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追放された無能と呼ばれた俺、言葉で仲間を取り戻す  作者: 紅蓮シュウ


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第14話 嘘をつく言葉

 ――それ以上は、やめておいた方がいいですよ。


 森のざわめきの中で、その声だけがやけに軽かった。


 場違いなくらいに。


 全員が振り向く。


 そこに立っていたのは、一人の少女だった。


 年は俺たちより少し下くらいか。


 整った顔立ち。


 だが、その表情は――


 やけに、明るい。


「……誰だ」


 レグナスが即座に問う。


 剣はもう半分抜かれている。


 当然だ。


 この状況で、こんな場所に立っている時点で、普通じゃない。


「えー、そんなに警戒しなくてもいいじゃないですか」


 少女は肩をすくめる。


 声も軽い。


 空気に合っていない。


「私は敵じゃないですよ?」


「信用できる要素が一つもないな」


 フェルナンが即答する。


 弓はすでに引き絞られている。


「まあ、そう言われると思ってました」


 少女は笑う。


 楽しそうに。


 だが、その笑顔が――どこか薄い。


「……あの人たち、助けたんですね」


 少女の視線が、ガルドとナイルに向く。


 興味深そうに。


「すごいなあ」


 軽い言い方。


 だが、その言葉に、妙な引っかかりがあった。


「……何が言いたい」


 俺は一歩前に出る。


 少女を見る。


 まっすぐに。


「いや、純粋に感心してるだけですよ?」


 少女は言う。


「普通、そこまで行ったら戻らないので」


 その言葉で、空気が変わる。


 レグナスの剣が、わずかに上がる。


 フェルナンの指が、弦をさらに引く。


「……知ってるのか」


 俺は聞く。


「何を?」


「“空白”のことだ」


 少女は、少しだけ目を細めた。


 ほんの一瞬。


 そして、すぐに笑顔に戻る。


「まあ、多少は」


 軽い答え。


 だが、その中に含まれているものは軽くない。


「……関係者か」


 レグナスが言う。


「ええ、まあ」


 少女はあっさりと頷いた。


「管理局の人間なので」


 その言葉に、空気が一気に張り詰める。


 フェルナンが舌打ちする。


「やっぱりかよ」


「まあまあ、そんな怖い顔しないでくださいよ」


 少女は手をひらひらと振る。


「今日は捕まえに来たわけじゃないので」


「“今日は”?」


 レグナスの声が低くなる。


「ええ」


 少女は笑う。


「状況確認だけです」


 軽い。


 軽すぎる。


 この場に対して。


「……何を確認する」


 俺は聞く。


 少女は、少しだけ首を傾げる。


「あなたたちが、どこまでできるのか」


 その言葉は、あまりにも自然だった。


 まるで――


 試験でもしているみたいに。


「……試してるのか」


「そんな感じです」


 あっさりと肯定する。


 悪びれもなく。


 フェルナンが苛立ったように一歩踏み出す。


「ふざけんなよ」


「ふざけてませんよ?」


 少女は首を傾げる。


 本気で分かっていないように。


「だって、必要なことですし」


「何がだ」


 レグナスが問う。


 短く。


 鋭く。


「“正常性の維持”です」


 その言葉に、背筋が冷える。


 さっき見た“意味”。


 修復。


 整合。


 排除。


「……あれは、お前たちがやってるのか」


 俺は聞く。


 少女は、少しだけ考える素振りを見せる。


 だが、すぐに答える。


「正確には、“運用してる”ですね」


 曖昧な言い方。


 だが、否定はしない。


「……人を、ああするのか」


 フェルナンが低く言う。


 怒りを抑えた声で。


「人?」


 少女が首を傾げる。


 本当に不思議そうに。


「あれは“処理対象”ですよ?」


 その一言で、空気が凍る。


 言葉の意味が、違う。


 完全に。


「……違うだろ」


 俺は言う。


 自然と、声が出た。


「あれは人間だ」


「元は、ですね」


 少女はあっさりと返す。


「でも、今は違います」


 その言い方に、温度がない。


 まるで、壊れた道具の話をしているみたいに。


「……なんで、そんな言い方ができる」


 思わず聞いていた。


 理解できなかったから。


 少女は、少しだけ考える。


 そして――


「だって、そういうものなので」


 答えた。


 当然のように。


 疑問すら持っていないように。


 その瞬間。


 はっきりと分かった。


「……こいつ」


 フェルナンが小さく呟く。


「やばいな」


 同感だった。


 目の前にいるのは、人間だ。


 見た目も、言葉も。


 でも――


 “通じない”。


「……アーヴェル」


 ミレイアが小さく言う。


「この人……」


「……ああ」


 俺も、気づいていた。


 少女を見る。


 まっすぐに。


「……お前」


 口に出す。


「自分が何言ってるか、分かってるか」


 問いかける。


 試すように。


 少女は、一瞬だけ動きを止めた。


 ほんの一瞬。


 そして――


「え?」


 きょとんとした顔をする。


 本当に、分からないみたいに。


「普通のことですよ?」


 その答えで、確信する。


「……違うな」


 俺は言う。


「お前、ズレてる」


 その言葉が、空気を変えた。


 少女の表情が、一瞬だけ固まる。


 本当に、一瞬だけ。


 だが――


 見えた。


 “揺れ”。


「……面白いこと言いますね」


 すぐに笑顔に戻る。


 だが、さっきと同じじゃない。


 わずかに、歪んでいる。


「普通に話してるだけですよ?」


「違う」


 俺は言い切る。


「お前、“意味をずらされてる”」


 その瞬間。


 少女の目が、わずかに細くなる。


「……」


 初めて、言葉が止まった。


 ほんの一拍。


 そして――


「……それ以上は、やめておいた方がいいですよ」


 最初と同じ言葉。


 だが、今度は少し違う。


 警告に近い。


「なんでだ」


 俺は踏み込む。


「戻れるかもしれないだろ」


 その言葉に、少女の表情が崩れた。


 ほんのわずかに。


 笑顔の隙間から。


 何かが見える。


「……戻る?」


 小さく呟く。


 その声は、さっきまでと違った。


 軽くない。


「……そんなの」


 言いかけて、止まる。


 頭を押さえる。


「……っ」


 苦しそうに。


 ガルドと同じ反応。


「来るぞ!」


 レグナスが叫ぶ。


 空気が歪む。


 森の奥の“空白”が、一斉に反応する。


 そして――


 少女の目が、変わる。


「……排除」


 その一言で、全部が分かる。


 同じだ。


 この子も。


「……やっぱりか」


 フェルナンが低く言う。


 弓を引く。


「どうする」


 レグナスが問う。


 短く。


 だが、その中にすべてが含まれている。


 助けるか。


 止めるか。


 選べ。


     ◇

 ヒロイン(?)が登場しましたが、普通ではなさそうです。

 そして、また選択を迫られる状況になりました。


 ここから関係性が大きく動きます。

 続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。


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