戒め
「なぁ、君は勇者とどう言う関係なんだい」
膝が崩れて立てないクルーウに目線を合わせるためにラブレットはしゃがんだ。
「知り合い?友人?家族?なに?君が死んだら勇者はどうなるの?」
クルーウの口から流れる血が止まらない。視界が定まらない。
「はぁー。まぁいいか」
そう言って、クルーウの頭に右手が伸びていく。右手から液体が垂れていた。地面に垂れた液体はシューと煙を上げている。毒である。
「グチュグチュになりな」
クルーウの頭に右手が乗ろうとする。
「ハイドランジア」
「ッ!」
一気にクルーウの体が燃え盛る。ラブレットの右手が燃えた。火傷した。
「アアア!」
右手を押さえながらラブレットはクルーウから離れる。
「きみぃ!かいか使いか!」
「……さ、最近の俺は、し、死にそうな展開が多かったけど、生き残ってきたんだ。なぜか!わかるか!仲間がいたからだ!ゾネ!」
ゾネはマスケット銃を構えていた。毒を喰らわないように少し離れた位置にいた。引き金を引いた。
「クソッ!」
ラブレットは少し体をずらした。弾が肩を貫通した。肩から血がダラダラと流れる。
「はぁー。国家叛逆罪じゃない?」
ゾネの隣にいたテスが言った。ゾネは次の弾を入れ始めた。
「いいよ。私はどうせ死人だ。テスはリベラの方に行ってこい。毒は危険だ。遠くから殺す」
テスは酒瓶を一口飲み込んだ。
「りょーかい」
ラブレットは肩を抑えながら、立ち上がった。
「ちくしょう!あはは!まさかかいか持ちだなんて!不幸だな!」
腹を抱えては笑ってる。それが、何処か気持ち悪かった。
「僕のかいかはある程度!操作できる!」
(だから、後ろ騎士には毒が喰らわなかったのか)
「近づなくても殺せるだよ!あはは!」
「や、やってみろよ!カスッゥ!」
クルーウの体が燃える。体が弱っていて、炎が上手く操作出来ない。ラブレットが右手をかざす。
「ナルシサスッ!」
ドゴッ!ラブレットの体が宙を舞った。
アンの蹴りがラブレットの顎に当たったんだ。ファート家、特有の顔が吹き飛ぶほどの蹴りではなかった。ラブレットはそのまま倒れた。
そこには血塗れのアンがいた。ワーグの返り血だろう。
そして、体の半分が白の肉塊で埋まっていた。それは、クルーウがかいかした時に腕を繋いだ物と似ていた。
「アン?」
「これが、勇者の姿だよ。君にこんな姿見せたくなかった」
「へ?いや!かっこいいよ!うん!かっこいいよ!なんかグロくて!えと、グロいイコールキモいとはならないからね!カッコいいとかあるからね!俺的にはちょうどいいかっこいいグロさだよ!」
クルーウはアンにキモくないよ伝えようと頑張っている。
「自優ノ勇者ッ!」
ラブレットの怒号が響いた。立ち上がり、手を構える。
「お前を殺すのは無理だが!テメェは殺してやるッ!炎野郎!」
「大丈夫。クルーウ。君は死なないよ」
アンは白い剣を構える。
「……右手でいいか?」
「は?」
刹那。ラブレットの右手が宙を舞った。白い剣で右手を切り落としんだ。早すぎてラブレットは反応できなかった。
「お前は罪を償う時がきたんだ。これは戒めだ」
「戒めぇ……勇者……執行官気取りか……てメェ……」
そう言いながら、ラブレットは気絶した。
「ゲホッ!ゲホッ!」
クルーウの口から血が出て、そのまま、仰向けに倒れた。
「苦しいぃ……」
「大丈夫だよ。クルーウは死なないよ」
「ちょっと!ラブレットの奴、やられてんぞ!」
フィリアが叫ぶ。
マニアはギリギリの戦いをしていた。一切、攻撃を受けれない、マニアは避けることに全力を注いでいた。
そこで、生まれた隙をついて、フィリアは鎖で攻撃をしていた。
マニアとリベラの間にテスが介入する。
「リベラちゃん!あの子は友達なんだ!」
テスがフィリアのことを指差した。
「だから、なんだよ。テス」
チラリとラブレットの方をマニアが見る。
「……アイツが死んだら、お姉ちゃんに怒られるんだけど。はぁー奥の手使うか」
そう言って、マニアはポケットから赤黒い液体が入った、小瓶を取り出した。そして、それを一気に飲み込んだ。
「辞める気?」
「流石に、アイツが死ぬのは困るから」
「ふーん。逃げれると思ってるの?」
リベラが動き出す。その瞬間、マニアの右足から巨大な氷が出来てきた。氷がまっすぐに氷塊を作っていき、その氷一気にがリベラの全身を貫いた。
テスの体が水になって破裂した。一つの巨大な氷の塊が出来た。
「くっ!」
リベラが破壊する瞬間から凍らしている。マニアが氷塊に近づいてく。
「ぺろ」
リベラの頬に流れていた血をマニアが舐めた。
「は!」
「いいかいかだね」
マニアとフィリアはラブレットのほうに走っていた。
「すまんが。殺さないでくれ。これでも、王なんだ」
クルーウとアンの目の前にマニアはきていた。そして、ラブレットを担ぎあけだ。
「殺す気はないよ。ラブレットもこれで少しは行動を改めて欲しいんだが」
「それは、無理でしょうね」
マニアはラブレットの右手を拾い、治した。それは、リベラのかいかの能力だった。
「リベラの?」
「それでは」
マニアは頭を下げた。
「もし!中心都市に来るなら城に来てね!こんな事になったけど私達の主人は歓迎すると思うから!」
そのまま、二人は街の外に向かっていた。
「主人?」
(アイツらの主人はラブレットじゃないのか?)
クルーウはそんなことを思ったが。
「ゲホッゲホッ!」
まだ、クルーウの口から出る血が止まらない。もうとっくに、死んでもおかしくないくらい苦しい。
「……アンセルキッラ」
いつの間にか、リベラがいた。氷を破壊して出てきたのだ。アンを咎める目をしていた。
「り、リベラ!」
「はぁー。クルーウは何回、死にそうなるんだよ」
リベラはクルーウに右手を差し出した。それを握り締め立ち上がった。
クルーウの苦しさは無くなっていた。
「俺!今日!二回も死にそうになったんだけど!このままじゃあマジで死ぬぞ!」
「アハハハハ。おかげで毎日が楽しいよ。クルーウ」
「はいはい。良かったね」
「クルーウ」
アンがクルーウの目の前に立つ。
「君にこれを渡すよ」
手には腰につけていた、白い左腕があった。




