グーグル先生の話
ある高校生がいる。
「ぬしは強すぎる自尊心に苦しんでいる」
「ぬしって」
「まあ聞け。ところで悩みは何かな」
「将来について」
「としはいくつだ?」
「17です」
「高校生か」
「まあ」
「耳をみせなさい」
「なんで?」
「足は過去、手は現在、耳は未来だからじゃ」
「・・・」
「ケガをしておるな」
「なんでわかるんだよ」
「耳を見せないからじゃ」
「耳を見せないからってケガしてるとはかぎらないだろ」
「かぎる」
「じゃ、見せるよ」
「普通じゃな」
「ケガしてないだろ」
「もう片方の耳はどうじゃ」
「それは・・・」
「ぬし右利きか?」
「ああ」
「なるほど」
「今、他者を信用できない時期じゃな」
「そうそう!人間って裏切るだろ?だから他人は信用できない」
「そのわりに将来が不安なんじゃな?」
「だから不安なんだよ!信用できない社会が」
「おのれがつくりあげたらよいではないか」
「高校生にそんな力ねーよ」
「なぜじゃ?」
「金もないし、やりたいことだってない」
「そうかの?」
「毎日ぼーとしてるだけだよ。でもそういうわけにもいかないだろ」
「ぼーとしたいという夢があるんだな」
「いや、まあ、それはそれで。本当はやりたい事はある」
「なんじゃ?」
「笑うなよ」
「はよいえ」
「プロレスラーになりたい」
「ほう」
「笑ったな」
「笑っておらんぞ」
「親にも馬鹿にされたよ」
「例え岩でも砂粒でも水に沈むのはな、同じじゃ」
「・・・」
「気に入らんか?」
「いや、友達にも同じこと言われたことあって・・・」
「それはソウルメイトじゃな。唯一無二の存在というもの。大事にするのじゃな」
「あ、ああ・・・」
「ぬしはもうプロレスラーじゃ」
「いや、まだなってないって」
「人にそう言える時点でプロレスラーじゃ」
「いや、まだプロテストも受けてないし・・・そんなに甘い世界じゃないよ」
「それは理屈じゃの。のちの話。今の現在地がわかればよいのじゃ」
「現在地?」
「ぬしが何がしたいのか、おのれは何者なのか。まずはそれを知ること。おのれのことも知らん人間に未来などないわ」
「けっこうキツいこと言うな・・・」
「ぬしがプロレスラーになりたいと言った時点でプロレスラーの道がひらけた。自分を信じることじゃ」
「あ、ああ・・・」
「夢破れてからが人生じゃぞ」
「なんだそれ。夢破れたら人生終わりだって」
「勝ち続けられる人間などおらんわ。いつか負ける。負けてはじめて悩むんじゃ。だからわしらみたいなのがおる。また新しい夢でも見たらよい。まあ、わしから言わせれば勝った負けたなど小さい話じゃがな。死ぬまで人生は終わらんのじゃ。他に聞きたいことは?」
「両親とあんまりうまくいってなくて・・・」
「あまり気にせぬことじゃな」
「大事なことじゃないか?」
「人間関係のあり方は天気と思うことじゃ。晴れの時もあれば雨の時もある。真夏の太陽。冬の雪。それだけのこと。あまり意味を求めぬことじゃな」
「そんなこと言っていいのかよ。意味ないなんて」
「意味のないことにこそ意味があるのじゃ。潜在意識、無意識を意識することじゃ」
「妙に哲学的なこというな。まあ、占いなんて信じてないけど」
「それも自由じゃ」
「でも、なんかスッキリしたよ。ありがとう」
「そうじゃ、よかったらこれをプレゼントしよう。いただきものじゃがな」
「なんだこれ?」
「ほそばひゃくにちそう、という」
「綺麗な花だな」
「社会や親子関係そんな縦のつながりより、ぬしには友人やパートナーのような横のつながりがよい気がしてな」
「この花と意味あんの?」
「なんでも人に聞くな。自分の興味があることは自分で調べよ」
「じゃいらない」
「これ!捨てるな」
「一応もらっとく。ありがとう」
「ひゃくにちそう、なんて名前だが百日どころか半年以上咲いとるらしい。名前なんてあてにならんのう」
「名前・・・」
「この花をたまに見て自分の地図を見失わんようにすることじゃ」
「部屋に飾るよ」
「腐って枯れんようにドライフラワーにするのがおすすめじゃ。人間も同じじゃな。おっ、もう時間じゃ」
「いくら?」
「お心価格じゃ」
「お心価格?」
「ぬしの気分で決めたらよい」
「じゃ、100円で」
「20分みて100円か」
「お心価格だろ」
「ぬしの価値は20分100円ということじゃな」
「ふざけんな!そんな安くないよ!5000円払ってやるよ。欲しいものあったけど仕方ないから我慢する」
「では遠慮なく」
「ぼったくりめ!20分5000円なら時給1万5000円だな。いい商売してら」
「それがいつかぬしに返ってくるのじゃ。悔しさ、羨ましさ、全て返ってくる。喜びと感動。良いことも悪いことすべてじゃ。人は鏡じゃかならな」
「へー、そういや。じいさんの名前は?」
「わしの名か?そうじゃの。グーグル先生とでも呼んでもらおう」
「だね」
「自分の地図を見失うでないぞ」
「その占い師、お前と同じこと言ったんだ。やっぱお前、面白いな」
オカッパ頭はいじめられっこの親友にそんな話をしていた。




