炎から覗く影の世界
バーン
「死ぬのは、怖いか……クルーウ・スーサイド」
ブルートは、平坦な声で言った。
「うげぇッ!」
グルーウは、自分の体から、大剣が生えていることを気づきそして、熱いと感じた瞬間。あの時のゴブリンに右足が喰われた時と同等の痛みが、身体中を駆け回った。身体が、地面にドンドン近づく。
「君ら、私が気づいていないと思っていたのか?!」
ブルートは、ドスの効いた声でクルーウに向かって吐いた。そして、体を回し、大剣を大きく斜めに振りかぶりクルーウの左腕を突いた。
クルーウの身体から左腕は切断された。刺された胴体と肩から下が無くなった左腕から血がドクドクと流れていく。目から光が失った。
ブルートは、左手を仮面に手を当てた。今まで暗闇で隠れ気づかなかったがその左手は、薬指が無かった。手袋は、左手の薬指の所だけ無い事を主張するようにヒラヒラと落ちていた。
「リベラ、あいつ私が、殺す算段を考えている事を知りながら、私を仲間に入れやがった。気持ち悪い……あいつも殺そう……」
ブルートは、大剣を自分の下にある影へと沈めていった。
クルーウの身体に白い物体が蠢ていた。それは、刺された胴体と肩の断片と左腕の断片から出ており胴体の傷を塞ぎ、さらに無くなった左腕を白く蠢くものは、繋ぎ合わせた。
炎が立った。焦がすような光が辺りを五月蝿く包んだ。
クルーウは、静かに立った。
ブルートは、静かに振り向いた。
「お前をォッ!絶対殺すッ!」
ブルートは、叫んだ。
糸と血は、月の光を反射し光っている。
リベラは、雁字搦めに路地裏の上空に吊るされていた。レンガ造りの窓から白いカーテンが横目で見える。地面に白い右手が落ちている。
少しでも動くと糸から血が垂れる。
「ゾネッ!」
呂律の回らない口で叫んだ。半裸の男は、上を覗いていた。
半裸の男は、指先から糸を出し、リベラ目掛けて放った。
糸は、勢いに乗ったままリベラの腹部へ通過した。
「シャベレェッッ!ナンカアッ!アアアア!」
男は、叫び続けていた。
「うるさいなぁ……痛いだぜわたしだってえ……」
リベラは、少し興奮気味の口調で喋り眼球だけ地面の方向へ向かせた。笑みは、まだ溢れている。
身体を少し動かした。そこからまたドクドクと血が垂れる。
糸がギチギチと鳴り始めた。
リベラが身体を無理矢理動かし始めた音だった。
糸がギチギチとさらにデカく鳴り始めた。
糸は、纏まった。
ボトボトと肉片が、美しい緋色が落ち始める。
美しい緋色は、元に戻る。
美しい緋色は、リベラの形を模っていく。
長い白い髪を月が照らした。
半裸の男は、呆気に取られていた。
「オアマエモォ!カイカツカイダッタダナナ!アアアア!」
糸は、リベラに向けて放たれる。
リベラは、そっと糸の上に乗り静かに音も立てず跳ぶ。
男目掛けて跳ぶ。常人には、あり得ない速度で跳ぶ。
男は、呆気に取られすぐさま避けようとした瞬間。
破裂した。男の頭は、破裂した。男の頭目掛けて、蹴り終えたリベラの右足は、天空に向けられていた。
男の首の断片から月に照らされた美しい緋色が噴き出る。
男の身体は、地面に倒れた。
少し余韻と快楽にリベラは、身を包んで静かに微笑んだ。
「わたしは、自由だ」