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PAST 新設部隊 特務3課

「朝霧君は特務3課に配属されることになる。不明点などは白瀬君に聞くと良いだろう」


神谷はそう告げると時計を気にしながら足早に部屋を出ていった。


「火花!大丈夫だった??怪我は?」

「怪我ならちゃんと処置してもらったので大丈夫です。海月さんは大丈夫でした?」

「大丈夫なわけないでしょ!私は報告書を書くのが1番嫌いなの!あぁ、また理子さんに怒られる…」


グロッキーになった海月は表情をぱっと明るくして続けた。


「でも今日は良い日だよ!火花とクラスメイトになって同僚になったからね!」


火花は驚いていた。他人との関わりを避けてきたはずなのにたった1日でここまで距離が縮まるとは。


「そう言えば海月さんも特務三課なんですよね?どんなところなんですか?」


海月から向けられた笑顔があまりに眩しかったので目を逸らすように話を逸らした。


「う〜ん、一言で言うなら変人集団って感じ?」


詳しく話を聞いてみるとPASTは隊員に検査を実施し特殊装備の適性があった人間を特務課に配属する。その他の隊員は一般隊員として配属する。また三課は特務課の中でも年齢の若い隊員などを集めた実験的なチームらしい。


説明を受けながら歩いてあると先を歩いていた海月が立ち止まって振り返った。


「ここが三課の部屋だよ!ちょっと汚いけど気にしないで!」


大きく3と書かれている鉄製のスライドドアに手をかざすと低い駆動音と共にドアが開いた。


「みんなー!新しい友達連れてきたよー!」


部屋に入って火花は思った。

——これのどこが"ちょっと"汚い?

書類が崩れそうなほど積み上がった机。床に無造作に転がっているエナジードリンクの空き缶の山

どう生活したらこんなことになるんだ?と思いながら部屋を進んでいくと空き缶の山の中から声が聞こえた。


「やっほ〜火花君」

「…え?初めまして。なんで僕の名前を…」

「ボクも君の裁判を聞いてたんだ〜」


そう言いながら缶をかき分けるようにズルズルと這い出してきたのは火花より明らかに歳下の少女だった。

その小さな身体には大きすぎるパーカーを着ており薄い緑色のボブヘア。フレームの細い丸眼鏡の奥では興味深そうな視線が揺れている。


「ボクは天音レニ、特務三課のサポート担当だよ。よろしくね」

「レニちゃんはうちのハッカーなんだ!さっきも私が報告書を書いてる横でカメラの映像をハッキングしてたんだよ!」


驚いた。この子は役人や組織幹部、ORDOが関わるような重要機密にすらアクセスが可能なのか。


「いや〜あの朝霧博士の子供と同僚とはね〜

ボク尊敬してるんだ〜」

「尊敬??」

「うん、唯一ボクがハッキング出来なかったものだからさ。——ORDOは」

「!?」


レニはどうやらこの国の司法制度に真っ向勝負を仕掛けたらしい。それが事実なら立派な危険因子だろう。眼鏡の奥でレニは楽しそうにこちらを見ている。


「あ〜今ボクのこと危険因子だと思ったでしょ〜?」

「正直に言うと…はい、危険因子として処理されてもおかしくない。とは思いました」

「間違いじゃないよ、ボク一回捕まってるし」


レニは知的好奇心が行き過ぎるが余り危険因子として処理されたが能力の高さを買われて特務三課に採用されたそうだ。


「火花君、ボクより歳上なんだからタメ口でいいよ〜まぁボクは誰にでもタメ口だけどね〜」

「分かりました。では、そうしま…そうさせてもらうよ」

「そうそう、そっちの方が気楽でいいよね〜

じゃ、ボクはゲームしてくるからごゆっくり〜」


そう言うとレニは空き缶で作られた巣の中に帰っていった。


「他の人にも挨拶したいんだけどみんなどこか行ってるみたいだね…あ、そうだ」


海月は残念そうな表情を浮かべたあと、思い出したように指を鳴らす。


「火花の机はここだよ!私の隣!学校でもここでも隣だね!!」

指差された机は一般的なオフィスデスクだったが隣の机から書類が雪崩れ込んでいる。


「い、言っとくけど!私いつもは整理出来てるからね!今日はたまたま…」

「授業のテキストを無くしてたのを知っているので大丈夫です。掃除手伝いましょうか?」

「意地悪言わないでよー!でも…掃除は手伝って欲しいかも…」


本当にこの人は表情をコロコロと変える人だな、と火花が思っていると海月がこちらを見た。


「でも掃除手伝ってくれるなんて優しいね!ありがとう」

「いいえ、僕の机が汚れるのは困るので」

「やっぱり意地悪だ!」


そんなことを言いながら書類を提出先ごとに分けているとドアが開いた。30代ほどの女性がヒールの足音を鳴らしながら歩いてくる。


「海月ちゃん???まだ書類書き終わってないの???」

「理子さんの書類を書くスピードを基準にしないでください!」

「そんなこと言っても貴方は特別遅いじゃない…レニ!こんなにエナジードリンクを飲んでたら身体を壊すわよ!」

「知らな〜い、ボクはこれを飲まないとやってられないの〜」

「もう、この子達は本当に…あら?」

どうやらこちらに気づいたらしく海月から理子さんと呼ばれていた女性が近づいてきた。


「初めまして。朝霧君、私は片山理子。この特務三課の課長よ。よろしくね」


理子はオフィスカジュアルと言われるような緩めのパンツにジャケットを羽織っている。

髪の毛は鎖骨下あたりまで伸ばしたミディアムレングス。毛先には緩やかなカールがかかっていて上品さを演出している。


「初めまして、朝霧火花です。今日から特務三課でお世話になります。よろしくお願いします」

「君の話は聞いているわ。わからないことや不安なことはなんでも相談してちょうだい。」


そう言うと理子は部屋にいる二人を交互に観ながらゆっくり言った。


「この子達はやらなきゃいけないことがあるみたいね」


半泣きになりながら書類と格闘している海月。

渋々ゴミ袋に空き缶を詰めているレニを見ながら理子は続けた。


理子はジャケットのポケットから小さなものを取り出した。


「まずこれは返しておくわ」


理子から渡されたのは黒に緑のラインが走る六角形のメダル

【翠雷】のアンカーだった。


「君の言うように組織の技術班でも解析は不可能だったわ。一体どんな仕組みなのかしらね」

「それについては僕も知らなくて…」


アンカーを受け取った時に詳しい説明は聞いていない

両親はこれを「必ず火花を守ってくれる」とだけ言っていた。


「PASTの装備はORDOの判断で使用が許可されるのだけれど…君は自己判断でいいわ。こちらで制御出来ないしね」

「分かりました。慎重に判断します」

「そうして貰えると助かるわ、君が問題を起こすと私と神谷さんの首が飛ぶからね」


冗談めかして笑っている理子だが目の奥は笑っていない。これは慎重に使う必要がある…と考えていると


「そんな真剣に捉えないでちょうだい。子供はやんちゃをするもの。それを叱るのも代わりに叱られるのも大人の仕事なんだから」


ここの組織の大人はどこか保護者のようだった。海月とレニを叱っている様子はまさに母親だった。


「さて…」


理子が手を叩いた


「朝霧火花君。特務三課にようこそ」

「ようこそ!」

「海月?口より手を動かしなさい?」

「はい…」


レニはまだまだ片付かない缶の山から手を出して言った。


「これで正式に同僚だね〜よろしく〜」


海月は火花を見ながら笑顔で大きく手を振っている。


「火花!特務三課最初の任務は大掃除だよ!」


火花は苦笑いをしながら空き缶の山に手をつけた。

なんかこういう日常回?みたいなの楽しくて良いですね。まだ特務三課のメンバーは居ますので色々書けたらなーと思います!ではでは!

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