サイコ共
「はっ!」
鳥の鳴き声が聞こえる中、クルーウは起きた。体中が痛い。掃除の途中でいつの間にか、寝てしまっていたらしい。
「……いててて、ん?」
横を見ると、クルーウの寝顔を描いている、テスがいた。
「おはよう!」
「……なに、してんの?」
「人の寝顔を見たの久しぶりだから描いてたの」
「ゾネは、まぁ、良いとして。俺よりリベラの方、描いておけよ。顔、そっちの方が整ってるだろう」
(アンと同じ顔だし)
「リベラちゃんは、もう先に起きてるよ。あの子って、いつ寝てるの?」
「そういえば、見たことないな、寝てる姿」
「ファート家だから」
荷台の扉の前にリベラが立っていた。
「……便利だね。ファート家って」
「だろ」
フンとじまんそうなか顔をリベラはしていた。そんなリベラを無視して、クルーウは外に出た。
青みがかった、朝の空気。冷たい空気が肺に入り込んでいく。口から出ていく空気は少し白くなっている。
「寒い」
「クルーウ。火に当たらせてくれよ」
影から出てきた、ゾネが言う。
「いつも、影で寝てるの?」
手に火をつけて、クルーウはゾネの近くに手を置く。
「なにそれ!クルーウ君のかいか!へぇー便利だね!」
馬車の中からテスが出てきた。
「仲間になった記念だ。特別に見せてやるよ」
「良いね。めんどくさい、火起こしをにどとしなくていいなんて」
「で、今日は何するの?」
「アンに会うんだろ」
「それまで、暇だねー」
「まぁ、依頼でも受ける?」
「依頼?なんで、金あるだろ?シリウスから奪った」
「コイツのかいか知りたくない?」
ゾネはテスに指を差した。
「かいか持ちなの!」
「そうじゃあなかったら、こんなサイコ。生きていけないだろ」
「……まぁ、そうか」
「ちょっと、酷いこと言わないでよ。まぁーあってるよ。私はかいか持ちさ」
「そうだろう。なら、仲間になったんだ、信頼のために見せろ」
「えー。……まぁ、いいけどさ。けど、見せるのは敵と相対したときね!そっちの方がかっこいいからね!」
「……確かに。なんか、ゾネを温めるためのがかいかの初だしってなんか、かっこ悪いな。……死ね!ゾネ!」
「情緒終わってるぞ、お前」
「ほら、役所いくぞ。見せてみな、テス」
リベラが先頭で歩き出す。
「いいのあるかな」
役所の依頼版を適当に見ている。「ゴブリン退治 三万リョク」「洞窟調査 一万リョク」「
「いろいろあるね」
「……んあれ。この洞窟調査って、リベラが爆発したとこじゃない?」
「あ。本当だ。ゾネのせいにしたやつじゃん」
「ああ、これのせいでシリウスの息がかかった連中に見つかったんだよ。まぁ、全員殺したから、許したる。リベラ」
「え。シリウスの潰したの君たちなの?」
「言ってないけ」
「言ってないよー。もう、ちゃんと全部話してね!」
「で!どれにするの!」
クルーウが言う。
「適当にゴブリンでいいんじゃないか」
ゾネはゴブリンの依頼の紙を千切り、受付に持っていた。
森の中心。紅葉が綺麗に散っており、落ち葉が赤と黄色の絨毯を作っていた。
「あははは。苦しそう!」
「いいぞ!やれ!テス!」
右腕が水になった、テスはゴブリンを溺れさせていた。ゴブリンは両足を切り落とされていた。それを見て、リベラとクルーウは純粋に笑いあってる。
ゴブリンはテスを必死に攻撃しているが、全てビシャビシャと音をたてて水を弾いていた。必死な抵抗は何も意味をなしていない。
周りには三匹のゴブリンの死体が転がっていた。テスが溺れさせているのは最後の一匹だ。
「……クルーウ。君もか」
ゾネだけが呆れた様子で遠くから眺めている。
「ゴブリンなんて、絶滅しれば良いんだよ!」
(それにしても、テスのかいか、強くないか)
「知っている。リベラ!死の中で溺死が一番苦しいらしいよ!」
「ああ。知ってる。だから、笑ってるんだよ!」
「このー!サイコめ!」
「仲良しだねー」
右腕をゴブリンの体から出し、そして、ゴブリンは倒れた。テスの腕は綺麗に肉に戻っていた。ゴブリンは溺れ死んだ。
「あははは。どう私つよ……」
ビシャという音ともに、テスが弾かれる。そこには、岩で出来た、巨大な人形があった。
「ゴーレム!」
クルーウが叫ぶ。両手を燃やす。テスの体が液体から形成されていく。
「なんで、こんなところに⁈」
ゴーレムは普段は洞窟の中に住んでいる。つまり、こんな森林で現れるのはおかしいのだ。
「ゴーレムの中心に心臓がある。それを狙え」
ゾネが大剣を影から出す。
「どうやって!岩で囲まれてんだぞ!」
「頑張って。火で溶かせば!火力上げてけ!クルーウ!」
楽しそうにリベラが笑う。
「うーん。デカすぎて、殺すのめんどくさそうだね」
液体から形成してきたテス。
「テス、無敵か!お前!」
一切のダメージがないようにテスが立っていた。
「言ったろ、私は君達には殺せないって」
「だったら、お前がアレを殺せ!」
「無理だよ。あいつの何処を溺れさせればいいか、わかんないもん」
「は!だったら!囮でもしろよ!」
「囮なってくれって、頼みかたってもんがあるでしょう。そんなことより、君の実力見せてくれよ」
「あー!もう!リベラ!」
「私も同意見だ」
「サイコ共が!」
「私が援護する!やるぞ!クルーウ!」
大剣を構えたゾネがクルーウの隣に立つ。
「私が部位を切り落とす!」
「できるの!」
「まかせろ!」
ゴーレムへと姿勢を低くしゾネが突っ込んでいく。ゴーレムが右腕を振り上げ殴りつける。拳が地面に激突し破片が飛び散る。
素早く拳を避けた。
「チ!」
しかし、飛び散った破片がゾネの体に少し刺さった。
「は!」
大剣を振りかぶり、渾身の一撃で右腕を切り落とした。右腕を失ったゴーレムは姿勢を崩し、そのまま仰向きに倒れ込んだ。
「クルーウ!」
飛び出したクルーウがゴーレムの背中の上に立つ。右手を置き手を燃やす。
「ハイドランジア!」
力を一点に集中させて燃やす。けど、ゴレームの身体は解けない。
さらに、炎に力を込める。
「アアアアア!」
自分の腕に燃える痛みが走る。
「イッテェーーー!」
(ゾネが言っていた、かいか慣れか!)
クルーウの腕に火傷が広がっていく。そして、ゴーレムの体が少し溶けていく。
急にゴーレムが動き出した。ゴーレムの左腕がクルーウの全身をぶっ飛ばす。
「ウグッ」
ゴーレムの体を飛ばされ、クルーウは木に衝突した。その衝撃で、イチョウの葉っぱが大量に降ってきた。体が葉っぱに埋もれた。
「アガアッあ、ハァーハァー」
立ち上がれない程の痛みがクルーウの全身を襲う。視界が上手く確保できない。頭がグルグルしている。口から血が出てくる。
右腕と右足があらぬ方向に向いている。クルーウは立ち上がれそうにない。
「り、リベラ!リベラ!」
口を必死に動かし、叫ぶ。リベラに助けを求める。
ゴーレムがゆっくりと動きだす、うつ伏せになり重い体を引きずりながらクルーウに近づいていく。
「クルーウ!死の感覚がかいかの確信に近づく!もっと燃えろ!」
「ああああ!無理だ!助けろ!」
「ここで、死んだら、お前はここまでだったってことだ」
「ねぇー!クルーウ君!今の姿!とっても可愛いよ!」
「アアアアア!サイコ共がアアアア!」
クルーウを埋もれさせていた葉っぱが燃える。全力で燃える。
ゾネがアッシュを持ってクルーウを助けようとする。
「やめろ」
リベラが一喝する。
「助けたら。殺すぞ」
炎に包まれた、クルーウの肌が焼けていく。体が耐えきれない熱さになってきたらしい。炎が微かに青くなっていく。後ろにある木が燃える。
ゴーレムが左腕が振りかぶる。
「やってみろ!殺してやる!」
刹那。振りかぶった、左腕が切断された。白い影がクルーウの視界を横切る。瞼が落ちる間もなくゴーレムの体が一刀両断された。
轟音共にゴーレムの体が落ちてきた。
クルーウは目を開ける。雪のように純白な髪。そして、百合みたいな白い肌。それは、あまりにも美しかった。
「アン?」
「……クルーウ」




