人工翼
人工翼で飛べる時代がきた。
操作の難しさは自転車くらいで、試験場で簡単なテストに合格すれば、六歳から人工翼の免許が取れる。
でも僕は操縦が下手で、まともに浮くことすらできなくて、十八歳になっても免許が取れなかった。
天気が悪い日は空を飛べないだろうと思うかもしれないが、数十年間雨も雪も霙も降っていないから、特には問題にならなかった。
作物や植物は人工雨で育てているから、つまり僕以外の人にはなにも不利益はなかった。
人工翼が主流になってから、歩道の幅は狭くなった。僕は、人がすれ違うことも困難な細い道を慎重に歩く。
みんなが飛べて僕だけが飛べない翼なら、いっそのことそんなものはない方がよかった。
でも、みんなが普通に飛んでいる時代に、今更なにを言っても仕方がなかった。
僕は、頭上を飛びながら「おはよー」と朝の挨拶を交わす同級生の姿を見上げながら、小さい頃に観た『のび太翼の勇者たち』というドラえもんの映画を思い出していた。
飛べない鳥人の少年、グースケのことを考えていた。