理由の話
「なあ?なんで毎回俺を人狼にするんだよ」
オカッパ頭が唇を尖らせる。
「生き残りたいだろ?」
紳士ぶった男は当然の顔で言い返す。
「けっこう胃が痛くなるんだぜ、少数派は」
「それはお前が選んだことだ。人間ってのが嫌いなんだろ?」
「・・・ま、まあな。人間が嫌いというか自分が好きなだけだ」
「己を好きになることはいいことだ」
真顔で紳士ぶった男がつぶやく。
「馬鹿にされたり、劣等感を抱くのが嫌なんだよ・・・」
「だったらそれなりの犠牲は必要だな。我慢しろ」
「そうだけど・・・」
沈黙。
「妹は元気か?」
「どうだろ?最近会ってない」
「相変わらず美人か?しばらく会ってないな」
「変な目でみるなよ。人の妹を」
「お前が唯一信用してる家族というやつか?」
「ああ」
「家族か」
「・・・ごめん」
沈黙。
「自分を愛せよ」
「わかってる」
「信念さえあればなんとでもなる。プライドだよ。お前もそうだろ」
「孤独だよな」
「俺にはお前がいる」
「俺には・・・」
「俺がいるだろ」
沈黙。
「お前を必ず勝たせる。どんな事があっても」
「だからってずっと人狼はきついぜ」
「他の奴を勝たせる気はない」
沈黙。
「何度も何度もお前は人の死に直面してモンスターになっていく。人間の感覚がなくなっていくように。やがて異次元の世界に入る。その感覚を俺は知りたい」
「変態野郎」
「お前は人間が嫌いなんだろ?だったらまずお前が人間であることを捨てるんだ。お前はモンスターだ。俺が作った最強の人狼。俺とお前は運命共同体なんだ」
「俺が負けたら?」
「それはない」
「なんでそう言いきれる」
「お前は唯一無二の強運の持ち主。俺にはなかった強運の持ち主。そういう人間は自由を愛さなければいけない」
沈黙。
「何か言い残すことはありますか?」
「わかったよ。アラックス」




