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追放された無能と呼ばれた俺、言葉で仲間を取り戻す  作者: 紅蓮シュウ


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第15話 通じない言葉

 ――排除。


 少女の口から出たその言葉は、あまりにも軽かった。


 感情がない。


 迷いもない。


 ただ、“処理”として出てきた音だった。


「……ちっ」


 フェルナンが舌打ちする。


 矢はすでに放たれていた。


 一直線に、少女へ。


 だが――


「危ないですよ?」


 少女は、ほんの少しだけ体を傾けた。


 それだけで、矢は外れる。


 かすりもしない。


「……は?」


 フェルナンが間の抜けた声を出す。


 今のは、偶然じゃない。


 見えていた。


 完全に。


「……速い」


 レグナスが低く言う。


 すでに剣を抜いている。


 距離を詰める。


 一瞬。


 踏み込みと同時に、刃が振るわれる。


 最短距離の一撃。


 だが――


「だから、やめた方がいいって言ったのに」


 少女は笑ったまま、後ろに滑るように下がる。


 足音がない。


 まるで、地面に触れていないみたいに。


「……っ!」


 レグナスがさらに追う。


 だが、距離は縮まらない。


 同じ速さで離れていく。


「……おい、あいつ」


 フェルナンが低く言う。


「人間か?」


「見た目はな」


 レグナスが答える。


 短く。


 だが、その目は完全に“敵”を見ている。


 少女は、楽しそうにこちらを見ている。


「もう少し、観察させてほしかったんですけど」


 軽い口調。


 だが、その言葉の内容は重い。


「……十分見ただろ」


 俺は言う。


 一歩前に出る。


 少女を見る。


 まっすぐに。


「お前、さっき“揺れた”な」


 その言葉で、空気が止まる。


 ほんの一瞬だけ。


 少女の笑顔が、固まる。


「……何のことですか?」


 すぐに戻る。


 だが、遅かった。


「……やっぱりか」


 俺は確信する。


 こいつは、“完全”じゃない。


「お前、戻れる」


 言い切る。


 少女の目が、細くなる。


 ほんのわずかに。


「……さっきも言いましたよね」


 声が、少しだけ低くなる。


「やめた方がいいって」


「なんでだ」


 俺は踏み込む。


 距離を詰める。


 さっきと同じように。


「戻れるなら、戻ればいい」


「……」


 少女は、何も言わない。


 だが、その目が揺れている。


 ほんの少し。


「……お前、名前は」


 問いかける。


 核心に触れる。


「……必要ありません」


 即答。


 だが、その答えが――おかしい。


「あるだろ」


 俺は言う。


「人間なら」


 少女の表情が、また崩れる。


 一瞬だけ。


 だが、確実に。


「……人間」


 小さく呟く。


 その声は、さっきと違う。


 軽くない。


「……私は、管理局の――」


「違う」


 遮る。


 強く。


「役割じゃない」


 言葉をぶつける。


「お前の名前を言え」


 空気が震える。


 少女の体が、わずかに揺れる。


「……っ」


 頭を押さえる。


 ガルドやナイルと同じ反応。


「来るぞ!」


 レグナスが叫ぶ。


 だが、俺は止まらない。


「……お前、誰だ」


 もう一度。


 同じ問い。


 だが、さっきより深く。


「……私は……」


 言葉が途切れる。


 続かない。


 命令と、何かがぶつかっている。


「……っ」


 苦しそうに、顔を歪める。


 だが――


「……排除対象、確認」


 戻る。


 完全に。


 さっきまでの揺れが、消える。


「……駄目か」


 思わず呟く。


 ナイルとは違う。


 深さが違う。


「……アーヴェル!」


 レグナスの声。


 次の瞬間。


 少女が動いた。


 消えるように。


 そして――


 俺の目の前に現れる。


「――遅いですよ」


 距離ゼロ。


 反応できない。


 手が伸びる。


 触れる寸前。


「っ!」


 体が後ろに引かれる。


 レグナスだ。


 強引に引き戻される。


 その瞬間、少女の手が空を切る。


「……危ねえだろうが!」


 フェルナンが叫ぶ。


 矢を連射する。


 だが、当たらない。


 全部、避けられる。


「……やっぱり」


 少女が呟く。


 少しだけ残念そうに。


「まだ足りませんね」


「何がだ」


 レグナスが問う。


 低く。


「“言葉の重さ”が」


 その言葉に、引っかかる。


 重さ。


 さっきも、似たようなことを感じた。


「……軽いんですよ」


 少女は言う。


 俺を見て。


「あなたの言葉」


 その一言が、刺さる。


「……軽い?」


「はい」


 あっさりと。


「情報としては正しいです。でも」


 少しだけ、首を傾げる。


「意味が足りない」


 その言葉で、理解する。


 ナイルの時。


 ガルドがいた。


 記憶があった。


 繋がりがあった。


 でも、今は――


「……一人じゃ、足りない」


 思わず呟く。


「その通りです」


 少女は微笑む。


 さっきと同じ笑顔。


 でも、少しだけ違う。


「だから、無理なんですよ」


 その言葉は、断定だった。


 可能性を否定する言葉。


「……そうか」


 俺は言う。


 短く。


 少女が、一瞬だけ目を細める。


「……なら」


 言葉を続ける。


「一人じゃなきゃいい」


 その瞬間。


 空気が変わる。


 レグナスが、わずかに動く。


 フェルナンが、息を呑む。


 ミレイアが、目を見開く。


 ガルドとナイルが、こちらを見る。


「……全員でやる」


 その言葉で、何かが繋がる。


 まだ形にならない。


 でも――


 方向は見えた。


「……面白いですね」


 少女が笑う。


 本当に、楽しそうに。


「どこまでできるか、見てみましょうか」


 その言葉と同時に。


 森の奥の“空白”が、一斉に動いた。


 数が増える。


 圧が上がる。


 そして――


 少女の背後に、同じような“人影”が現れる。


 複数。


「……試験、継続です」


 軽い声。


 だが、その内容は――最悪だった。


     ◇

 ヒロイン(?)との戦いが始まりました。

 そして、「一人では足りない」という新しい条件が見えてきました。


 ここから一気に展開が加速していきます。

 続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。


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