若干の後悔
骸花 29
「なぁーリベラは絵とか好きなの?」
夕日の暖かい光が馬車の窓から荷台の中を照らす。馬車に揺られ、クルーウ達は中央都市ラブラビットに向かっている。
テスが馬を引き、荷台にはクルーウとリベラがいた。ゾネはどこかの影に入っている。クルーウはさっきまで荷台の両側にある窓から景色を見ていた。
荷台は狭く、酒瓶と絵画がたくさん詰まっていた。
絵に囲まながら、リベラは寝転がっていた。テスの絵を見ていた。道はあまり舗装されてなく、時々、揺れて頭を打つ。
「なんで?」
「絵を見てるから」
「……まぁ、景色を見るのが好きなんだ」
見ている絵は風景画。これは、今までテスが旅をして見てきた景色なんだろう。
「へぇーいがい。リベラって血でしか興奮できないと思っていた」
「……別に血でも興奮するが。それだけが、私じゃないからな」
「景色が好きだなんて、以外と普通なとこあるじゃん」
「……高いところから見る景色が好きなんだ」
「じゃあ、山登りとか好きなの?まぁ、ここから辺は森ばっかで山はないけど」
「私はただ単に死体の上から見る景色が好きなんだ」
「……あっ、そういうことね」
「あの、瞬間が自由を感じるんだ」
「へぇー。まぁ、世の中色んな人がいるからな。でも、リベラは死体とかでなんか、芸術とかやってそうだよね」
「なにそれ?」
「こうなんか、血で絵を書いたり、内臓とかで造形作ったりしてそう」
「そんな、キモいことはしない。それはテスがすることだね」
「ちょっと!聞こえてるからリベラちゃん!」
荷台の外から声が聞こえてきた。荷台と馬車の間には小さな窓があった。
「本当ことだろ!」
「テスって、確かに血で絵を描いてそうだもんな!」
「うぐー」
「まぁ、芸術家なんて、イカれてる方が良いって聞くし。良いんじゃない。俺理論だけど」
「良いこと!言うね!クルーウくん!大体、普通のやつに芸術が……」
途中からブツブツと小言で何か言ってる
「確かに、この絵は綺麗だよね」
「うわ!リベラが褒めた!」
「なんだ、私だって褒めることだってある」
「いや!リベラは性格が悪いだろ!」
「綺麗だと思ったことを綺麗だと言ってなにが悪い」
「まぁ。それはそうだけど。なんかさぁ!ギャップがすごい!」
「まぁ、勝手に思ってなよ。私が何を思うとも自由だ」
「お!そろそろ着くよ!」
テスの言葉にクルーウ達は外を見た。目の前にはデカい石壁が見えてきた。検問所があった。
「ついたか?」
荷台の影からゾネが出てきた。
「うわ!ゾネ!そこにいたのか!」
「ああ」
「ゾネのかいかって、便利だよね。不意打ちし放題じゃん」
「……」
「まぁ!俺は勝ったんだけどね!」
「……そうだな」
「ほら!検問があるから大人しくしててね!」
ゾネはまた影の中に入っていた。
「ゾネは検問の時も影にいるのか」
「私はあまり人に認識されたくないんだ。それに、私の格好は怪しすぎるだろ」
「まぁ!影の暗殺者みたいでかっこいいんじゃない!」
「そうか?」
「うん!」
クルーウとリベラは荷台を降りた。
「彼らは、私の弟子けん護衛です」
「「……」」
(まぁーいいか)
黒い薔薇の紋章がない。偏愛の騎士団とは違う、国の騎士団だった。
偏愛の騎士団はラブレットの妹の「王女」のもとに集まった、騎士団である。
「中を見せろ」
騎士は荷台の扉を開けた。
「中は絵だけか」
「はい」
ジロジロと騎士は中を見る。
「特に問題はないようだ。入っていいぞ」
テスは馬を走らせ、門を潜る。
「なんか、ここで一悶着とかあると思ってた」
「なんで?」
「王道じゃん。なんか検問所の前で煽られて、喧嘩するの」
「……どんな王道?」
「……まぁ、ないに越したことはないよね」
クルーウは荷台の窓から外を覗く。綺麗な石畳と高い建物が並んでいた。それに大勢の人が通りを歩いていた。
「……都会だ」
(まぁ、前世の時と比べたら、古風な感じだが)
「これから、何処に行くの?」
「王女の何処にいこよ」
「偏愛の騎士団とこ?大丈夫?殺されない?」
「大丈夫!だって、友達だもん」
「ほんとに?大丈夫?」
「大丈夫!大丈夫!……たぶん」
そう言って、テスは手綱を引く。
通りは賑わっており、露店が所々あり、良い匂いが漂ってくる。
なんとなく、クルーウは流れていく街を見る。
「……コーヒーハウス」
コーヒーハウスと書かれた看板がクルーウの目を横切った。
(……そういえば、テオと話したっけ。コーヒーハウス。俺がテオを殺したんだよな。……ちくしょう!なんで今になって悩んでいるだ!俺は!)
目の前にはリベラがいる。
(俺はこの道を選んで、本当に良かったのかな?)
リベラをじっと見つめる。
「なに?」
「……リベラは悩みとかないの?」
「悩みなんてない。私は自由だからな」
「はー。あっそ……」
「どうした。何を悩んでいる?今はこんなにも楽しいのに」
「リベラには理解できないよ。俺と君は違うんだ」
「……アハハハハ。何が違うのクルーウと私は、一緒だよ。一緒だよ」
「……テオのことか?」
ゾネが影の中から出てきた。
「……」
「……そうか」
「まさか?人を殺した事を悩んでるの?」
「そうだよ!悪いか!あの子とは友達になれたんだよ!お互いの事を語りやったんだよ!クソ!フィクスを殺した事は後悔してない!……けどテオは」
「……アハハハハ!」
「何がおかしい?リベラ」
「やっぱ、私と同じだよ何処まで自分勝手なクソ野郎なんだろ。まぁ、安心しなよ、これからクルーウはそんな悩みが小さくなるくらい苦しんで生きるんだから」
「……」
「私はそれを見るのが楽しみだよ」
ニヤニヤとしながらクルーウを見る。
「いやなやつー」
もうリベラと話す気力はなく、クルーウはまた窓の外を見始めた。
いつの間にか美しい長い並木道に入った。それを、まっすぐ進んだ先に石造り城が見えてきた。石壁に囲まれている。城門の前に立った。クルーウは城をみようと荷台から降りた。
「でかいなー」
「なんにかご用ですか?」
城門から国の騎士が出てきた。
「ーあの、ここに友達がいると思うですけど。フィリア・クッキーって人なんですけど」
「フィリアの友達?」
一気に体温が下がった気がした。それは、奥から聞こえてきた声が原因だ。冷たく、冬のような声だった。
目の前に氷のような男が現れた。
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