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兄は人狼⑥


「皆様には殺し合いをしていただきます」 


「なんだここ?」


「ねえ、ここどこなの?」


「今のアラックスの声だ」


「誰も居ないよ」


「久しぶりだな。オカッパ」


「アラックスか・・・」


「アラックス君、おひさ。でもどこにいるの?」


「顔は出せない」


「なんで?」


「皆様には殺し合いをしていただきます」


「はあ?なに言ってんの?俺と穂香しかいないじゃん」


「オカッパ、私との約束を破りましたね」


「なにが?」


「家族をとるか友情をとるか」


「友情をとったじゃないか」


「穂香さんとの関係はどうでしょう」


「いや、それは別件だって話しただろう。穂香の事はお前だって認めてたじゃないか」


「穂香さんは妊娠してる。友情で妊娠するでしょうか」


「えっ、穂香、お前・・・」


「君達には殺し合いをしていただきます」


「アラックス君の言う通り、妊娠してる・・・」


「だから殺し合ってください。二人は愛し合っているんでしょう」


「ちょっと待って!意味がわからないわ」


「そうでしょうか。人生は人間関係で決まります。子孫繁栄とは人間である以上使命であり、罪です。だから罪を犯す前に死んでもらいます」


「子供を産むことが罪なの?」


「家族を作ることが罪なんです」


「どういう理屈なの」


「元をたどれば凶悪犯罪者もただの人間でした。しかし、それを生みだした存在は必ずいる。理由はどうあれ、凶悪犯を産んだ親がいるわけです。凶悪犯罪を減らすにはそもそも新しい命などいらないのです」


「その逆だってあるじゃない!歴史上の偉人達はどうなの。その人達だって親から産まれてきたのよ!子孫繁栄は罪だけじゃない!新しい創造の始まりでもあるのよ!」


「愚問だ」


「なんでよ!」


「ちょっと待て!友情をとれなかった俺にも悪いところはあった。それは謝る。でもお前がやってることは嫉妬深い女の復讐劇みたいで気持ち悪いんだよ!」


「嫉妬深い女の復讐劇ですか」


「いや、その・・・」


「友情は認めます。でも愛情は認めません、家族の根本が愛情です。友情をとると約束したにもかかわらず愛情をとった。違いますか」


「その幼稚な考え方はなんなんだよ!昔は昔。今は今だろ!」


「だったら死んでください」


「命を軽く考えるな!」


「君からそんな言葉がでるとはね。少し会わないうちにずいぶんと変わりましたね。人狼さん」


「人狼って・・・なに?」


「彼は最強の人ー」


「わかった!なら俺を殺せ!穂香も赤ん坊も俺は殺せない!」


「まだわかってないようですね。誰も人を殺したくはないんです。しかし、自分が生き残るためには仕方ない犠牲もある。私だって誰も殺させたくはない。しかし、避けられない決断を迫られることが人生にはあるんです。これからもきっと繰り返される人間の宿命です」


「なあ、自己犠牲や献身って言葉もあるだろ。俺が死ねば終わる話だ」


「ずいぶんと優しい言い方をしますね。カードをポケットに入れています。ルールは知ってますね」


「ちょっ!ちょっと待て!」


「ねえ、どういうことなの・・・」


「勘弁してくれ!穂香もオンラインゲームでしかやってことないんだ!リアルはきついって!」


「お前には殺し合いをしていただきます。勝ち残った方には賞金として一億円差し上げます」


「アラックス・・・」


「一億円?」


「金なんかいらない!ここから出せ!アラックス!」


「でも、これからお金が・・・」


「お前!なにそんな悠長なこと言ってるんだよ!あいつは冷酷なんだ!一億円なんて払わないし、みんな殺されるんだ」


「カードの内容は市民一人、人狼一人、狂人一人です」


「話聞いてんのか!だから二人しかしないって」


「私も参加します」


「はあ?参加するって、お前ゲームマスターだろ。進行はどうすんだよ」


「店長に任せます」


扉から姿を現す店長。


「わかりました。私が責任を持って務めさせていただきます」


「パパ・・・」


マスクを被ったスーツの男が店長の後ろにいる。

ゆっくりとマスクを剥がす男。


「アラックス・・・」


「お久しぶりです」


「まだそのマスク持ってたのか」


「ええ、君の夢でしたからね」


「ガキの頃の話だぞ」


「成長というのは儚いものですね、無邪気な夢も叶えられない現実」


「悪かったな。いろいろあるんだよ。人生には・・・」


「言い訳なら誰もが天才。努力とか評価なんてものはすべて自分次第なんですよ。それを報われるとか報われないとかバカバカしい発想ですね」


「ねぇ?どういうこと?」


「あのマスクは俺がプロレスラーになりたかった頃に小遣い貯めて買ったレスラーマスクなんだ。怪我してあきらめて川に捨てたんだが・・・」


「非常に残念でしたよ。その姿を見た時は」


「わざわざ拾ってきたのかよ。相変わらずの暇人だな」


「オカッパ。しばらく会わないうちに幸せそうな顔になりましたね。家族を創ることが新しい夢になりましたか。では、カードを見てください」


沈黙。


「本当は結婚も許せなかったんですよ。でも穂香さんはいい子だ。だから許しました」


「お前に俺の人生を壊されてたまるか!」


「お金に困っているようですね」


「なんでそのことを!」


穂香をみるアラックス。


「人狼はアラックス君!」


「なんだよ、急に!」


「そうじゃないと勝てない。そうじゃなかったら・・・」


「近々、同窓会の時期ですね」


「お前、何する気だ」


「迷っていましたが、友情なんてやっぱりいらないですね。同窓会で人狼ゲームをやります。もちろん参加してくれますよね」 


「俺はもうやめたい・・・」


「ホストとしては三流でしたが、人狼としては一流だ。君の才能はまだまだ必要になる。世の中がそれを求めている」  


「人狼なんか誰も求めてねぇよ!」


「世の中にはね、死んで当然の人間もいます。殺したくても殺せない弱い人間もいるんですよ。人狼は堂々と殺せる。そんな弱い人間の為にね」


「俺はもうやめたいんだよ!」


「いいでしょう。私はオカッパが人狼だと思います」


「何言ってる」


「違いますか」


「・・・そ、そうだ!俺が人狼だ。ずっとそうだった!」


「今回はすべて店長に任せました。カードに細工など私はしていませんよ」


「ちょっと待って!彼は人狼じゃないわ!だって人狼はアラックス君だもん!」


「なぜです。穂香さん」  


「そうとしか考えられない!」


「これだから女性は厄介なんです。根拠なく感情で答えをだそうとする」


「じゃなかったら私、耐えられない・・・」


「穂香は市民なんだな」


「・・・うん」


「人狼は俺かアラックス」


「どうでしょう」


穂香を見るアラックス。


「でもなんで俺たちを拉致したんだ」


「別に私が拉致したわけではないですよ」


「ごめんなさい、私がパパに言って・・・」


「穂香」


「でも、借金があるって相談しただけなの!こんなことになるなんて思わなかったの!」


「あやまちは誰にでもあるものです。私は穂香さんに罪はないと思います。元々は借金を作った張本人が悪いんですから」


「・・・俺が人狼なんだ。俺に投票しろ!」


「絶対だめ!投票はアラックス」


「だめだ!俺は俺に投票する!」


「バカですか君は。自分に投票するのはルール違反です。いまさらわかりきったことを。かわりに穂香さんを処刑しましょう」


「ち、ちょっと待て!わかった。自分には投票しない。アラックス、お前に投票する!」


「これで二票が私に入るとして私は追放されますね。もし私が人狼でなければ狂人の方も道ずれだ」


「俺が狂人だ!穂香は生き残ってくれ」


「人狼と言ったり、狂人と言ったり。相変わらず中途半端な生き方をしてますね」


「穂香が生き残ればそれでいい!赤ん坊を頼んだぞ!」


「だめ!それはだめ!私も死ぬ!あなたの居ない世界で私どうやって生きていけばいいの!」


「お前なら大丈夫だ!俺みたいなクズじゃなく別の奴を好きになってくれ。もっと真面目なやつをな」


「そんなの絶対嫌!」


「幸せにしてもらえ、な」


「嫌っ!私に投票して!私が人狼よ!この子と一緒に死ぬ!あなたは生き残って!」


「そんなことできるわけないだろ!人狼は俺なんだよ!」


「ほう。二人で人狼人狼と言い争っている。そうです。これが本来の人間の姿です。本来、人狼は人気者なのです」


アラックスと店長が目を合わす。


「そろそろ投票をお願いします。せーの、で人狼だと思う人に指をさしてください」


「俺が人狼だ!」


「私が人狼よ!」


「人狼が二人もいますね。人は鏡」


「せーの!」


沈黙。


「なるほど」


「アラックスくん二票、穂香一票」


「二票入りましたか」 


「投票の結果、アラックスくんを人狼とみなし処刑いたします」


銃口を向ける店長。


「・・・何か言い残しておきたいとはありますか?」


沈黙。

  

「私は人狼ではありません」


銃声。


静寂。


「おめでとうございます。人狼チームの勝利です」


「穂香・・・」


「名生」

















・オカッパ○人狼

・アラックス×市民

・穂香○狂人









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