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秘密の話


沖田誠二と申します。


私は小さな居酒屋を経営しているかたわら、出版社の編集長をしております。


「沖田さん」


名生くんと出会ったのはちょうど今から十年ほど前になります。

毎日寝る間もなく仕事漬けの毎日でした。


その場にいる人間達は沖田の話を黙って聞いている。


この店で名生くんは無銭飲食をしました。


「うちの名生はそんなことをする子ではありません!」


「母さん、とりあえず話を聞こう」


私はこっぴどく怒りました。どうするつもりだい?恥ずかしくないのかい?君がやったことは犯罪だよ。


彼は反省した様子ですぐに彼女が払いにくると一言つぶやいてそれ以上何も話しませんでした。


しばらく待っていると一人の男性がやってきました。それがアラックスくんだったんです。


沖田は白いハンカチの下で眠っているアラックスを見つめた。


「彼女じゃなかったの?」


彼女といえば彼女かもしれない。

もちろんお代はいただきましたよ。

ご迷惑をおかけして申し訳ございません、それが彼の第一声でした。非常に礼儀正しく好印象だったのを覚えています。


それ以降、名生くんとアラックスくんは毎晩のようにこの店にやってきてくれました。もちろん、ちゃんとお金を払って飲んでくれました。


とある日、名生くんは一人の女性を連れてきました。


「店長!穂香っていう」


「・・・」


私はしばらく沈黙していました。彼女もまた恥ずかしそうにしていました。何を隠そう、穂香は私の娘でしたから。


「嘘・・・」


初めこそ犯罪未遂者に娘はやらないと、冷ややかな目で名生くんを見ていましたが、アラックスくんはやたら名生くんの良い所を引き出そうと私を説得してきました。

その姿に友情の美しさを感じた私は彼らに心を許すようになりました。


名生くんと穂香が結婚の報告をしてくれた時も私は快く受け入れまた。


「お兄ちゃん、やっぱり結婚してたんだ・・・」


アラックスくんは二人が結婚して少し寂しそうでもありました。三人でよく飲んでいましたが、次第にアラックスくんは一人で店に来ることが増えてきた。名生くん穂香は気にしている様子でしたが私は三人の関係性をなるべく壊さないよう干渉することは避けていました。


「俺、新しい仕事見つけたよ。店長」


その寂しさをまぎらわすためかアラックスくんは自分でイベントを主催するようになりました。イベンターというものです。


ある日、人狼ゲームというイベントをアラックスくんが主催しました。人が人を殺すという疑似殺人ゲームで会を重ねるごとに彼のイベントはエスカレートしていった。


「店長。今やってるイベントおもしろいから手伝ってよ」


彼は人の死に興味をもちはじめたんです。会場は大混乱に陥り、逃げ惑う人。泣きじゃくる人。それは大変な騒ぎになりました。


「ただのイベントですよね・・・」


当然です。あくまでもゲームの話ですから。


しかし、私も居酒屋経営をしながらジャーナリストもしている身だ。こんなおかしなイベントは世の中に公表すべきだと思ったのです。


「ただのイベントを?」


それはそうなのですが、まあ話を聞いてください。


アラックスくんには身寄りがなかったんです。物心つく前から祖父母に育てられたらしく、その祖父母もすでに他界していました。だから私がずっと面倒をみていたんです。殺人者になったとはいえ警察につき出すことをためらいまいた。


「殺人者って・・・ゲームの話ですよね?」


ええ、その通りです。


彼は心理学のようなものを勉強していて参加者は次第に正気を失っていった。私もその一人です。

不思議なもので一人殺されてしまえば、二人殺されてもなんとも思わなくなってしまうものなのです。

私はいつも彼に言われるがまま後片付けをしていました。


毎年、お盆の時期になると必ず開催される同窓会のようなものがあります。アラックスくんはその同窓会をいつも楽しみにしていました。


「久しぶりにツレに会えるんだよ」


学生時代の友人はほとんどが家庭を持っていました。集まる人数も月日が経つにつれ減っていきました。当然でしょう。家庭を持つと何かと忙しくなる。


「家族ってそんなに大事か?」


家族の在り方を問う質問でした。私にも娘が二人います。


「それってお兄ちゃんの」


下の娘は名生くんの奥さんの穂香です。名生くんは娘をとても大事にしてくました。

事故にあいそうになった時も身体をはって守ってくれたと聞いてます。チンピラに絡まれた時も彼はボクシングとアマチュアプロレスをやっていたからケンカが強くて守ってくれたと聞いてます。穂香は名生くんを心から愛していた。私のようにお金にだらしない彼を見捨てることはなかった。


アラックスくんは次第に自分から離れていく名生くんに嫉妬していたのかもしれない。


そして、ちょうど今から一年前のある日。

アラックスくんは同窓会で人狼ゲームをはじめた。彼の特徴は人狼に襲撃された人間は殺さず行方不明という、てい、で監禁することだった。

しかし、追放された人間には容赦しなかった。


「それが民意だもんな。店長」


アラックスくんは人狼有利のやり方で細かいルールは言わなかった。その日、名生くんもゲームに参加させられた。

 

「お兄ちゃんが・・・」


名生くんは人狼ゲームで一度も負けたことがなかった。なぜだかわかりますか?


「・・・人狼有利ってさっき言ってたってことは、人狼がほどんど勝つってことよね?お兄ちゃんが負けたことないってことは、ずっと人狼だったってことじゃない?」


ほくそえむ沖田。


「私達はその人狼に勝った。しかも未経験で」


その通りです。

百戦錬磨の名生くんがそんな簡単に負けると思いますか?


「絶対なにかおかしい・・・」


まあ、話を戻しましょう。

同窓会で名生くんは多数決により追放されたました。それはアラックスくんも想定外のことだったと思います。


(アラックス、話が違う・・・)


アラックスくんは最後までためらっていましたが、私が代わりに名生くんを処刑しました。

そう私が彼を殺したんです。義理の息子を。


「き、きさま!」


立ち上がる清。


「お父さん落ち着いて!じゃあ今ここで倒れているのって・・・」


名生くんではありません。本当にアラックスくんです。


「でも、顔は名生そっくりよ・・・」


まあ、そうでしょうね。今の医学は進歩していますから。美容整形と人工3Dプリンターでなんとでもなります。


「本当は死んでないってことよね?これはゲームなんだから・・・」


まあ、話を戻しましょう。

おそらくアラックスくんは名生くんを本当の意味で愛していたんだと思います。


「愛してたって・・・」


同性愛は今時普通です。それも個性だと私は思います。


学生時代アラックスくんはケタオという子からいじめを受けていたそうです。その時も名生くんが何度か助けてくれたと聞いています。その恩も感じていたのでしょう。


(俺が弱いからいじめられるんだよな・・・)


(それは絶対違う。お前は悪くない。どんな理由があるにせよ、いじめる奴が絶対に悪い)







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