君の名は?の話
「名前、変えたい」
「どうしたの?急に」
「何言ってやがんだ」
「名生って良い名前じゃない、名前が生きるって書いて名生よ。お父さんとお母さんで一緒に考えたの」
「でも、いやだ」
「今さら名前なんて変えられねえぞ。親からもらった名前をなんだと思ってる」
「嫌なものは嫌なんだ!」
「なんで嫌なの?」
「お母さんの名前、反対から呼んでくれよ」
「私の名前?かぼらよしこだから、こしよらばか、ね」
「まだましだ」
「『ばか』がついてるのが嫌なの?いやだー。フフ。でも鹿原って苗字は仕方ないじゃない」
「俺はもっとひどいぞ」
「かばらなお、でしょ?なにが・・・」
「おならばか」
沈黙。
「友達にからかわれた。だから名前を変えたいんだ!」
「そ、そんなこと言っても・・・お前、芸能人か何かにならないと無理だろ・・・笑わせんな。ププ」
「笑うなよ」
「お父さん笑ったらだめですよ。フフ」
「俺は真剣に考えてるんだ!大きくなったら東京に行ってプロレスラーになってやるから!」
「オナラーマスクか!こりゃ傑作だ!」
「あ、あなた・・・笑わせないでよ。フフ」
「なんか臭くないか?におうな」
「本当ね。なお、おならした?」
「してない」
「ごめんごめん、俺だ!」
「いやだ。もう、あなたったら」
「プーとこいちまった。ハハ!」
「心配させないでよ、名生。そんなことで悩まないの。さっさと勉強しなさい」
「勉生しない奴はしょうちしねえぞ。ガキができてこれからまた金がかかるんだ」
「この子にはグローバルな生き方をしてもらいたいわね。サクラ」
「今時はキラキラネームなんてもんがあるからな。あえてのカタカナだ。俺のセンスはいいだろ?」
「さすがあなただわ。この子の将来が楽しみね。さあ、ご飯にしましょ。もうお腹空いちゃって」
「おい!オナラーマスク。くだらねぇこと言ってねえで母さんを手伝ったらどうだ。人様に迷惑かけたら承知しねえぞ!プロレスなんてくだらない。真面目に生きろ!」
少年は何も言わずに部屋を出た。
一言だけこうつぶやいて。
「これが親か」




