第二章 ホストの話
「大爆弾だぞ!」
「それはおおめにみてくれよ」
「大爆弾ですよ!」
水商売で人の客を奪うという意味だ。
「この仕事は信頼関係で成り立ってるですよ!」
「それは悪かった。でも誤解だ」
「何が誤解なんだ!証拠がここにある」
ルカの客からのメールに「今夜エッチしょう」という文言が入っている。
「どういうことなんですか!」
「そっ、それは、そのっ、酔っばらってたから・・・」
ルカの客が報告しなければ気づかなかったことだ。
ホストという仕事は仲間を信じられるかどうか複雑な心境で毎日営業をしている。水商売は嘘つきの集まりだ。
全員敵だと一匹狼でいたいところだが、一人では限界があった。高いボトルをホイホイ開けてくれる太客などそうはいないからだ。
ちびちび安い酒ばかり飲む客を相手にするのが常。量がものをいう。つまり仲間だ。だからヘルプという役割の後輩、同僚、先輩などから助けてもらえるよう努力する。
そこで信頼関係が重要になってくるのだが、こういった爆弾魔がたまに出るから言じたくても信じられない。
「悪かった・・・」
「五年ですよ!五年!俺達の付き合い。こんなことがあるんなら今まで俺が知らなかっただけで過去にもあったように思える」
「そっ、それはない。今回だけだ!本当に今回だけ魔がさした・・・」
「本当でしょうね」
「本当だ!信じてくれ」
「わかりました。今回だけは信じます。ただ、もしまたこんなことがあったら覚悟して下さいね」
「わかった。わかった」
ルカの怒りは爆発寸前だったが、その思いを強い酒で流し込んだ。
「ルカさん、あの人またやりますよ」
「やらねえよ。マネージャーだぞ」
「一度罪を犯した人間はまたやります」
「なんでだよ」
「人間はそういうものです。万引き、浮気、いじめ、みんな繰り返します。人生はゼロかイチかです。イチになった人間はもう止まらない」
「それにしたって俺は許す気持ちも大事だと思ってる」
「最初は誰もがそうです。でも二回裏切られ、三回裏切られ、そのうち人を信じられなくなる。許せなくなるもんです」
「お前、なにが言いたい・・・」
「平和ボケですね。仲間を集めるとか。そもそもそんなものは必要でしょうか?一人で生きられたらそんな苦労しなくてすむんじゃないですか?」
「それが出来ないから苦労してんだろ」
「僕に良い考えがあります」
「なんだ?」
「殺せばいいんです。自分以外、全員を」
酒を吹き出すルカ。
「お前何言ってんだ!物騒なこというなよ。俺は前科持ってんだ。また刑務所暮らしは嫌だぜ」
「バレなきゃ大丈夫です」
「日本の警察は優秀なんだよ!」
「警察?そんなもの関係ない。ルカさん、僕に考えがあると言ったでしょ」
「オカッパ・・・」




