第六章〜身元確認
風邪治ってきました。捜査が進んで行きます。事件の全容はどうなっているのでしょうか?お飲みになっていただけましたら幸いです。
ところで──。被害者たちの身元確認は例の会員名簿の件とは別にしなければならなかった。それは警部補も同じ考えのようで、部下の警官たちにそれを命じていた。可能な限りのことは、現場でしなければならなかった。
鑑識係の者たちが、原状を写真に残して保存するために、何十回もカメラのシャッターボタンを押し、フラッシュを焚いていた。俺はその作業を邪魔しないように動き回らなければならなかった。
同時進行で、所持品などから被害者の身元を確認する作業にも入っていた。
出身地、居住地、年齢、職業、個人情報は集められるだけ集めることになっていた。
──遠点免許証やパスポートなど見つかればよいのだが。こんな会合に参加するときに、それらのものを携帯したいと思うものなのかどうかは知らないが。
捜査員の1人が、ベッドから転げ落ちたような状態で床に伸びているガイシャの物と思われるハンドバッグから何かを取り出した。スマートフォンのようだ。
「ハンドバッグはこの被害者の手に握られていました。おそらく、この御婦人の持ち物だったのに違いないでしょう」
言いながらら、スマホに付着した指紋を採取する作業に移っていた。スマートフォンには、ロックが掛かっている可能性が高いが、本庁内にある科学警察研究所に依頼すればそれは、簡単に解除されるであろう。そして、ガイシャの個人情報も洗い出せる筈だ。
それを予想して犯人がこのバッグの中身を持ち去らなかったとするならば、犯人はあまり頭の回らない方なのか、余程慌てていたのか、のどちらかに違いない。
次々に被害者の所持品が調べられ、彼女らの身元が分かりかけてきた。わかったなら、いずれ被害者の家族ら関係者にも連絡を取り、この惨事を報告するなり事情を訊くなりしなければならない。
しかし、やはりというか、被害者いずれも属性は共通しておらず、この会合の全貌を知るにはいしかヒント不足なようどった。受信地も居住地にも、就業先にも、年齢にもなんらの共通点は見いだせそうになく思えた。
強いて言うならば被害者全員が既婚者であるという点だけが共通しているのだった。
「ふむ。皆、伴侶がありながらこのような倶楽部に出入りしていたというわけですな」
不謹慎にも警部補が軽く言った。
でも、確かにそのようだ。
所持品チェックは、だいたいおわった。所持品は、番号の書かれたラベルを張られ、慎重にビニールのなかに仕舞われていった。
お読みになっていただきまして誠にありがとうございました。