親友の話
港で二人の少年が釣りをしている。
「お前いつからその髪型だっけ?」
「小学校からかな」
「その髪型以外みたことないな」
「あんまり髪形変えないから」
男は照れくさそうにオカッパ頭をさわる。
「話は変わるけど、人間てさ。勝手な生き物だよな」
「なんだよ急に」
「他の動物と違って知性や共存する能力があるのに戦争とかしてさ。強いとか弱いとか、勝つとか負けるとか。注目されたいとか目立ちたくないとか・・・」
「妙に哲学的なこと言うな」
「そんな世の中に平和なんてあるのかな?」
「それを夢みてるんだろ。みんな」
「そんな風には見えない世の中だ」
男は俯きながら沈黙する。
「そういやお前、昔ケタオにいじめらてたな」
「人間不審になったよ・・・おかげで高校行けてない」
「うける」
「お前がいつも助けてくれたな」
「俺強いから。プロレスラーになる男だ」
オカッパ頭は鼻の穴を膨らませた。
「鼻息あらいよ」
「お前もな」
二人はしばらく沈黙した。
「親と子の絆ってあると思うか?」
「・・・わからない」
「俺は両親いないからそういう感覚わからないんだ・・・」
「そういえば、お前両親いないんだっけ?」
「父親は病気で死んだらしい。母親は蒸発したらしいよ。ばあちゃんに聞いた話では」
「どこに蒸発したんだよ」
「お前な。蒸発の意味知ってるか?行方不明って意味だよ。どこにいるか分かってたら蒸発じゃねえだろ」
「ああ、そういうこと?」
「バカだな。高校行っててもそういうこと分からないなら意味ないな。学歴は」
沈黙。
男はオカッパ頭を見つめる。
「プロレスラーになれよ」
「ああ!もちろん。お前は?」
「魔法使いかな」
「真面目に答えろよ」
「真面目ねえ」
「お前、やっぱおもしろい奴だな」
「褒め言葉として受け止めておく」
「そうだ!お前にもあだ名つけとこ」
「俺に?特徴無いぞ」
「アラックスってのはどうだ?」
「なんでアラックス?」
「お前、鼻息あらいじゃん」
「それはアラマノだろ」
「アラマノはアラマノだ。アラックスはアラックス」
「アラはわかるけど、クスはなんなんだよ」
「意味なんてないよ。なんでも意味を見つけようとするな。意味ないことに意味がある」
「お前も哲学的だな」
「お!ひいてる。よし!また一匹ゲット!」
「夢は人を裏切らない。裏切るのはいつも人間」
「なんか言ったか?アラックス」
「あっ、いや、相変わらず釣るの上手いな」
「才能よ!」
「お前は相変わらず運がいいな」
オカッパ頭に微笑みかけるアラックス。
「へ・り・く・つ」
「なんだよ。急に」
「しりとりだ」
「へ・り・く・つ。早く言えよ」
「なら、つ・り・ざ・お、だ」
「お、かぁ・・・オムライスじゃ普通だからな。なら、お・か・っ・ぱ・あ・た・ま、でどうだ」
「意外とそのあだ名、気に入ってる」
オカッパ頭の竿がまたしなった。




