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三 かぼちゃ煮会の後日談
数日後の境内。
祭り騒ぎの余韻がまだ村に残っているころ、重三郎が腰を下ろして煙草をくゆらせていた。
ふと、木の枝から声が降ってきた。
「なぁんだ、やっぱりお前か。どこかで見たことある顔だと思ったんだ」
枝からひらりと飛び降りたのは、三十前後の青年に見える男。
羽団扇を肩に担ぎ、にやりと笑っている。
重三郎は煙を吐きながら首を傾げた。
「俺か? この辺りじゃ珍しくもない顔だろうに」
「いやいや、ここの宮司の兄貴だろ、お前。子どものころ、ちょっと見た覚えがあるんだよ」
「ふむ。そういう縁もあるか。俺は香月重三郎。怪奇小説で飯を食っている」
「はぁ……作家か。面白いな。じゃあ――さぶちゃん、って呼ぶわ」
「さぶちゃん?」
叫んだのは重三郎ではなく、銀狐だった。
「気安く呼ぶな! 天狗如きが!」
天狗は目をぱちくりさせ、頭をかいた。
「なんでお前が怒るんだよ、銀狐」
「さぶちゃんなどと――」
「いやいや、このおっさんを俺がどう呼んだっていいだろ」
重三郎は肩を揺らし、声を立てて笑った。
「ははは、まあいいじゃないか。さぶちゃんでもなんでも」
狐はなおも頬を膨らませている。
境内には、妙ににぎやかな空気が流れていた。




