骸花と時
外の方か明るい光が差し込んでくる。
シーヌが死んで、二年の時が流れた。
クルーウの右足には、銀色に光る義足がついていた。
「さて……」
独り言を溢し、クルーウは立ち上がった。
クルーウは十七歳になっていた。
(そういえば、俺が初めて気づいた時は、三歳だったんだな……普通ゼロからじゃないか。)
なんて考えながら、クルーウは準備をしていた。
今日。クルーウは旅に出る。あの日、ホープに向かって斧を振り回した時、普通に避けられた。そして、そのままぶん殴られた。
(アンに会うため旅にでよう。死んでるかも)
それを目標に旅をすることにした。自分が幸福であり、自由である事を証明するために。
片手斧を持って扉を開ける。
シーヌの首を抱えた日と同じ、涼しい風が体全体を包んだ。秋の訪れを感じた。太陽は頂点に立っていた。
「いくのか、クルーウ」
黒髪を靡かせるホープが、やはり淡々とした声で話しかけてきた。
「これから、フィクスという人物を訪ねるといい」
「黙れ、クソカスがッ!」
ホープの淡々とした声に対し、クルーウは荒げた声で返した。
「この村から、二ついったところにいるやつだ。覚えとけ、目印は星だ」
クルーウはホープの言葉を半分くらい聞いたけれど、やっぱり聞き流し、村の門まで向かった。
村の門の前にホープがいた。
どんな手を使ったか分からないが、クルーウより早く門の前にいた。
「お前は、自由だ」
ホープは静かに言った。
「知ってるよ」
独り言を言うようにクルーウは静かに言った。
涼しい風がクルーウとホープを横切った。
「この世には、魔王と呼ばれる存在がいる」
ホープがいつもより熱の籠った声で喋りかけてきた。
「そいつは、人類の前に二度現れ、人類の三分の一を殺した」
「はあぁ?」
間抜けた声でクルーウは反応した。
「これは運命だ。運命からは逃げられない」
熱の籠った声はドンドンと早くなり始めた。
「命の時が枯れ、いつか朽ちる様にお前はいつか、絶対に関わる」
「俺は、自由だ」
「運命は、自由を凌駕する」
クルーウの返しに、ホープは、すぐに熱の籠った声で反論した。
ホープは、一呼吸しいつもの淡々とした声で話しかけてきた。
「俺は外では有名だ。だからテンスと言う名前は使うな。お前を縛る。だから絶対に名乗るな」
「あぁ……了解ぃ……」
(頭大丈夫かこいつ?)
クルーウは少し引きながら返した。
「じゃあな、クソカスホープ」
「クルーウ、お前には俺ができない事ができる。幸福に生きろよ」
少し優しい春のような暖かい声でホープは言った。
そんな声色は初めて聞いた。クルーウは驚いた。
「そのつもりだ。俺は運命の奴隷じゃないのでな」
クルーウは静かに歩み始めた。涼しい風を体全体で浴び、金色に輝く草原に銀色に光る右脚を前に歩み始めた。
(次の村に着くのは、半日ぐらいかかるか。なら着くのは夜ぐらいだろう)
紅葉に満ちた。森を進んで行った。
そして、日が落ち始めた頃。クルーウは次の村に着いた。村のはノリド。
そこは、クルーウがいた。村より大きく活気に溢れていた。三階ぐらいの建物が長く続いて、村の中央から、四方に石造の道が伸びている。城壁に囲まれている。
クルーウは泊まる宿を探していた。村のはずれ側にある二階建ての小さな宿を選んだ。
「宿は一泊。一万リョクです」
宿の目の前にいる、二十代後半ぐらいの少し吊り目のお姉さんがめんどくさそうな声で言った。
リョク。前の世界でいう、円である。いい商売しちゃってと思いながら銀色のコインをだした。
金色は十万リョク。銀色は一万リョク。銅色は千リョク。鉄色は百リョク。錫色は一リョクだぜッ。
クルーウの所持金は十万リョクである。
クルーウの部屋は階段を登った先の一番奥の部屋になった。
部屋は簡素で少し狭い。小綺麗な感じだった。
羽織っていた布をそこら辺に放り投げた。
(はぁ、金稼がないとなぁ)
固いベットに身を任せ眠りについた。
日が登った。鳥がうるさく歌い、瞼がドンドンと上がっていく。知らない天井を見上げた後。洗面台に溜めてある水で顔を洗いって固いパンをかじった。布を羽織り、斧を後ろにつけ、扉を開けた。
(村の役場には、仕事を紹介してくれる所がある。とホープが言ってたなぁ)
村の役場を探すために石造りの道を歩いた。村の役場は、村の中央にあった。役場は石造りの建物であり、他の建物より豪華に出来ていた。
役場の扉の木造を開け入っていた。役場の中は、木造の床で中央が、吹き抜けになっており二階が見えるようになっていた。
中には少ないながら、人がおり、正面に受付があった。
クルーウは目の前の受付の二十代ぐらいの綺麗な長袖のシャツを着た垂れ目で目の下にくまがある女性に話しかけた。
「こんにちはぁ……」
「はぁい。なんでしょうか」
受付の女性は、元気な声で話しかけてきた。
「仕事があると聞いたんですけど」
「はい。それでは、左側の壁に貼ってある紙の中からお選びください」
体を逸らし左側の壁を見た。そこには何人かが悩みながら見ていた。
受付の女性に軽く感謝を伝え、クルーウは左側の壁へゆっくりと移動した。
「盗賊シリウス情報を求む 五万リョク」「洞窟ゴブリンを始末して 三万リョク」「都市までの護衛を求む 七万リョク」
などが紙に書かれていた。
どれにしようかクルーウはと悩んでいた。
「ヘイ!そこの右足義足少年!」
左から、明るいうるさい声が聞こえてきた。
クルーウが顔を逸らすとそこには、白髪の少女がいた。
身長はクルーウと同じぐらいであり、肌は白くさらに髪、眉毛、まつ毛までもが白く。それに加え瞳孔の色さえも白かった。
タイトル読み方は「かいかのゆうしゃ」。
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