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大人の話 最終話


「なあ?処刑された俺は死んでるのか?」


「お答えします」


レスラーマスクを被った男が言う。


「あなたの大事な人がもし生きていることに不安を感じていたり未来に希望が見えないときこう言ってあげてください」


レスラーマスクの男が見つめる。


「過去を受け入れなさい」


レスラーマスクの男が続ける。


「未来に夢みがちですが本当は未来なんて曖昧なものなのです。そもそも未来などはじめから存在しないのです。それが生きるということです。もう一度言います」


レスラーマスクの男が見つめる。


「過去を受け入れなさい」


矢代はゆっくり頷いた。


レスラーマスクの男は扉を開けた。


「あの人達は・・・」


群衆。


「もう二度と人を傷つけたり世界を傷つけることはしませんか?自分を傷つけることも」


「ここは・・・」


「痛みが消えてる・・・」


「体も動くぞ」


まるで自分の体ではないかのように群衆は自分の体を見つめている。


「痛い思いをしてはじめて人は生きていることに感謝できる」   


レスラーマスクの男は続ける。


「最新技術です。私はあなた達を許します」


化け物ちゃん、金ちゃん、51、KP、ただのつまらない男、ケタオ、ミズキ、翔、シメジ、太郎、加奈、早紀、穂香、清・・・。


過去に処刑された人達が立ち尽くしている。


そんな群衆の中で一人だけ倒れている男に視線が集まる。


「残念ですがさだめの前には最新技術も通用しなかったようです。死ぬ人間はそういうさだめ。受け入れるしかない」


女は寂しそうな顔をして口を開く。


「私はここに残ります。彼の側にいてあげたいから・・・」


穂香は倒れている男にゆっくり近づく。


レスラーマスクの男は小さく口角を上げる。


「それでは他の皆様は今まで通りの生活を」


「・・・俺たち死んでなかったの?」


「良かったー!酒飲みたかってんだよねー」


「シャンパンないの?シャンパン。別に生きたくもないんだけど。私」


「長い夢を見ていた感じだ。ケタケタ」


「ところでマスクを被ったあんたの名前は?」


沈黙。


「私ですか?」


レスラーマスクの男はまた口角を上げる。


穂香は倒れている男を優しく抱きしめる。


「皆様命を大切にしてください。決して悲観することはない。人はいつか死ぬ。それまで待てばいいだけです」


扉から光が差し込んだ。 


殺されたはずの人達は太陽の光を浴びた。


一人、また一人と外に消えていく。


男は天を見上げる。


「誰かにとっては悪人でも、誰かにとっては必要な人」


その男の周りには誰も居ない。


完璧な孤独。


男は少しだけ微笑んだ。


人生は虚しいものである。


「私の名前なんてどうでもいいじゃないですか。名前なんて」


               


                  END








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