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ようこそ?公共異常対象沈静部隊へ

頭が痛い。肩も痛い、なんだか腰も痛い気がする

火花が目を覚まして最初に感じたのは身体が上げた悲鳴の声だった。

地下室での戦闘が終わった直後、PAST隊員に案内されどこかに連れてこられたらしい。——もっともあれを案内と呼んで良いのかは怪しいところだが

周りを見回してみると白い天井と壁。隣のモニターには火花のバイタルサインを示す波形が映し出されている。

先程の戦闘で負った傷は丁寧に消毒をされ手当をしてもらったのだろう。辺りには消毒液の匂いが漂っている。

火花が周りを観察して自分の置かれた状況を整理しようとしていると静かに扉が開いた。


「こんにちは、朝霞君」


部屋に入ってきたのはグレーのスーツに身を包んだ30代前半ほどに見える男性

穏やかな目で物腰の柔らかい印象を与える声をしている。


「体調はどうかな?ここのベッドは少し寝心地が悪いだろう、私もよく使わせてもらっているからね」

「ここはどこですか?それに何の目的で連れてきたんですか?海月さんは無事なんですか?まさか治療をするためだけにあんな手荒な真似はしないでしょう?」


畳み掛けるように質問をした火花に男は苦笑いをした。


「朝霧君、一度にそんなたくさん質問をされても一度に答えれる数は限りがあるんだよ。約束しよう。君の質問には全て答える。だから、少し着いてきてくれ」


男は火花に落ち着いてというジェスチャーをしながら着いてくるように促した。

歩きながら男が話しだす。


「私の名前は神谷孝一、神谷でも孝一でも好きなように呼んでもらって構わないよ。一応PASTのTOPという立場にある。まぁ国家組織だからお役人さん相手に頭が上がらないんだけどね」


神谷はそういうと自嘲気味に笑った。


「あぁ、そうだ。これは少し預からせて欲しいんだ」


火花が所持していた大切なもの

黒と緑の六角形のメダル

それは火花の装備【翠雷】だった。

いや、翠雷本体と言うわけではない。

【翠雷】や海月の【霜華踏(パ・ド・フロワ)】などの装備は普段は量子レベルに縮められて収納されている。

それを身体の正しい座標に呼び出すことで実体化している。

その座標を示し、装備を収納、呼び出しを可能にしているのが小型の【位相錨核(いそうびょうかく)】通称:アンカーと呼ばれるものだ。


「何せこちら君の装備を把握していなくてね、私は君を危険因子だとは思っていないが何かしらの確認は必要だろう?」


神谷が今言った理由ももちろん理由の一つだろう。

もちろん僕に装備を持たせたくないのもあるだろうが


「どうせ解析出来ませんよ。——それにもう取られていますし」

「…へぇ、そうなのかい。これはやはりご両親が?」

「両親のことは話したくありません」


神谷の言葉を遮るように言った。

明らかに警戒の色を浮かべた火花を見て神谷は申し訳なさそうな顔をした。


「今の発言は無神経だったね、すまない。君を不愉快にさせる意図なんて一つも無かった。ただ廊下が長いから何か話したくてね」


神谷はそれ以上何か質問をすることはなかった。


「到着だ。約束通り全ての質問に答えるよ。入ってくれ」


火花が案内されたのは中央に机と椅子が置かれている部屋だった。

——そして正面には大きなカメラ

明らかに異質な存在に落ち着くことが出来なかった。


神谷が椅子に腰掛け火花を座るように促す。


「まず質問に答える前にルールがある。」

「ルール?」

「簡単だよ、質問をしたら相手の質問に答えること。どちらか一方だけが答え続けるのはフェアじゃないからね」


神谷が人差し指を立てる。


「もちろん嘘は無しだ。答えたくなければそう言ってくれれば良い」

「分かりました。ですが僕はあんなに強引に突然連れて来られて状況が掴めていません。」

「そうだろうね、ではこうしよう。朝霧君は何も答えずに2問私に質問出来る」


お前たちのホームに連れてこられて上に装備も取られて、そのアドバンテージが質問2問??と火花は思ったがここでゴネて質問が減らされる真似はしたくないので従うことにした。


「分かりました。では——このカメラを通して誰が僕を観ているのですか?」


部屋に入った時から感じていた。これは撮影用のカメラではなく配信用のものだと。

誰かに監視されている、大勢の視線を向けられるそんな感覚だ。


「それが1問目だね、そのカメラの向こうにはPASTの幹部や国の役人がいる。それと…」

「それと?」

「——ORDOも君を見ている。」


火花は背筋を伸ばした。この国の善悪を判断している法の神そのものが僕を観ている。


「別にこれは裁判ではないから君を捌くわけじゃないよ、手でも振ってみたらどうだい?」


神谷の軽口は火花の緊張をほぐすためのものだったが特段効果は無かった。


「2つ目の質問は…海月さんは無事ですか?」


神谷は、ふっと笑った。


「君は本当に白瀬君が気になるみたいだね、大丈夫だよ。彼女は今頃報告書の山に埋もれているだろうね」


まるで子供を揶揄うように笑いながら神谷は答えた。

僕はそこまで子供じゃない。と思ったがその思考こそが子供ぽい上に神谷からすれば間違いなく子供なのだろう。


「では次からはこちらも質問をさせてもらおう。でも1つ目の質問は朝霧君から始めてもらって構わないよ」

「そうですか、では…僕をここに連れてきた理由はなんですか?」

「そうだね…簡潔に言うならば君は危険因子であるのかそうでないのかの判断だ。

あの場所で起こっていたことは君、白瀬君、そしてPUPPETEER(パペッティア)の3人しか知らないわけだ。そんな中君が戦闘をしていた。というのは危険因子の可能性を考慮せざるを得ないだろ?」


ある程度想像が付いていた答えが返ってきた。

確かに僕は危険因子と疑われない方がおかしい。

…しかも、このあとは自分も何か答えなければならない。


「ではこちらの質問にも答えてもらおう。君の装備【翠雷】はどうやって手に入れたものかな?」


やはり聞かれるかと火花は思った。

先程も翠雷について軽く探りを入れていた。

出来るだけ感情を抑え込んで抑揚をつけずに答えた。


「僕の両親がくれたものです」

「やはり、朝霧夫妻が君に残したものだったんだね」


火花の両親は夫婦共にエンジニアで科学者だった。

それはとても優秀な夫婦だったらしい。彼らは作り上げてしまったのだ。——ORDOという神を。

神を作り上げた代償は大きなものだった。

AIから人間の解放を求める武装テロ集団

[人類解放戦線]に狙われてしまった。

火花の6歳の誕生日のことだった。

幸せな家庭は一瞬で壊された。それから火花は他人とある程度距離を取るようにしてる。朝霧夫婦の子供である僕が関わる人間に危険がないとは言えないからだ。

それから火花は1人で過ごしてきた。両親が残した最後のプレゼントを守りながら。


「答えたくない質問をしてしまって申し訳ない、そして正直に答えてくれたことに感謝している。答えたくなければ答えないと言うことも出来たのになぜ正直に答えたのかい?」

「その質問はそちらからの質問1つとしてカウントします。神谷さんは丁寧に質問に答えてくれました。その誠意に応えただけです。

「朝霧君の方が私より一枚上手みたいだね」


これはやられた、というように頭をかきながら次の質問をするように神谷に促される。


「では僕からは一つだけです。このカメラの向こうの大人達は僕のことをどう思ってるのでしょうか?」


確かに神谷からは誠意を感じた。子供扱いはあれど決して軽んじることなく、人として同じ立場で話してくれている。しかしこのカメラの向こうの人間はどうなんだ?一方的に監視されて判断されていることに強い憤りを感じた。 


「そうだね、火花君の気持ちは分かるよ。私はカメラの向こう全員の気持ちはわからないけどやはり君のことを危険かどうかを確かめたいだけなんじゃないかな?」

「そうですか。では次の質問で最後にして頂けると助かります。あまり気分のいいものではないので」


頭では冷静に、大人しくすることがこの場では正しいと理解している。でもどうしても顔の見えない大人達が両親と自分を結びつけて評価してくることに良い感情を持つことができなかった。


「わかった、では最後にこれだけ答えてもらおうかな。」


神谷はゆっくりと、僕から目を離すことなく言った。


「——君は人類解放戦線と戦ってどんなことを感じたかい?」


すぐに答えは出なかった。何かを答えたら記録として残る。でも火花は話しながら自分の考えをまとめることを選んだ。


「僕は…正義感で戦った訳ではないです。」


出来るだけ自分の言葉で伝えるようにゆっくりと口を開いた。


「僕の家族を壊した人達にそれ以上もそれ以下もありません。でも…何か虚しい気持ちになります。この人達は手段は間違えていても主張は間違えてないのかもしれないって。」


神谷は静かに火花の言葉を聞いていた。


火花は言い終えたに瞬間まずいことを言ったなと思った。

だが嘘はついていない。


神谷は少しだけ微笑んで言った。

「そうか、正直な考えをありがとう。ここに座って少し待っていてくれないかい?」


神谷は穏やかに言ったが彼の無線からの通知は鳴り止まない。きっと僕の答えをカメラの向こうの大人は良しとしなかったのだろう。


「迷惑をかけてすみません…」


僕のせいで苦労をかけている。そう思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

しかし神谷はカメラの電源を落としながらこちらに笑いかけた。


「私がなんとかしよう。君を危険因子にはしない」


 神谷がいなくなった部屋で火花は天井を見上げた。もっと別の答えがあったかもしれない。穏便に反感を買わないような答えだってきっと…。

——でも後悔はしていなかった。

それは火花が自分で考えて言葉にした気持ちだからだ。

AIに選んでもらったのではない。

最後まで自分が出した答えだからだ。

足音が聞こえる。この革靴の足音は神谷のものだろう?


「お待たせしちゃったね。結論が出たよ」


火花が息を呑む。この後の言葉で人生が変わるからだ。


「ORDOは君を危険因子ではないと判断した。」


どうやら僕は犯罪者にはならないで済むらしい。

呆れたような顔で神谷は続けた。


「でも大人連中、特に役人さんはうるさくてね。君がORDO開発者の子どもだからORDOから裁かれない存在なのではないか?なんてね」

「あぁ、昔よく言われていたので、慣れてますよ」


両親が亡くなった後、火花は様々なことを調べられた。当然のことだ。このシステムは万人に平等でなければならない。


「だから私は提案した。

——PASTに君を迎え入れ保護・観察対象とする。勿論名目上だけどね」


神谷は笑っていたが組織の長としての威厳を感じさせる目で続けた。


「何かあった時の責任は私が取ろう」


その一言に神谷の信念全てが乗っているように感じた。

この人は僕を守るために全力を尽くしてくれたのか。

出会ってまだ2時間も経ってないのに。

火花は頭を下げた。


「分かりました。神谷さん…本当にご迷惑をおかけしました」


神谷は笑いながら続けた。


「いいんだよ、子供を守るのは大人の仕事だろう?」


先程まで嫌だった子供扱いもどこか心地よかった。


「それでね、君に組織や施設の案内を受けてもらいたいんだ。」

「分かりました。神谷さんが案内してくれるんですか?」

「私はこう見えても忙しくてね。いや、今忙しくなったが正しいかな?でも大丈夫、君にぴったりの案内役が居るから」

そう言って指差した扉の先には白いクラゲヘアーが揺れていた。



今回いっぱい会話を書きました。

2日経って初めてアクセス解析を観たのですが自分の想像よりたくさんの方が読んでくださっていてとても嬉しかったです。駄文をつらつらと書いていますが大目に見ていただけると幸いです。

あ!感想や反応とかも待ってます!貰ったことないので!

ではでは!

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