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追放された無能と呼ばれた俺、言葉で仲間を取り戻す  作者: 紅蓮シュウ


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第17話 届かない言葉

 “上位個体”。


 ミレイアのその一言で、空気の重さが変わった。


 さっきまでの“人影”とは違う。


 明確に、“何か”がある。


 形がある。


 圧がある。


 そして――


 “意味が強すぎる”。


「……っ」


 思わず、息が詰まる。


 近づいてくるだけで、頭が軋む。


「……来るぞ」


 レグナスが低く言う。


 剣を構える。


 だが、その構えがわずかに硬い。


 今までと違うと、全員が分かっている。


「おい、あれ……」


 フェルナンの声が掠れる。


「さっきのと同じ方法でいけるのか?」


 答えは――


「……分からない」


 俺は正直に言う。


 でも、それしかない。


「……やるしかねえだろ」


 フェルナンが吐き捨てる。


 弓を構え直す。


「逃げ場ねえしな」


 その通りだった。


 背後には、まだ“空白”が広がっている。


 囲まれている。


「……アーヴェル」


 ミレイアが呼ぶ。


「さっきと同じでは……足りない可能性があります」


「……ああ」


 分かってる。


 “重ねる”だけじゃ、届かないかもしれない。


 相手が違う。


 深さが違う。


「……なら」


 言葉を選ぶ。


「もっと強くする」


「どうやってだ」


 レグナスが問う。


 短く。


「……分からない」


 またそれだ。


 でも――


「でも、“意味が強い”なら」


 視線を上位個体に向ける。


「こっちも強くするしかない」


 対抗する。


 同じ土俵で。


「……具体的には?」


 フェルナンが聞く。


 苛立ちを抑えながら。


「……“繋げる”」


 口に出して、初めて形になる。


「一人じゃなくて、全員でもなくて」


 考えながら言う。


「“関係”ごと使う」


「……関係?」


 ミレイアが繰り返す。


「そうだ」


 ナイルを見る。


 ガルドを見る。


「ただの言葉じゃなくて、“繋がり”ごと」


 あの時、効いたのはそれだ。


 名前。


 記憶。


 関係。


 それが重なった時、崩れた。


「……やってみる」


 レグナスが言う。


 即決だ。


「時間を稼ぐ。やれ」


 前に出る。


 完全に盾の動き。


 フェルナンも横に展開する。


「無理すんなよ」


「無理するしかねえだろ」


 軽口。


 だが、動きは鋭い。


     ◇


 上位個体が、近づく。


 ゆっくりと。


 だが、その一歩が重い。


 地面が沈むような錯覚。


「……っ」


 思考が乱れる。


 言葉がまとまらない。


「……アーヴェル!」


 ミレイアの声。


 意識を引き戻す。


「……大丈夫だ」


 自分に言い聞かせる。


 目の前を見る。


 あれは、“意味の塊”だ。


 なら――


「……お前」


 言葉を投げる。


 だが、反応はない。


 揺れもしない。


「……名前は」


 続ける。


 だが――


 何も起きない。


「……っ」


 駄目だ。


 浅い。


 届いていない。


「……ガルド!」


「……ああ!」


 すぐに反応する。


「こいつ、見覚えあるか!」

「……ない!」


 即答。


 つまり――


 繋がりがない。


 なら――


「……作る」


 言葉を変える。


 関係を“仮定する”。


「お前は――」


 その瞬間。


 上位個体が動いた。


 速い。


 今までと違う。


 レグナスが踏み込む。


 剣が交差する。


「……っ!」


 火花が散る。


 だが、押される。


「……重い!」


 レグナスが低く唸る。


 押し返される。


「くそっ!」


 フェルナンの矢が飛ぶ。


 だが、弾かれる。


 完全に。


「……やばいな、これ」


 フェルナンの声が震える。


「普通に強えぞ」


 ただの現象じゃない。


 戦闘能力もある。


「……時間がない!」


 ミレイアが叫ぶ。


「急いでください!」


 分かってる。


 でも――


 言葉が出てこない。


 繋がりがない。


 意味が足りない。


「……くそっ」


 焦る。


 初めてだ。


 ここまで、何も出てこないのは。


「……アーヴェル」


 小さな声。


 ナイルだ。


「……俺でいい」


「……何?」


「……使え」


 短い言葉。


 だが、その意味は分かる。


「……お前」


「……いいから」


 苦しそうに言う。


「……繋げろ」


 その瞬間、理解する。


「……分かった」


 頷く。


 決める。


「……お前は」


 上位個体を見る。


 そして――


「ナイルと同じ場所にいた」


 仮定を、叩き込む。


 無理やり。


「同じ任務をしてた」


 さらに重ねる。


「同じものを見てた」


 意味を作る。


 関係を、捏造する。


「……ナイル!」


 叫ぶ。


「こいつ、知ってるよな!」


「……ああ!」


 ナイルが応じる。


 強く。


「……知ってる!」


 嘘だ。


 でも、意味はある。


 関係が、繋がる。


「……お前は誰だ!」


 最後に問いを叩き込む。


 その瞬間。


 上位個体が、揺れた。


 初めて。


 明確に。


「……っ!」


 ミレイアが息を呑む。


「効いてる!」


 レグナスが押し返す。


 わずかに。


「……もう一回だ!」


 俺が叫ぶ。


 全員で重ねる。


「名前を言え!」


「……名前!」


「……言え!」


 声が重なる。


 意味が、積み重なる。


 そして――


「……ル……」


 音が出る。


 かすかに。


 でも、確かに。


「……ルク……」


 その瞬間。


 上位個体の動きが止まる。


 完全に。


「……っ」


 息を呑む。


 いける。


 届く。


 だが――


 次の瞬間。


 空気が、歪んだ。


 少女の声が、背後から響く。


「……そこまでにしておきましょうか」


 軽い声。


 だが――


 その一言で。


 上位個体の揺れが、止まる。


 完全に。


「……え」


 思わず声が出る。


「……補正、完了」


 少女が言う。


 楽しそうに。


 そして――


 上位個体の目が、完全に“命令”に染まる。


「……排除」


 その一言で、全部がリセットされた。


     ◇

 「届きかけた」のに、止められました。

 敵はただの存在ではなく、“介入してくる側”です。


 ここから一気に難易度が上がります。

 続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。


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