脈打った。


 今までで最大の反応。


 そして――


 少女の目が、完全に“変わる”。


「……排除」


 その一言で。


 すべてが、逆流した。


     ◇

 少女と共闘する形に入りました。

 ですが、あと一歩で届きそうなところで阻まれています。


 この関係がどうなるのか、次で大きく動きます。

 続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。


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