変わった癖
骸花 21
「君、なんで義足なの?」
そう言って興味津々に聞く女。フード付きのマント。マントは膝まである。
フードを深く被っていた。そこから、金髪が垂れていた。
膝まで垂れる金髪。小麦の様に美しい。
顔がクルーウの目の前まで近づいてくる。
(酒臭っ!)
頬が赤くなっており、右手に瓶を持っていた。足はおぼついていた。
フラフラとクルーウに近づいてくる。
「なんで、お前なんかに言わなきゃいけないんだよ」
「そうだね、けど、知りたいんだ」
「はぁ!ホイホイと他人に教えるほど、これは簡単な話じゃないんだよ!」
「私の名はテスタマン。テスって呼んで」
「はぁ?」
「名前、知っただね。これで他人じゃないね」
近づいてきてクルーウを上から覗き込まれた。
「いや、それはただの知人だ。そんな奴に教えるか」
「じゃあ、君の仲間になるよ」
「はぁ!」
(話が通じない!リベラか!)
「馬、乗せてやってもいいよ、見てたよね」
「旅の行き先、全然違うかもしれないだろ」
「私は放浪者だよ。旅に目的地がない」
「俺だけじゃ決めれない。仲間がいる。そいつらに会ってくれ」
「ふーん、まぁ、いいよ」
持っている酒を思いっきり飲んだ。
テスタマンを連れて、クルーウは酒場に戻った。
「そういう事だから、どうするコイツ」
「変なの連れてきやがって」
疑念の目でゾネはテスタマンを見てる。
「私の名はテスタマン!テスって呼んで!」
「まぁ!楽しそうじゃないか」
逆にリベラは楽しそうだ。
「リベラは少し危機感というもの覚えた方が良いよ」
「私は強いからね」
「……あっそ」
「そうだ!君、依頼受けてこいよ!」
今まで聞き役に回っていたクルーウが声を上げた。
「依頼?」
「依頼受けて稼いでこい!それで強さとかわかるだろ!」
「いいよ」
「君って、強いの?」
「強いよ。君達、全員でかかってきても私が勝つよ」
その自信は絶対的だった。
「あっそ」
ニヤニヤと笑いながらテスタマンはクルーウの義足を見ていた。
「ま。アンが来るまでの暇つぶしにはなるか」
日が上り、クルーウ達は役場に向かった。
役場の方がうるさかった。そこには沢山の人だかりが出来ていた。
「なんだ?」
十人の鎧を身に纏った集団。二人の馬に乗った騎士が何やら命令をしていた。金髪の男と赤髪の女。黒い薔薇と黒いハートが交わっている紋章。
「偏愛の騎士団だ」
ゾネが呟いた。
「偏愛の騎士団?あの国に仕えてる連中?」
「なんでいるんだ」
ズカズカとテスタマンは近づいっていった。そこら辺にいるやつの肩を掴んだ。
「ねぇ、何があったの?」
「ああ、人殺しだって、なんか役場の奥で殺されたんだ。さらに、そいつらがシリウスの仲間だったらしく、調査のために偏愛の騎士団がきたんだよ」
「正確な説明、ありがとう」
「聞いてくれ!」
急にデカい声が聞こえた。馬に乗っている男が言ったらしい。金髪の精悍な顔立ち。
「これから、ある女を殺しにいく!そいつはシリウスの仲間だ。今回の事件で発覚した。力を貸してくれ!報酬はちゃんとだす!」
それを聞いた野次馬達が一斉に話だす。
「ゾネ、知ってる?」
「ああ。多分、ノヴァの事だな。かいか使いのサイコ画家」
「ふーん」
クルーウはゾネの話しを聞いて、少し考える。
「テスタマン。いけよ」
「別にいいけど……それより、テスって呼んでね……」
「はいはい。テス」
「君、殺せるの?」
テスの飄々とした態度にゾネは訝しんでいた。
「ふふ。さっきも言ったけど、君達よりも強い自信あるよ。私」
「そうかよ」
「それに、画家に興味あるしね」
そういって、テスは人だかりの中心に入っていた。
中心にはある程度のスペースが出来ていた。そこには五人ぐらいがすでに集まっていた。
「もう、十分だ」
馬に乗っていた金髪の男が近づいてきたテスに言った。
「これ以上はいらない。邪魔になるだけだ」
「お前、酒臭いぞ!そんなんで出来ると思ってんのか!どっかいけや!」
五人の中の一人。中年ぐらいの鼻の高い男が言った。
「えぇー。そんなこと言うなよー」
「おい、女!無視してんじゃねぇ!」
ガッとテスの肩を掴む。強制的にテスは振り向かさせられた。
「……君、いい鼻してるね」
テスは腕を振り上げた。ペイントナイフで鼻を切り落とした。
「はぁながあああああ!」
男の顔が骸骨のようになった。
「これで、さらにイケメンになったね」
テスは微笑みながら、男の右目にペイントナイフを突き刺した。
「これで、いいだろう。私が参加しても」
金髪の男は少し考えて言った。
「まぁ、君のほうが強いしいいか」
(倫理観がないのかこの世界は?これが残酷の世代?)
その光景を遠目で見ていたクルーウは密かに思った。
金髪の男は馬に乗り、テス達をシリウスの仲間がいる村へと導いていた。
「君、名前は?」
テスの言葉に金髪の男は何も言わない。
「冷たいね」
村は閑散としていた。どこか静けさが漂う。
「シリウスの仲間は何処にいるかは分かってない。女性ということしか分かってない。別れて探せ。」
「へいへい」
四人の男はバラバラに家の中に入ってく。しかし、テスは木の下に座り男達を観察する。
その行動に金髪の男は不思議がっていた。
「君は動かないのか。それだったら金はださんぞ」
金髪の男の言葉を無視した。
「冷たいね」
「どうやら、ここら辺では神隠しが流行ってるらしい」
「ああ。村外れに怪しい家が出来てから、神隠しの噂が出てきたらしい」
「そこにいってみよう」
四人の男達が戻り、話合いの末、村外れのへ行くことになった。
テスはまだ座ってる。
「どうした。本当に唯の野次馬か?」
「いや。どうせ、あいつら全員死ぬし」
淡々とテスは言った。
「ほう。そりゃ、なんで」
「みなさん、弱いからね」
「じゃあ、助けてやれよ」
「いいよ。どうせ、芸術を理解できなそうだし」
一時間くらいがたった。
テスは花いじりをしていた。色々な色がある花冠が出来た。
「そろそろ。いくか」
重い腰を上げ、テスが動き出す。
「やっとか。着いてくか?」
「一人で十分よ」
「あっそう。逃げるなよ」
「はいはい」
四人の男が向かった先にテスは歩き出した。
歩いていると小さな小屋が見えきた。森の中にポツンとある。
「すみませーん」
テスの甲高い声が響いた。
「はい」
小屋の中からか細い声が聞こえてきた。
ゆっくりと扉が開き、病弱そうな女性が出てきた。
三十路ぐらいの女性だ。
「ここら辺で絵を描いてる人がいらしゃると聞いて」
「はい、私ですが……」
「ほんとですか!私も絵描いていて噂で聞いて尋ねてきたんですよ!」
「え!あ!そうなんですか!どぞどぞ!」
さっきとうって違って、元気な声てテスを招いた。
(……油臭い)
家の中に入るととてつもない油の匂いが鼻を突き抜ける。油の匂いだけがする。
女性がテスの顔を見て、気まずそうに聞く。
「あの、すいません。失礼ですが、酔ってます?」
「酔ってますよ。でも、こっちの方が頭回るで気にしないでください」
「……はぁー」
女性はそれ以上、何も聞いてこなかった。
「いやー。最近は変な人が多いんですよ」
女性は話しを進める。
「へー」
「人に会いたくなくて森の奥に住み始めたんですよ」
「ここでなら、集中できそうでもんね」
「あの、すみません。お名前は?」
「テスタマン。テスって呼んでください」
「ノヴァです。失礼ですが、年齢は?」
「二十二です」
「二十二……まぁ、いいぐらいかな」
ノヴァはテスには聞こえない声で呟いた。
小屋の中はアトリエになっていた。イーゼルが複数あり、色々な絵が飾ってあった。
どれも、綺麗な絵だった。黒い背景に浮かび上がる赤い薔薇の絵。
(あれ!この絵!)
ジロジロとテスは絵を見る。
「あ。お茶、入れてきますね。寛いでください」
「お構いなく」
ノヴァはそそくさと奥の方へと歩いていった。
「……」
テスは立ち上がり、辺りを見回す。
フンフンと鼻を鳴らし、油の匂いの中に他の匂いを感じる。鉄っぽい匂い。
匂いの方向へと歩いていく。廊下を進み、一つの扉の前で立ち止まる。ゆっくりと扉を開ける。
地下へと続く階段だった。壁にはランタンが灯っていた。さっきまで、作業していたみたいだ。
階段を降りてく、石の音がコツコツと響く。
ドンドンと匂いが酷くなっていく。地下には広い空間が広がっていた外の古屋と同等のサイズだ。
匂いの正体がそこにあった。
それはさっきの四人の男達の死体が吊るされていた。死体の下にはバケツがあり血が溜まっていた。首が切られており、血が抜かれていた。




