取材の話
「矢代さん。なんですかこれ」
里村は苦虫を噛んだような顔をして、「家族の話を聞いてきてほしいて言いましたよね?」とあおった。
「ああ、それはわかってるんだけどさ・・・」
「友達のあだ名がどうとかなんてどうでもいいんですよ。なぜお父様やお母様からもっと話を聞いてきてくれないんですか!」
里村の言うことはもっともだ。しかし、あの夫婦は妙に話し下手で父親はすぐに席を外すし、母親は俯いてばかりで話しかけても笑顔でごまかされる。まともなのは妹のサクラさんだけだ。だから彼女にレポートを依頼した。まあ彼女も少し変わっているところもあるが。
「友人の話なんてどうでもいいんですよ!」
サクラさんの話は充分聞いてきた。次はお兄さんの話をと思ったがまさかこんなに脱線するとは予想外だ。
「お兄さんに友人が多いのは分かりました。その友人のあだ名がふざけてるのもわかりました。僕が知りたいのはお兄さんの死因です。死因を聞いてきてください!いいですね!」
里村は出世が遅れるじゃないかと独り言のようにつぶやき、出世、出世、と吐いた後、デスクに戻っていった。
こいつもとんでもない化け物ちゃんだ。