スキル『千変万化』
「前方にゴブリン4体確認、弓使うの面倒だから切り込むぞ」
「クロお前雑になってるぞ、安全マージンはどこに行った??」
「暴れたくなった、それだけだ。ウェスタとラウルは1体ずつ頼んだ」
「あいよ」
「了解した」
2本ある短剣を抜いてゴブリンに近づく。1本目を1体の心臓に刺す。するともう1体が背中に向けて飛びかかってくる。それを視界の端で確認し、2本目でゴブリンの持つナイフを受け流す。流れた体を蹴り飛ばし、心臓に刺してたナイフを抜いて刺す。
「っとこれで終わりか。味気ないな」
「急に理性消し飛ばして近距離戦やり始めてるからミーシャちゃんが固まってるぞ」
「クロさん近距離戦も上手なんですね。弓も私より上手そうでしたし・・・」
「まあ戦闘慣れしてるしラウルと組むまでソロだったからな」
そんな会話をしていると珍しくウェスタが声を上げる。
「なあ・・・何か聞こえないか?」
「・・・っ!?ゴブリン狩りは中止だ!出口に向かうから付いてこい!」
「んあ?どしたよクロ・・・ってあれは・・・」
「羊飼いです!」
音で気づけなかったミーシャとラウルが視界内に羊飼いを捉えると、俺が走り始めた方向に向かって走ってくる。
(羊飼いが来たのは本道から、今いるのは横道。羊飼いは奥に行ってから回り道して戻ってくるはずだからそれまでに出たいな・・・)
「おいクロ!前にバットとゴブリン、コボルトが複数いるぞ!」
「はぐれたのか・・・とりあえずミーシャはバットを主に狙ってくれ、ウェスタとラウルはミーシャの射線に被らないようにバットから離れたモンスターを狩れ。俺は遊撃する」
各々が各役割を果たすために動き始める。俺はミーシャが狙っている方向を確認し、それとは逆のバットを狙い撃つ。あわせてゴブリンも減らしていく。ある程度減らしたのを確認し、俺は壁を蹴って広場に出る。すると壁を蹴るのを見ていたモンスターはもちろん後方につっかえていたモンスターもこちらへ来る。
「みんな!聞こえるか!」
「聞こえてるぞー!てか大丈夫かお前ー!」
「手短に言うぞ!今こっちにモンスターを引き付けてるからお前らは出口に向かう通路に入れ!すぐ合流する!」
「あいよ!」
ラウルが駆けていくのが見える・・・がミーシャが動かない。
「っ!?ウェスタ!ミーシャを運べ!」
「クロさん!一人じゃ無理ですよ!クロさん!」
ミーシャの声が遠ざかっていく。ウェスタが頑張ってくれたかな。というか
(別に問題ないんだよなあ・・・やろうと思えばやれるしそもそも受け流して距離取って時間稼いでるだけだし・・・)
攻撃、主にコボルトの剣撃を受け流しながらラウルたちが出口に続く道に入ったのを確認する。それに合わせて身体強化魔法をかけて俺も道に入る。そして通路の入口に小麦粉を撒く。そしてそこにファイヤーボールを打ち粉塵爆発を起こす。粉も少ないし小規模だが足止め程度にはなるだろう。小麦粉?常備してますけども何か?
「ただいま」
「おう」
「切り抜けてきたのか凄いな。てかミーシャが運んだ俺を凄い睨んでくるんだがなんとかしてくれないか」
「クロさんは馬鹿です!あんなにたくさんのモンスターの中に入っていくなんて・・・クロさんが死んじゃうんじゃないかって・・・ぐすっ・・・」
「おい泣くなよ。こうやって帰ってきただろ?」
よくもまあ初対面の人間のために泣けるな・・・良い子だ。
「でも私は怖かったです!クロさんに何かあったらって・・・」
(ミーシャは優しいな・・・それに比べて・・・)
ちらりとラウルのほうを見てみるとこいつはニヤニヤしていた。
「おいラウル、言いたいことがあったら言ってみろ。遺言くらいは聞いてやる」
「ちょっと待て!?俺はお前なら大丈夫っていう信頼の元普通にしているのであって心配じゃなかったわけじゃないぞ!」
「そのニヤニヤした顔はなんだ焼くぞ」
「いやー?可愛い女の子にあんなこと言われて羨ましいなーって思っただけだよ」
「お前も命かければ心配してもらえるかもしれないぞ」
「それはクロの役目だから遠慮しとく」
「俺の命軽いな」
「どうせ生きてる」
「それはそう」
そんなくだらない会話をしているとミーシャも落ち着いたらしい。ただ・・・
「モンスター、近づいてくるな」
「ウェスタそういうのは言わないでくれよ。考えたくなかった」
「すまん」
モンスターがまたもや近づいてくる。
「とりあえず迎撃しながら出口に向かう!牽制だけでいい!足は止めるな!」
押し寄せるモンスターの軍勢を牽制しながら出口を目指す。時折振り向いて飛行型モンスターのエコーバットと遠くのゴブリンを弓矢で射貫く、近距離まで接近してきたら短剣で処理をするの繰り返し。
「全然減らないな」
「この数どうやって集めてきたあの羊飼い!」
「はあはあ・・ウェスタもラウルも余裕だな・・軽口を叩けるとは・・・」
「まあお前が数減らしてくれるからな、楽させてもらってる」
「私は走るので精一杯です・・はあはあ・・・すみません」
「問題ないよ、そしてラウルてめえ」
ケロッと言うラウルを殴りたくなるがそんな暇はない。次々とモンスターがやってくる。
「おいどうするんだクロ!モンスターが多すぎるぞ!」
想像以上のモンスターの数に、先ほどまで余裕のあったラウルの表情が消える。
「すぐそこの広場に出たら迎撃するぞ!」
「なんか策があるのか!?」
「打開策ならある」
「マジか!?頼んだぜクロの字!」
広場に出る直前、結界魔法を張り、進行を止める。5秒もあれば破られるだろう。
「ミーシャ、ウェスタ、ついでにラウル。俺から離れるなよ」
俺は3人を下がらせ、魔法を唱える。魔法名を唱えることによって効果が上がる。
『千変万化 豪剣第1種 裂怨』
「ウェスタ・・・こんな魔法聞いたことありますか?」
「いや・・・ないな」
後ろで2人が話してるのが聞こえる。
「まあ固有魔法だからな」
「クロさん何でもありですね・・・」
「その長剣はこれのために持っているのか?」
「いや普通に剣としても使うぞ。固有魔法は正直まぐれで手に入れただけ・・・っだ!」
青黒く染まった剣を振るうと、斬撃がモンスターの群れを切り刻んでいく。羊飼いの姿は見えない。
「よし、角集めて帰ろう」
「・・・」
「全員真っ二つだなー流石クロ」
「・・・凄いな」
「おうよ」
固まってるミーシャを横目に角を集める。
「集まったな、よし帰ろう疲れた」
「えっあっはい・・・」
「ミーシャちゃん、こいつと組んでくなら今のうちに慣れときな。こいつぶっ壊れだから」
「おいラウル煮込むぞてめえ。俺は普通だ」
「普通ではないかと・・・」
ウェスタがミーシャに同意するように首を縦に振る。俺って普通じゃないように見えるのかぁ・・・とか考えながら出口に向かう。
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