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編集長の話


名生さんは同窓会でゲームマスターであるアラックスに殺害された。いや、正確には店長にだ。


そのアラックスも名生さんの顔に整形したのち、店長に射殺される。


店長ってのは何者なんだろうか。私にはわからない。


「矢代さん。もう鹿原家の取材はしなくていいみたいですよ」


里村はおもむろに眉をしかめた。珍しくデスクに張り付いてサクラさんのレポートを確認していた私の手を止める。


「編集長が退社したみたいです」


「沖田編集長が?」


寝耳に水だった。 


「だからこの仕事からは手を引くようにって」


「そんな・・・」


「せっかく出世のチャンスだったんだけどなー。まあ、真面目にコツコツやりますわ」


里村は不貞腐れた表情で首をぐるぐるっと回した。


「矢代さん。僕の本も当分出せそうにありません」


落胆して別の仕事に取り掛かる。切り替えの早いその性格が羨ましい反前、アラックスのよう冷酷さを感じた。


そんなことより沖田編集長がどうして定年間近で退社を決めたのかが気になった。


「里村」


「なんですか?」


「編集長はなんで退社したんだ?」


「さあ?家庭の事情とか言ってましたけど、詳しいことはよくわかりません」


家庭の事情?

沖田編集長は確か奥さんを事故で亡くして二人の娘さんがいると聞いた。普通ならどんな理由があるにせよもう少し頑張ってもいいじゃないかと思うのだが。


「嫌気がさしたんじゃないですかね。毎日イライラしてましたから」  


多忙な生活に飽き飽きしていたのか?確かに出版社の仕事はハードだ。すぐにでも居なくなりたいと思う気持ちも理解できた。


「居なくなりたかったのか・・・」


私は久しく沖田編集長と口をきいていなかった。だから仕事をもらった時、心の中では少し嬉しかったのを覚えている。もしかしたらこんな自分でも少しばかりの期待はしてくれていたのかもしれない。


そう思うと無性に鹿原家の本を出版したくなった。成功もしてない。有名にもなっていない。そんな一般人の本。あの敏腕編集長が鹿原家にこだわったのなら何かあるに違いない。


「里村、ちょっと出てくる」


里村は我関せずの表情で、いってらっしゃい、と一言つぶやいた。

ところで鹿原家の長男、つまり名生さんが亡くなっていたことを編集長は知らなかったのだろうか?

もし、知っていたのならどうして隠していたのだろうか?そんなことが無性に気になっていたが今更編集長に聞けるはずもなかった。







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